胃消化管間質腫瘍(GIST)は犬の消化管に認められる腫瘍で、間質を由来として発生する腫瘍である。悪性腫瘍に分類される。
この症例は消化管穿孔が起こってから初めて臨床症状を起こしたため、腫瘍が小さいうちは症状を表さないことも多い。
腸間膜を巻き込んで広く拡大・癒着している場合には手術による摘出が困難と判断される場合もある。
実績詳細
雑種犬の回盲部に形成されたGIST(胃消化管間質腫瘍)
種類 | 雑種犬 |
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年齢 | 15歳 |
診療科目 | 軟部外科・整形外科 消化器科 |
症状 | 元気食欲がなく、おなかが張っている |
症状の概要
検査結果
症例は25kgほどの大型の雑種犬であった。高齢だが、普段は活発で食欲もあったが、受診時は沈鬱状態であった。
エコー検査を実施したところ、腹水が貯留しており、腹水の性状を精査すると細菌が多数認められたため、消化管穿孔を起こしている可能性が示唆された。
また、回盲部に大型の腫瘍性病変を認めたため、穿孔部位もこの周囲である可能性が考えられた。
高齢犬であったものの、ご家族と相談し、消化管穿孔が起こっているため、開腹手術へと進んだ。
治療方法
回盲部周囲は重度に癒着していた。
剥離し、回盲部のみを露出させ、正常な部位を含めて切除した。腫瘤の一部に消化管内に至る穿孔を確認した。
切除した部位に対して、回腸と結腸を吻合した。
ーーー以下病理所見ーー
検索した盲腸の腫瘤は、胃消化管間質腫瘍(GIST)と判断されます。この腫瘍は腸の蠕動に関連するカハールの介在細胞由来と推察されている腫瘍です。犬の本腫瘍に関する情報は少ない状況ですが、約半数程度に転移性の病変が形成されます。断端マージン部に明らかな腫瘍性の病変は認められませんが、腫瘍は漿膜を越えて、周囲の脂肪組織にも広がっています。局所の摘出状態は良好ですが、引き続き、肝臓や腹腔内への播種などについて経過観察をお勧めします。
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診断名:GIST
治療・術後経過
術後は縫合した消化管も正常に生着し、体調は改善した。
2か月ほど軟便が続いたが、現在は性状通りに元気に生活している。
診断名を受けて、気を付けて経過観察を継続している。
2022年5月追記
術後1年3か月が経過し、17歳の誕生日を迎えました
担当医・執刀医:白井 顕治
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