顆粒膜細胞腫は卵胞の顆粒膜細胞に由来する腫瘍である。一般的には片側性の発生だが、両側性の発生も認められる。卵巣の被膜を超えない良性のものが多いが、本症例のように被膜を超えて浸潤をする物や転移をする悪性のものもある。また、ホルモン以上により子宮内膜過形成などを併発することが多い。
実績詳細
チワワの卵巣の顆粒膜細胞腫と腹膜播種
検査結果
症例は顕著に腹囲膨満を起こしており、腹水貯留もしくは腹腔内腫瘍の存在を疑わせる外貌であった。
腹部エコー検査では顕著な腹水の貯留と、腫瘍化した左右の卵巣が確認された。
肝臓や腎臓、脾臓など、そのほかの臓器の腫瘍性病変は認められなかった。
エコーガイド化で腹水を抜去したところ、血様の腹水が得られた。
体重の10%以上の量の腹水が抜去された。
胸部レントゲン検査や血液検査より、腎臓性や肝臓性、心臓性、消化管性の疾患による腹水貯留であることは否定された。
診断:左右卵巣腫瘍と、腹膜播種の疑い
治療方法
腹筋を切開するところ
血様の腹水で満たされている
右側の卵巣を腹腔外へ牽引したところ
左右の卵巣と子宮を腹腔外へ摘出したところ。
肉眼的にも卵巣が腫瘍化し、子宮も肥厚している
摘出された卵巣と子宮
腹膜に腫瘍の播種と考えられる病変を認めたため、病理検査を行う目的で切除した
閉腹
ーーーー以下病理検査所見ーーーー
左右の卵巣は、腫瘍化しており、腫瘍細胞の増殖により完全に置換されています。腫瘍は、卵胞を構成する顆粒膜細胞に由来する腫瘍です。腫瘍は大型で、卵巣嚢を越えて広がっており、既に腹腔内に播種性の転移が起こっています。遠隔転移は稀ですが、顕著な腹水や胸水の貯留が引き起こされることから、全身状態について注意が必要です。
子宮では、一部の筋層内にも子宮内膜が異所性に認められ、子宮腺筋症と診断されます。性ホルモン異常が背景にあるとされる非腫瘍性病変であり、筋層の肥厚や筋層内に嚢胞が形成されます。検索した組織では、明らかな炎症や腫瘍性の病変は認められません。
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診断
顆粒膜細胞腫、子宮腺筋症
治療・術後経過
術後は食欲も出て、腹水の貯留も治まった。
腹腔内走査の結果、血様の腹水は左右の卵巣から出ている様子であった。
術部は感染も起きず、良好に閉鎖した。
今後、腹膜播種病変に対して抗がん剤を行うかどうかをご家族と相談して決定していく。
担当医:白井 顕治
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