TPLOで使用するプレートやスクリューなどのインプラントは、通常は体内にそのまま留置して問題ありません。
多くの犬では一生涯除去する必要がなく、骨癒合後も違和感なく生活できます。
ただし、以下のような特別な状況では、インプラントを取り除く(抜去する)ことがあります。
インプラントの破損(折れ・曲がりなど)
位置が適切でない場合(関節内への侵入など)
術後感染や慢性炎症が起きた場合
数年後にプレート周囲を気にして舐め続けるなど、明らかな違和感が見られる場合
これらが認められる際には、レントゲンや症状から総合的に判断し、必要に応じてインプラント除去を検討します。
実績詳細
MIX犬(5.3kg)の右前十字靭帯断裂に対するTPLO術(脛骨高平部水平化骨切術)
| 種類 | MIX |
|---|---|
| 診療科目 | 軟部外科・整形外科 |
| 症状 | リビングにいて、突然キャンと泣いて、見てみたら右足をあげていた、という主訴です。 |
症状の概要
検査結果
自宅のリビングで「キャン」と鳴いた直後から右後肢を上げて歩けなくなったとのことで来院されました。診察室での観察でも、右後肢にはほとんど体重をかけられない状態が続いていました。
触診では、膝関節において クラニアルドロアーサイン(前方引き出し徴候) および 脛骨圧迫試験 が陽性となり、膝が前方に滑る不安定性が明確に確認されました。これらは前十字靭帯断裂を疑う最も代表的な身体検査所見です。
レントゲン検査では、膝蓋靭帯の後方の脂肪体が機能的位置から押し出されたように見える “ファットパッドサイン” が認められ、関節内の炎症と靭帯損傷を示す特徴的な所見が揃いました。
これらの身体検査と画像検査の結果から、
右前十字靭帯断裂(完全断裂) と診断しました。
治療方法
右後肢に対してTPLO手術を実施しました。当院では小型犬であっても安定した歩行回復を得るため、標準的にTPLOを採用しています。
まず皮膚を切開し、膝関節包を丁寧に開いて内部を確認しました。断裂していた前十字靭帯は、残存している繊維も含めて適切に除去し、関節内の清浄化を行いました。また内側半月板についても損傷の有無を確認し、必要な処置を加えています。
続けてTPLOへ移行し、ラウンドソーを用いて脛骨を予定の位置で骨切りしました。その後、脛骨高平部を適切な角度に回転させ、専用のTPLOプレートを用いてしっかりと固定しました。最後に関節包、皮下組織、皮膚を順に閉鎖し、手術を終了しました。


治療・術後経過
この症例では、術後の歩行開始がゆっくりめでした。手術後しばらくは右後肢を挙上したまま過ごしていましたが、術後7日目頃からゆっくりと接地を始め、慎重ながら負重しようとする様子が見られるようになりました。
1週間後に抜糸を行い、その後も落ち着いて経過を観察していきました。術後3週間ほど経過した時点では、しっかりと負重して歩行できるようになり、回復の流れとしては問題のない範囲 と判断されました。
歩行開始のタイミングには個体差があり、今回のように慎重なタイプの犬では、恐る恐る歩き出すまでに時間がかかることがありますが、最終的な回復の質には影響なく、経過は良好でした。
担当医:白井 顕治
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