トイプードルをはじめとする小型犬では、膝蓋骨脱臼(パテラ)と前十字靭帯断裂が深く関係していることが知られています。
膝蓋骨脱臼は、膝のお皿が内側または外側にずれる疾患で、軽度の段階では一時的に外れるだけですが、長期間にわたり膝関節の軸にずれが生じます。
このわずかな関節軸の歪みや不安定な歩行姿勢が、前十字靭帯に常にストレスを与える結果となり、靭帯の変性や微小断裂を進行させていきます。
そのため、パテラをもつ犬では、特に中高齢になると**明確な外傷がなくても前十字靭帯が自然に切れてしまう(変性型断裂)**ことがあります。
当院では、TPLOを実施する際に膝蓋骨の位置や滑車溝の形状も同時に評価し、必要に応じて滑車形成や縫縮などの追加整復を行うことで、再発防止と長期的な関節安定性を重視しています。
このように、膝蓋骨脱臼と前十字靭帯断裂は「別々の病気」ではなく、一つの関節環境の問題として捉えることが大切です。        
実績詳細
トイプードル(4.3kg)の前十字靭帯断裂に対するTPLO術(脛骨高平部水平化骨切術)
| 種類 | トイプードル | 
|---|---|
| 年齢 | 8歳 | 
| 診療科目 | 軟部外科・整形外科 | 
| 症状 | 右後肢を痛そうにしている。浮かせている | 
症状の概要
検査結果
右後肢の跛行を主訴に来院しました。触診では膝関節に腫脹と疼痛反応を認め、前方引き出し試験(クラニアルドロアサイン)および脛骨圧迫試験でいずれも陽性反応を示しました。レントゲン検査では膝蓋靭帯前方の脂肪パッドサイン(ファットパッドサイン)が明瞭で、関節液の貯留と軽度の関節炎変化を確認しました。これらの結果から、右前十字靭帯断裂と診断しました。
治療方法
 
 
 
治療は外科手術を実施しました。関節包を開いて内部を確認し、断裂していた前十字靭帯を除去しました。内側半月板には軽度の損傷を認めたため、必要な処置を行いました。その後、脛骨の角度を調整する**脛骨高平部水平化術(TPLO)**を実施し、専用のプレートで骨を固定して手術を終了しました。
治療・術後経過
術後の経過は良好で、手術の翌日には右後肢での負重が確認されました。14日後の再診時には、正常に近い歩行が見られ、順調に回復しました。
お気軽に
ご相談ください
中志津本院043-462-1122 受付時間 9:00~11:30 15:00〜18:30
大崎台分院043-483-1212 受付時間 9:00~11:30 14:00~17:30
