犬の前十字靭帯断裂は、多くの場合**片側の後肢(右または左)**に起こりますが、約30〜40%の犬で将来的に反対側の断裂が生じると報告されています。
とくにトイプードルのような小型犬では、加齢や体重の増加、膝蓋骨脱臼などの関節要因が両膝に存在していることが多く、片方の手術後に反対側にも症状が出るケースが少なくありません。
また、片足をかばうことによる負担の偏りも、反対側の靭帯にストレスをかける原因となります。
当院では、術後の再発を防ぐために、反対側膝の触診評価やX線による関節チェックを同時に行い、必要に応じて早期対応を検討しています。
一方で、両側同時に断裂している場合でも、片側ずつ順にTPLOを行うことで、安定した歩行回復が得られることが多く、治療計画を慎重に立てることが重要です。
実績詳細
トイプードル(4.2kg)の前十字靭帯断裂に対するTPLO手術(脛骨高平部水平化術)
種類 | トイプードル |
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年齢 | 11歳 |
診療科目 | 軟部外科・整形外科 |
症状 | 右後ろ脚を痛そうにしている |
症状の概要
検査結果
トイプードルが左後肢の跛行を主訴に来院した。
整形学的検査としてクラニアルドロアーテストおよび脛骨圧迫試験を実施したが、いずれも陰性であった。
しかし、レントゲン検査でファットパッドサイン(fat pad sign)を認めたため、
関節内病変の存在を疑い関節エコー検査を実施した。
その結果、前十字靭帯像が不鮮明となり、関節包内に関節液の貯留を確認した。
これらの所見より、**前十字靭帯断裂(cranial cruciate ligament rupture)**と診断した。
治療方法
関節包を開放して関節内を確認したところ、前十字靭帯は完全に断裂していた。
断裂靭帯と損傷組織を除去し、内側半月板の損傷部も併せて切除した。
その後、ラウンドソーを用いて脛骨高平部を計画角度に沿って骨切りし、
脛骨を回旋・整復して適切な脛骨高平部角(TPA)となるよう調整した。
TPLOプレートを設置し、スクリューで固定して手術を終了した。
治療・術後経過
術後経過は良好で、術後3日目に退院した。
術後7日目の再診時には良好な負重を認め、歩行状態も安定していた。
以降は1か月ごとの経過観察を行い、骨癒合・関節機能ともに順調に回復したため治療を終了した。
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