乳腺の腫瘍は避妊手術を実施していない、未経産の中高齢のメス犬に、比較的よく認められる腫瘍である。乳腺部に腫瘤が認められる場合には、大きく分けて乳腺が由来の腫瘤である場合と、皮膚や軟部組織、そのほかの独立円形細胞などが由来の腫瘍の可能性があります。乳腺部にあるからといって、乳腺由来の腫瘍ではない可能性があります。
また、乳腺由来であった場合にも、腫瘍とそうでないものに別れます。腫瘍以外で腫れる場合には、卵巣の異常などにより過形成として腫れてしまっている場合や、乳管炎、乳腺炎のような炎症性病変の可能性があります。また、乳腺由来の腫瘍という場合に、大きく分けて良性腫瘍と悪性腫瘍に分類されます。
診断を行う細胞診ではこういった細かい診断を下すことができますので、きちんと診断を行って治療にあたることが重要な腫瘍といえます。
実績詳細
トイプードルの乳腺腫瘍(良性乳腺腺腫)の手術
種類 | トイプードル |
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年齢 | 6歳 |
診療科目 | 軟部外科・整形外科 腫瘍科 |
症状 | おなかのあたりにしこりがある |
症状の概要
検査結果
症例は左第4~5乳腺にかけて乳腺部にしこりが認められた。本人は元気食欲は良好で、腫瘍部分は気にしていない。
診断のために細胞診を実施した。
ーーー細胞診所見ーーー
上皮細胞が多数得られており、乳腺腫瘍が疑われますが、過形成との鑑別は困難です。異型性は軽度で、乳腺腫瘍である場合には良性の乳腺腺腫などが疑われますが、乳腺腫瘍の悪性度は細胞異型性の程度と相関していないことがあり、正確な評価には周囲組織やリンパ管への浸潤性を組織学的に確認する必要があります。また、乳腺腫瘍は大型であるほど悪性である可能性が高く、増大すると悪性に転化する可能性も示唆されています。
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胸部レントゲン検査及び腹部超音波検査、そのほか一般身体検査やスクリーニング検査では転移の兆候は認められなかったため、卵巣子宮及び、左側第3~5乳腺切除を実施した。
治療方法
常法通り、卵巣子宮を摘出した。
中央部より尾側半分の第3~5乳腺および付着している鼠経リンパ節の切除を行った。
治療・術後経過
術部は感染も起こさず、正常に癒合した。
ーーー以下病理組織検査所見ーーー
摘出された乳腺では、2ヶ所に結節性の腫瘤が形成されていますが、いずれも良性に分類される腫瘍です。腫瘍の境界は明瞭で、マージン部や鼠径リンパ節に腫瘍細胞の浸潤は認められません。摘出状態は良好で、今回の切除により予後は良好と考えられます。
子宮では、内膜の状態は保たれています。左右の卵巣にも、明らかな病変は認められません。
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摘出された乳腺腫瘍はいずれも良性であり、転移兆候も認められないため、予後は良好と考えられる。
現在経過観察中
担当医・執刀医:白井 顕治
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