房室弁逆流は遺伝的な弁膜の粘液腫様変性のような弁膜症の結果として起きることが多い。日本国内の疫学としてはキャバリアやマルチーズ、チワワ、シーズー、ダックスなどに比較的多く認められる。高齢になるほどよく認められ、これらの後発犬種では3~4歳程度から認められることもある。性別はオスに多く、オスのほうが発生率が高く、また悪化しやすい傾向がある。診断は聴診および心エコー検査によって行うが、より正確な病態の把握のためには血液検査や尿検査、血圧測定も治療を行う上では非常に重要な検査である。治療は内服薬で新機能を維持管理していく内科療法と、弁膜を外科的に修復する外科療法がある。
実績詳細
マルチーズの両房室弁閉鎖不全症の診断と治療
検査結果
身体検査及び聴診では両心室性に収縮期雑音が聴取された(Ⅴ/Ⅵ)。
弁膜症を強く疑い、血圧測定および心エコー検査を実施した。
Bモード右肋間四腔断面像。拡張した左心房と僧帽弁の弁尖逸脱が認められる。
カラードプラ
僧帽弁の便の隙間から、左心室から左心房へ向かう血液の逆流を確認。
左傍胸骨、四腔断面像
右心室と右心房を隔てる三尖弁においても逆流が認められた。
血液流速と血圧より、軽度の肺高血圧が認められた。
診断:弁膜症による両房室弁(僧帽弁・三尖弁)閉鎖不全症と、それによる軽度肺高血圧症
治療方法
内科療法により維持することを決定した。
血圧と心拍の調整及び心収縮をサポートする薬の投薬を行った。利尿薬は使用しなかった。
また、運動制限と、塩分制限を普段の生活管理としてお願いしました。
治療・術後経過
投薬開始後2日目より咳などの臨床症状は認められなくなり、以前は寝てばかりいたが、薬を飲み始めてからたまにおもちゃで遊んだりするようになった。
定期検診と臨床症状により内服薬を調節し、維持していく。
担当医:白井 顕治
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