悪性腫瘍の治療方法には大きく分けて外科・化学療法(抗がん剤)・放射線療法などがあげられます。悪性腫瘍の由来・種類・ステージングによって、これら治療方法の中で選べる範囲内でより最適なものを実施することが再発率の少ない手術を行う上で重要となります。
今回の軟部組織肉腫や肥満細胞腫、乳腺腫瘍などは、外科による摘出が最も効果的で重要な腫瘍であることが明らかになっています。これらの腫瘍の治療で最も大切なことは、術前にどのような腫瘍なのかをきちんと把握しておくという事と、それに即した第一回目の手術です。不十分な手術を行い再発してしまった結果、手術を2回、3回と繰り返してしまうと、再発のたびに悪性度は上がっていくことが明らかになっています。
術前にきちんと診断を行い、計画を立てて手術を実施することが治療を成功させるうえで必要不可欠な腫瘍です。
実績詳細
ミニチュアダックスの軟部組織肉腫(血管周皮腫)
種類 | ミニチュアダックスフント |
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年齢 | 12才 |
診療科目 | 軟部外科・整形外科 腫瘍科 |
症状 | 胸にしこりがある |
症状の概要
検査結果
身体検査を行ったところ、右前胸部に直径4センチほどの半円形の軟性の腫瘤を確認したため、針吸引生検(細胞診)を実施した。
ーーー以下細胞診所見ーーー
腫瘤からは、間葉系と考えられる細胞が多数得られており、異型性が軽度であることから肉芽組織などとの鑑別がやや困難ですが、炎症細胞は認められず、血管周皮腫や線維肉腫、脂肪肉腫などの軟部組織肉腫が疑われます。
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診断:軟部組織肉腫
治療方法
軟部組織肉腫に対する治療の第一選択は手術による摘出であるため、ご家族と相談した結果、手術を行う事とした。
術前の外見。右前胸部に腫瘤が確認できる。
腫瘤から4センチの水平マージンと底部マージンとして1筋膜を切除した。
切除後に皮ふ欠損した領域に対して、腋窩の皺壁を利用した皮膚弁を用いて再建を行った。
ーーー以下摘出臓器の病理所見ーーー
検索した右前胸部の組織では、皮下に非上皮性の腫瘍が形成されており、低悪性度の軟部組織肉腫(血管周皮腫)と診断されます。
腫瘍の境界は明瞭で、マージン部に腫瘍性の病変は認められず、底部に筋層が含まれています。再発率の高い腫瘍ですが、摘出状態は良好で、今回の切除により予後は良好と考えられます。
治療・術後経過
術後、大きな合併症を起こすことなく皮膚は癒合した。
現在、経過観察中
担当医・執刀医:白井顕治
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