脂肪組織が由来の腫瘍は大きく分けて良性と悪性に分かれます。良性の脂肪由来腫瘍には脂肪腫や筋間脂肪腫、繊維脂肪腫や浸潤性脂肪腫が含まれます。悪性のものには脂肪肉腫があり、この良性と悪性の区別は針吸引生検を行うことによって多くの場合診断を下すことができます。しかし、良性脂肪腫内でのどのタイプなのかは組織診断を必要とする場合があります。
骨膜と固着していたり、腫瘍の辺縁が不明瞭の場合には、繊維脂肪腫や浸潤性脂肪腫の可能性を考え、場合によってはCT検査を行ってからの手術が推奨される場合もあります。
実績詳細
雑種犬の大腿部に形成された浸潤性脂肪腫
種類 | 雑種犬 |
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年齢 | 13才 |
診療科目 | 軟部外科・整形外科 腫瘍科 |
症状 | 腫瘤が大きくなってしまって動きづらそう。取れるならとってあげてほしい。 |
症状の概要
検査結果
症例は元気食欲および一般状態に異常は認められなかった。
体表にいくつかのしこりがあり、特に大きなものが右わき腹から大腿部にかけての腫瘤で、直径は35センチほどであった。
認められた腫瘤に対して針吸引生検を実施した。
ーー以下細胞診所見ーーーーーー
1から5の塗抹には、異型性に乏しい脂肪細胞が得られており、脂肪腫が疑われます。脂肪腫は良性の腫瘍ですが、筋肉内に浸潤することがあり、また大きさや部位によっては日常生活に支障を来す場合もあります。
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治療方法
針吸引生検の結果を受けて、すべて脂肪腫だったことから、来院理由となった最も大型の腫瘍のみ摘出することとした。
術前外観及び摘出予定の腫瘍
腫瘍の摘出
形成されていた部位より、脂肪腫の中でも骨膜や筋膜に固着する浸潤性脂肪腫が疑われていた。本症例においても一部は最後肋骨に強固に固着していたため、当該部位は剥離をして辺縁部切除とした。
摘出後
右側の腹横筋は腫瘍と強固に固着していたため、一部を切除した。
閉創し、終了とした。
ーー以下病理検査所見ーーー
検索した左下腹部では、分化の高い脂肪細胞の増殖から成り立っていますが、一部で筋組織が混在しており、浸潤性脂肪腫と診断されます。しかし、大部分の腫瘍の境界は明瞭であり、摘出状態は良好と考えられます。今回の切除により予後は良好である可能性が高いと考えられますが、非常に大型の腫瘤が形成されていたことから、念のため、 局所再発について経過観察をお勧めします。
治療・術後経過
大型の腫瘍であったため、術後、術部に軽度の漿液腫が認められたが、抜去により消失し、再発は認められなかった。
現在経過観察中
経過良好
担当医:白井 顕治
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