最終更新日(2022年12月21日)
この記事では、犬の乳腺腫瘍の費用についての情報を記載していきます。
目次
はじめに
獣医療は人医療と異なり、自由診療部分が多いため、一つの病気になったときに行う検査や治療が動物病院によって異なります。
また、行ったことに対する費用も病院ごとに異なることは多くの方がご存じだと思います。
また、どれ一つとっても、まったく同じ症例というのはいませんので、必ずケースバイケースということが入ってきますが、
この記事ではケースバイケースの要因になることを一つずつ紹介します。
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乳腺腫瘍の手術費用に犬種は関係あるか?
動物病院によって違いがあるかもしれませんが、当院では犬種による違いはありません。
ただ、手術難易度として、イタリアングレーハウンドのような皮膚の薄い犬種においては難易度が上昇するため、費用を別途設けている動物病院もあるかもしれません。(実例として設けている動物病院は、聞いたことはありません)
体重によって乳腺腫瘍の手術費用は変化するか?
これは、当院においては麻酔料という部分で関わってきます。犬種についてあまり言及していないのも、体形がかなり影響するためではないかと個人的には考えています。
手術費、技術料に関しては、病院によっては大型犬においては小型犬と比較すると費用を多くいただいている病院もあるかもしれませんが、当院においては体重によって変動するものとしては麻酔量が最も関連しています。
持病の有無によって乳腺腫瘍の手術費用が変化するか?
まず、手術の技術的な部分は、持病はほぼ関係ないことがほとんどなので、変化しないと思います。
これが変化するのは、術前や術後の対応が変化する可能性があります。
手術前に薬を飲んで置いたり、術後に長めに点滴をつけて置いたり、そういった部分が費用に関連してくる可能性が考えられます。
あまりにも重症な持病の場合には、手術自体を考えなくてはいけないかもしれませんが、手術ができる範囲の持病として記載しています。
年齢によって乳腺腫瘍の手術費用が変化するか?
一般的に、犬種を全て混ぜてしまっている報告ですが、12歳を境に麻酔リスクが上昇するといわれています。
当院においては、12歳以上の手術の場合には前日から入院して点滴を装着し始めるため、その点で費用に関わってきます。
また、病院によっては、麻酔料という部分で、年齢年齢と費用を関連付けている動物病院もあるかもしれません。
避妊手術をしていないと、乳腺腫瘍の手術費用が変わるか?
これは、基本的に乳腺腫瘍を摘出する際に、卵巣子宮を摘出する避妊手術を行っていないワンちゃんの場合には、乳腺腫瘍の摘出と併せて卵巣と子宮の摘出も行います。
そのため、開腹し、卵巣子宮を摘出する技術的な費用と、その分延長する麻酔に対する費用が加算されると考えられます。
また、病院によっては同時に卵巣子宮を摘出するかどうかで、入院期間を変動する要因とするかもしれません。
乳腺腫瘍の数や大きさで、手術費用は変わるのか?
これは、変わります。いくつ取るのか、どれくらいとるのか、乳腺をどれくらい切除するのかで、手術費用自体と、麻酔料が変わってきます。
当然ですが、小さく、単一のものほど費用は安く、たくさんあったり、大きかったりする場合には、それだけ費用も掛かってくる傾向にあります。
病理検査を行う必要はあるの?
摘出した乳腺の病理組織検査についてです。病院によっては、行うか行わないか、選べる病院もあるようですが、当院では基本的に実施します。もちろん、ご家族から許可が下りない場合には実施しませんが、基本的に許可をいただけるため、実施します。
これは通常、専門の病理組織検査センターへ外注依頼しますので、その分費用が掛かってきます。
手術費用以外にはどのような費用が掛かってくる可能性があるか?
手術以外にかかってくる可能性のあるものを箇条書きにしていきます。
- 麻酔前検査
- 入院費
- 手術費
- 麻酔料
- 投薬・注射・処置など
- 点滴
- 傷の消毒処置
- 内服薬の処方
そのほかに退院後に再診料や抜糸、病理組織検査などが、すべて終わるまでにかかると考えられる費用の項目です。
動物病院によっては、項目の名前や内容が異なることもあると思いますので、わからない点は各病院の受付または獣医師に問い合わせるとよいでしょう。
例としての費用
(動物病院によって麻酔前検査を行うかどうか、病理検査を行うかどうか、どこまでの費用を含んでいっているかという議論が必ず出てきます。高く書いてある部分については、すべてを込みで記載している可能性を考えてください。)
単一乳腺の小さい腫瘍で、すでに卵巣子宮が摘出されている場合
3~8万円程度
片側の乳腺をすべて摘出する必要があり、卵巣と子宮も併せて摘出する
18~25万円程度
両側の乳腺を切除したり、かなり大型な乳腺腫瘍である場合
25~30万円程度
というのが、当院もしくは知り合いの病院も含めて、答えられる範囲です。
幅もありますので、これよりも安いことも、高いことも、当然あると思います。
動物病院によっては単純に手術費用のみを掲載し、入院費や麻酔料、病理検査を入れないで記載している場合もあると聞いたことがあります。
前述のとおり、同じ症例はいませんので、インターネットでたくさん検索することも大切ですが、実際に連れて行った動物病院で診察してもらい、その状態で費用をうかがうのが一番正確ですので、あくまで参考にお読みください。
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犬の乳腺腫瘍の診断、治療について治療経験の豊富な獣医師が担当いたします。
お気軽にお尋ねください。志津・佐倉しらい動物病院
著者プロフィール
白井顕治(しらい けんじ)副院長
獣医師、医学博士、日本動物病院協会(JAHA)内科認定医・総合臨床認定医
千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。
当院において乳腺外科については私が担当しており、この記事に紹介している手術はすべて私が担当しています。