前十字靭帯断裂の手術(TPLO)では、使用するプレートやスクリューのサイズ選択が非常に重要です。
一般的には「体重に応じてサイズを選ぶ」とされていますが、実際の臨床では骨格の太さや骨密度には個体差が大きく、単純な体重基準だけでは最適な固定が得られないことがあります。
本症例のポメラニアンは体重5.2kgと一見標準的ですが、体格に対して骨が細く、肥満による負荷がかかりやすいタイプでした。
そのため、当院では術前のレントゲンを詳細に評価し、骨の径や皮質骨の厚みを考慮して、1.5mmスクリューと小径プレートを選択しました。
これは、単に「小さい犬だから小さいプレート」ではなく、
➡ 骨の形態と応力分布を見極めたうえでの個別設計です。
このように、当院ではTPLOを行う際に、体重・骨格・骨質・力学的方向のすべてを統合的に判断してインプラントサイズを決定しています。
その結果、安定した固定と早期の骨癒合、さらには早期負重を実現できています。
実績詳細
ポメラニアン(5.2kg)の前十字靭帯断裂に対するTPLO術(脛骨高平部水平化骨切術)
種類 | ポメラニアン |
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年齢 | 5歳 |
診療科目 | 軟部外科・整形外科 |
症状 | 左足を痛そうにしている |
症状の概要
検査結果
右後ろ足をかばうように歩くポメラニアンが来院しました。
膝の動きを確認したところ、クラニアルドロアー試験と脛骨圧迫試験で関節のぐらつきが認められました。
また、レントゲン検査で膝関節前方の脂肪層(ファットパッド)に異常な膨らみが見られ、
前十字靭帯が断裂していることが確認されました。
このような所見から、前十字靭帯断裂と診断し、TPLO法による外科的安定化手術を行いました。
治療方法
手術ではまず関節包を開き、関節の中を確認しました。
前十字靭帯は完全に断裂しており、損傷した靭帯と内側半月板を除去しました。
続いて、専用のラウンドソーを用いて脛骨を計画どおりに骨切りし、
関節にかかる力の方向が安定するよう脛骨の上部を回転させて固定しました。
TPLOプレートを装着し、スクリューでしっかりと固定して手術を終了しました。
治療・術後経過
術後の経過は良好で、術後3日で退院した。
退院時には軽度ながら患肢の負重を確認した。
術後2週間で抜糸を実施し、その時点で跛行(破行)は有意に改善していた。
以降は1か月ごとに定期検診を行い、経過は順調に推移した。
最終的に骨癒合と歩行機能の回復を確認し、治療を終了とした。
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