胃拡張捻転症候群は周術期死亡率の高い緊急性疾患である。通常は単独で発生するが、本症例のように何等か消化管の運動に異常が認められた際に続発する可能性もある。
胃拡張捻転症候群が発生すると、レントゲン及び超音波検査は拡張した胃や腹膜炎所見に紛れて他疾患を精査することが難しくなるということ、そして胃拡張が存在する時点で緊急処置を実施すべきであるため、精査を行う時間を取れないことで、他疾患の術前の評価が難しい場合があると感じる。
実績詳細
雑種犬の腸腺癌による胃拡張捻転症候群
種類 | 雑種犬 |
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年齢 | 15歳 |
診療科目 | 軟部外科・整形外科 消化器科 腫瘍科 |
症状 | 朝からおなかがパンパンになっている。呼吸がおかしい |
症状の概要
検査結果
症例は高齢の雑種犬であった。体の複数個所に腫瘍が形成されているものの、直近に行った総合的な検診では大きな異常は認められていなかった。
診察を行うと、有意な呼吸促拍、誇張した腹部、打診音から、胃拡張捻転症候群を疑い、レントゲン撮影を行った。
その結果、捻転して拡張した胃の陰影が確認されたため、ご家族に相談して高齢ではあるが、手術を行うこととした。
治療方法
術前の誇張した腹部
胃は時計回りに約100°程
捻転が起こっていた。脾臓捻転は認められなかった。
捻転した胃の整復、再発防止のための胃固定、拡張した胃の内容物の除去を行い、最後に腹腔内を精査したところ、小腸の一部に腫瘍性病変による閉塞を発見した。
胃捻転は整復したが、この閉塞性病変を放置すると再発する恐れがあるため、腸の一部切除を実施し、縫合して手術終了とした。
ー-以下病理所見ー-
摘出された小腸では、悪性の上皮性腫瘍が形成されており、腸粘膜由来の腺癌と判断されます。断
端部には腫瘍細胞は認められませんが、腫瘍は周囲の腸間膜脂肪組織に顕著に浸潤しています。非
常に悪性度の高い腫瘍であることから、リンパ節の状態や腹腔内播種、腹水の貯留について経過には注意が必要です。
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治療・術後経過
非常に高悪性度の腫瘍であったことも関連していると考えられるが、術後腹膜炎を発症し、予後不良となった。
担当医:白井 顕治
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