巨大食道症とは、食道がびまん性に拡張し、その運動性が低下する病態である。⑴先天性⑵後天性二次性(基礎疾患より二次的に起こるもの)⑶後天性特発性(原因不明)に分類される。
症状として、吐出((としゅつ)食後まもなく吐いてしまう)を呈することが多く、それにより誤嚥性肺炎を続発することも多い。また、吐出に伴い低栄養状態に陥ることもあるので注意が必要である。
通常吐出と嘔吐は吐き戻す際に腹圧を上げる必要があるかどうかで判断をするが、タイミングによっては見分けが難しいこともあります。動画を撮影したり、実際に病院で食事させて様子を観察する必要があります。
巨大食道症は、病名として使用されることもあるが、後天性二次性巨大食道症においては、賞状として「巨大食道」が起こるという認識がより適切である。原発疾患としては主に重症筋無力症・多発性筋炎・胸腺腫・甲状腺機能低下症・重度の食道炎・食道狭窄・鉛中毒などが挙げられる。
先天性はミニチュアシュナウザー、ジャーマンシェパード、ラブラドールレトリーバー、グレートデン、アイリッシュセッターなどで好発する。後天性巨大食道症の原因は、重症筋無力症、多発性筋炎、鉛中毒など多く疾患に関連して起こるようだが、特発性など原因不明であることもしばしばである。
診断はレントゲン検査、およびバリウム造影レントゲン検査にて食道全体が拡張していることを確認する。
後天性巨大食道症の場合は、基礎疾患の検索のために全身スクリーニング検査、抗アセチルコリン受容体抗体価、CK、甲状腺ホルモンの測定などを行う。また食道炎や食道狭窄を除外するために、内視鏡検査を行うこともある。
明らかな基礎疾患が発見されない場合は、特発性の巨大食道症と診断する。
後天性二次性巨大食道症の場合には、基礎疾患の治療を行う。
この症例においては重症筋無力症に対する治療を行っている。
先天性および後天性特発性巨大食道症の場合では特異的な治療を行うことはできず、栄養治療と誤嚥性肺炎に対する治療がメインとなる。拡張した食道内に食餌が留まるのを防ぐために、食後15〜30分立位にし、胃まで到達させる方法が取られる。
これらの治療をした上で、吐出を繰り返したり、体重減少が重度であったり、誤嚥性肺炎を繰り返す場合には、胃瘻チューブを設置することも考慮すべきである。それにより、誤嚥や吐出が減少したり栄養状態が良好に管理できるようになるが、唾液の吐出や誤嚥がみられることもあり注意が必要である。
誤嚥性肺炎がみられた場合には、多くの細菌に効果があるような抗生剤を投与する。
治療の予後として、すべての巨大食道症の動物は誤嚥性肺炎や突然死を起こすリスクがあり、予後には十分な注意が必要である。
後天性二次性巨大食道症では、基礎疾患が適切にコントロールできれば、食道の運動性は改善する可能性があり、また一部の先天性巨大食道症の犬では成長とともに食道の運動性が良化することがある。
しかしながら、それ以外の巨大食道症では食道の機能が回復することは少なく、予後は要注意である。
実績詳細
トイプードルの局所型重症筋無力症による巨大食道症
種類 | トイプードル |
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年齢 | 1 |
診療科目 | 内科 消化器科 |
症状 | 食べた直後に嘔吐をする 元気と食欲は良い |
症状の概要
検査結果
試験的に診察中に食事をとらせたところ、摂食後数分で今食べた食事を吐き戻す行為(吐出)が認められた。
そのため、バリウム造影検査を行っところ、食堂が重度に拡張していたため、巨大食道症であると診断した。
さらに詳細に調べるために甲状腺ホルモンの測定と抗アセチルコリンレセプター抗体の測定を実施したところ、甲状腺ホルモンは正常値で、抗アセチルコリンレセプター抗体に高値が認められた。
診断:局所型重症筋無力症による巨大食道症
治療方法
抗アセチルコリンレセプターが産生されてしまう重症筋無力症によって起きている巨大食道症という診断なので、基礎となる重症筋無力症に対する内服薬を飲むと同時に、食事が胃まで行くことを助けるために立位で食事をするための台をご家族に製作していただいた。
治療・術後経過
立位で食事を行ってはいるが、現在は良好に維持できている。
経過観察中
担当医:白井顕治
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