高齢になってから発生するかゆい皮膚病として、皮膚型リンパ腫や肥満細胞腫などの皮膚腫瘍やニキビダニ症、ステロイド皮膚症などがあげられる。特に、もともとアレルギー性皮膚炎を患っている症例ではかゆみが出た場合には、薬やスキンケアで何とか工夫しようとして対応をしてしまうが、かゆみの出方がアレルギーと比較して非典型的である場合には本症例のように病理組織検査を実施する必要がある。
実績詳細
ミニチュアダックスフントの皮膚型リンパ腫
検査結果
症例は若いころからアトピー性皮膚炎を患っており、かゆみ止めを長年内服していた。
この度、いつもの薬容量を使用してもかゆみが全く改善せず、スキンケアや非ステロイド性のかゆみ止めの併用を行っても一向に改善が認められなかった。
治療開始から2週間後、体表に複数の結節が形成されたため、通常のアレルギー性皮膚炎ではなくほかの疾患が皮膚にあることを疑い細胞診を実施した。
ーー以下細胞診所見ーーー
得られている主体の細胞は間葉系の細胞と考えられ、細胞形態からはリンパ球や形質細胞などの円形細胞である可能性があります。大型の病変で、腫瘍性病変の可能性もありますので、バイオプシーによる組織学的評価もご検討下さい。皮脂腺細胞と思われる細胞塊も少数得られていますが、異型性は認められません。
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細胞診においては様々な細胞が得られ特筆すべき異常が発見されなかったという点と、検査結果を待つ間にも病状が進行していることから、病理組織検査のため皮膚生検を実施した。
ーーー以下病理検査所見ーーー
検索した2ヶ所の組織ではいずれも、多数の好酸球の浸潤を伴って、異型性を示す大型の円形細胞の浸潤が起こっています。免疫染色では、これらの細胞は、リンパ球のマーカーであるCD3、肥満細胞のマーカーであるKITいずれにも陰性を示していますが、組織像よりリンパ腫の可能性が高いと考えられます。
近年、好酸球の浸潤を伴うT細胞性リンパ腫(Canine inflamed nonepitheliotropic cutaneousT-cell lymphoma)が報告されています。新しい病変の形成、全身状態について経過には注意が必要です。
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診断名
皮膚型リンパ腫
治療方法
症例は腎臓や肝臓の数値ももともと異常値に近い値が出ており、本腫瘍が発生する数か月前に胃拡張胃捻転症候群を発生し体力が低下していたため、ご家族と相談した結果、ステロイド剤及び内服の抗腫瘍薬のみを用いて経過を観察していくこととなった。
治療・術後経過
悪性腫瘍であるため、予後不良と考えられる。
担当医:白井顕治
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