チワワ（6kg）の左前十字靭帯断裂に対するTPLO術（脛骨高平部水平化骨切術）

🐾 術後の歩行開始には個体差があります

TPLO術後の歩行開始の時期は、犬の性格・痛みの感じ方・手術前の筋力・年齢・環境などによって大きく異なります。翌日からしっかり足をつく犬もいれば、慎重な性格や不安の強い犬では、数日〜1週間程度様子を見てから徐々に負重を始めることもあります。術後の治療の成否は「歩き始めの早さ」では決まらず、日々の回復の流れ全体で総合的に評価することが大切です。

🐾 なかなか歩き出さない場合に考えられる原因

術後に歩行開始が遅れる場合でも、必ずしも手術の問題とは限りません。以下のような要因が複合していることが多く、適切な痛み管理と経過観察により改善していくケースがほとんどです。

● ① 性格によるもの（慎重・怖がり）

術後の違和感に敏感なタイプや慎重な性格の犬では、「痛みが怖い」と感じて動こうとしないことがあります。実際には手術部位が安定していても、心理的に歩き出せないケースは珍しくありません。

● ② 術前からの筋力低下

長期間びっこが続いていた犬では、術前の筋力低下が強く、そもそも踏ん張る力が弱くなっているため歩き出しがゆっくりになることがあります。

● ③ 術後の痛みや炎症

痛み止めでコントロールはされていますが、個体差で強く感じる犬もいます。炎症が強い場合には、数日安静にすることで改善します。

● ④ 半月板損傷の有無

手術中に問題がなかった場合でも、術後に新たに半月板損傷が起こる「late meniscal tear」は、文献的に5％程度とされています。歩行が改善しない場合には慎重に評価する必要があります。

● ⑤ 術後の腫れ・内出血

術後の一時的な腫れや内出血が不快感となり、歩きにくさを感じることがありますが、多くは時間とともに改善します。

● ⑥ ご家族の見守り行動（過介入）

心配のあまり「動かなくていいよ」と過度に安静にさせようとすると、犬が動き出すきっかけを失ってしまうことがあります。

🐾 大切なのは「歩き始めの早さ」ではなく、全体の回復曲線

術中の所見が良好で、骨切り・プレート固定・スクリューの位置・半月板の評価などが問題なければ、
多くの犬は術後2週間前後には大きく回復が進み、1〜3か月で機能回復を実感できる ことがほとんどです。

歩き始めが早い子もいれば、ゆっくりの子もいますが、どちらも正常の範囲。
特に慎重な子は「ただ歩くのが怖いだけ」ということも多いので、経過全体での判断が重要です。