会陰ヘルニアは去勢手術を行っていない雄犬に発生しやすい疾患で、両側に発生することもあれば、片側に発生することもある。片側の場合には右側の発生率が高い。
去勢手術を行ってあったとしても、去勢手術を行った年齢が中年齢以降の場合には、それ以降に発生することがある。
ヘルニアはヘルニア孔の大きさや、孔から脱出する内臓の部位によって症状や緊急性が異なる。会陰ヘルニアで最も脱出しやすいのは直腸だが、それ以外に膀胱や前立腺、腸管や腹腔内の脂肪、大網などが脱出することがある。
実績詳細
トイプードルの右側会陰ヘルニア
種類 | トイプードル |
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年齢 | 8歳 |
診療科目 | 軟部外科・整形外科 |
症状 | 下痢が出る |
症状の概要
検査結果
症例は中年齢の未去勢のトイプードルであった。
右側の睾丸は潜在精巣であった。
身体検査を実施したところ、肛門の右側が顕著に腫脹しており、指で押すとふくらみは還納した。
レントゲン検査を実施したところ、ふくらみは直腸憩室であることが分かったため、右側会陰ヘルニアと診断した。
緩下剤の投与により便は良好に排泄できるようになったものの、片側潜在精巣ということも重なり手術を実施することとなった。
治療方法
手術は去勢手術、腹腔内潜在精巣の摘出、直腸腹壁固定、会陰ヘルニア孔の閉鎖とした。
直腸腹壁固定と、精巣の摘出。写真左側の小型の精巣が腹腔内にあった潜在精巣である。
会陰の術前
術前の処置として直腸内の便を掻き出しているため、写真では会陰ヘルニアの腫脹は目立たない
会陰切開を実施し、ヘルニア孔を確認している。
プロリンソフトメッシュを使用して、ヘルニア孔を閉鎖した
術後の写真
(手術時間90分)
治療・術後経過
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精巣の病理検査所見
右精巣では、精子に分化する生殖細胞に由来する腫瘍(精上皮腫)が認められます。検索した組織では、被膜を超える浸潤や精索断端への浸潤像は認められません。摘出状態は良好で、今回の切除により予後は良好である可能性が高いと考えられます。
左精巣には腫瘍性の病変は認められません。
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症例は術後2日目より自力で排便できるようになっている。
精巣に関しても腫瘍化していたものの、初期の段階で摘出することができているため、経過良好と判断した。
担当医・執刀医:白井 顕治
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