乳腺に腫瘤が形成され、しばらく様子を見ていたら大きくなってきたという主訴は比較的多い。犬において、乳腺腫瘍は雌犬に多発するが、雌雄合わせた犬全体の体表腫瘍の中でも最も発生率の多い腫瘍であるため、雌犬においての発生率はかなり多いと考えてよい。発生は避妊手術を受けているかどうかに大きく影響し、典型的には避妊手術を行っていない雌犬や、中高齢になってから避妊手術を実施した雌犬に発生が多く認められる。
放置しておくと悪性化することがわかっているため、小型の良性腫瘍であるうちに摘出することが望ましい。
実績詳細
13歳の雑種犬の両側乳腺切除(乳腺腺癌)、卵巣の顆粒膜細胞腫
種類 | 雑種犬 |
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年齢 | 13歳9か月 |
診療科目 | 軟部外科・整形外科 腫瘍科 |
症状 | 以前から乳腺にしこりがあった。最近急に大きくなった |
症状の概要
検査結果
症例は右第三、第四乳腺、左第2~4乳腺に腫瘤性病変が認められた。
急速に拡大した腫瘤は右第3~4乳腺部の腫瘤であった。
ご家族と治療内容を相談し、卵巣子宮摘出および左右乳腺の全切除を行うこととした。
治療方法
手術前及び卵巣子宮の摘出を行った
左右乳腺の切除領域を決定し、摘出を行った。
術後
治療・術後経過
術後14日で抜糸を行い、21日後には傷は良好に閉鎖した。
ーー以下病理所見ーー
右3、4乳腺では、悪性の乳腺腺癌が形成されています。マージン部に腫瘍性の病変は認められませんが、腫瘍の境界は不明瞭で、周囲の複数のリンパ管内に腫瘍細胞の浸潤が認められ、右鼠径リンパ節には初期の転移性の病変が形成されています。悪性度の高い腫瘍であることから再発や転移の拡大について経過には注意が必要です。
左2、3、4乳腺の複数の腫瘤はいずれも、良性の乳腺腫瘍と診断されます。摘出状態は良好で、今回の切除により予後は良好です。
両側の卵巣では、複数の嚢胞が認められ、一部に顆粒膜細胞に由来する腫瘍が形成されています。腫瘍は卵巣内に限局しており、被膜外への浸潤は認められません。摘出状態は良好で、今回の摘出により予後は良好と考えられます。子宮には著変は認められません。
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乳腺腺癌及び卵巣に顆粒膜細胞腫が確認されたため、今後の治療方法をご家族と相談した結果、局所及び転移性病変の発生が起こるかを経過観察している。
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