目次
排便について
排便は食べた食物を消化し、栄養や水分を吸収した後のものを排泄することで、便の中には食物の残差や細菌、胆汁や腸粘膜の細胞が含まれています。
正常な排便回数について
明確なものはありませんが、1日1回から4回程度は正常といってよいと考えられます。
活動性が低かったり、高齢だったり、食べているご飯が少なかったり、低残渣食を食べている場合には数日に1回になることもあります。
また、食べている食事自体の残渣の量も、排便回数に関わってきます。便が少なくなるような低残渣色を食べている場合には、排便の量は少なくなります。
便がいつもよりも柔らかい?ゆるい?
便が柔らかい・ゆるい場合に下痢かどうかを心配してしまうこともあります。
多くの場合、下痢は通常よりも水分を多く含んでいる状態の柔らかい便を指しますが、異常のある腸管の部位によって下痢の性状が異なります。
ワンちゃんであっても人と同様に良好便が出ることが正常なので、軟便(柔らかいうんち)が継続する場合には何らかの異常があることが疑われます。
「軟便が続いてはいるが、元気はある」という状態であっても、何らかの異常が隠れている可能性が高いといえます。
ベースとして軟便が出続けるということは正常な状態とは言えません。
小腸性下痢
腸管の中で、主に小腸に異常が生じて発生する下痢を指します。正常~やや柔らかい便がいつもより多く排泄されます。体重減少や嘔吐を伴うこともあります。
大腸性下痢
腸管の中で、主に台帳に異常が生じて発生する下痢を指します。大腸は水分を吸収する部位なので、その大腸に異常が生じた場合には水分を正常に吸収することができません。そのため、水っぽい便や、ゼリー状の便、鮮血が混ざる便が出ることがあります。
また、一般的には便の回数は増え、多い時には10回を超えます。「しぶり」といわれる、便があまり出ないのに力む症状がみられることもあります。
正常だが便が柔らかい場合
食事内容を変えた場合や、その日の複数回目の排便だったり、正常な便の最後のほうだけが柔らかいような場合には、病気ではなく生理的な下痢の可能性があります。
水分を過剰に摂取した場合には、通常は大腸が水分を吸収して排尿が多くなるだけだと考えられますが、大腸の許容を大きく超えた飲水があった場合には水分の過剰摂取による下痢を起こすこともあります。
緊急性が高い下痢の症状とは
下痢の症状として、血便やしぶりの症状がひどい場合には動物病院を受診したほうがよいと考えられます。また、下痢以外にも食欲の低下や嘔吐、元気消失が起こっている場合にも、早々の受診をすることをお勧めします。
様子を見ても大丈夫な可能性がある下痢
前述したように、「元気があり」「しぶりなどはなく」「正常な便の最後のほうが柔らかい」場合や、「元気があり」「しぶりなどはなく」「食事を変更したなどの疑わしい理由があるとき」には、様子を見ても大丈夫な可能性があります。
ただし、軟便が継続するようだったりほかの症状がある場合、そして高齢であったり既往歴として慢性疾患の治療中であるような場合には速やかに動物病院へ相談しましょう。
まとめ
下痢が起こったとしても必ずしも病気というわけではありません。生理的な下痢も存在します。ただし、病的な下痢であることも多々あるため、繰り返す下痢や長く続く下痢、下痢以外にも症状を伴っている場合には速やかに動物病院を受診しましょう。
著者プロフィール
白井顕治(しらい けんじ)院長
獣医師、医学博士、日本動物病院協会(JAHA)内科認定医・総合臨床認定医
千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。
当院は国際ねこ医学会(isfm)よりキャットフレンドリーゴールド認定を受けている病院です。