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犬の椎間板ヘルニアとは
ヘルニアとは、ある部分に存在していた構造が、その場所から飛び出してしまう病態を指します。場所によって椎間板ヘルニア、鼠経ヘルニア、会陰ヘルニアなどの病名となります。
椎間板ヘルニアとは脊椎と脊椎の間にある椎間板の変性に続いて発生する脊柱管内への椎間板や椎間板物質の突出や逸脱によって発生する病気です。
犬の神経疾患の中で最も発生率が高い疾患です。
発生率が高い理由として、CTやMRIなどの高度画像診断が普及し、診断機会が増えたということや、ダックスやトイプードル、フレンチブルドッグなど、椎間板ヘルニアを比較的起こしやすい犬種が人気犬種になっているためという背景が関連しているといわれています。
犬の椎間板ヘルニアの種類
椎間板ヘルニアにはハンセンⅠ型、ハンセンⅡ型に分けることができます。
また、椎間板ヘルニアが発生する場所として頸部椎間板ヘルニア、腰部(胸腰部)椎間板ヘルニアに分けられます。
椎間板ヘルニアになりやすい犬種や年齢は?
ハンセンⅠ型は繊維輪を飛び出してしまうタイプで、ダックスやビーグル、シーズーのような軟骨異栄養犬種に好発します。
ハンセンⅡ型は半年から数年かけて、繊維輪を飛び出さずに徐々に盛り上がって圧迫していくタイプで、非軟骨栄養犬種に多いとされています。
いずれの型であったも、95%以上は3歳以上での発生となるため、3歳以下の若い個体で腰痛や後躯マヒが生じた場合には他の原因の可能性も考えます。
犬の椎間板ヘルニアはどんな症状が出る?
椎間板ヘルニアの症状として、疼痛(頸部痛、背部痛)や歩様異常、運動・感覚ニューロンのマヒなどが生じる可能性があります。
進行すると、不全麻痺・完全麻痺や排尿障害が起こることもあります。
いずれの症状も必ず出る症状はなく、痛みが出ないタイプの椎間板ヘルニアも存在しますので、「麻痺は起きているが、体を触っても痛がらないので椎間板ヘルニアではない」というような区別はすることができません。
犬の椎間板ヘルニアの診断方法
診断は犬種や年齢、既往歴や症状などの臨床所見および触診、画像診断によります。
画像診断としては、レントゲン検査、脊髄造影、CTやMRIなどが挙げられ、最も感度が高い検査はMRIや脊髄造影CTが挙げられます。
レントゲン検査
CT検査
犬の椎間板ヘルニアの治療方法
治療方法には大きく分けて
内科療法(保存療法)と外科療法に分けられます。
保存療法にはケージレストや痛み止め、抗炎症薬や抗酸化薬、リハビリテーションなどが含まれます。
外科療法は椎間板の脱出状況や圧迫様式によって異なりますが、基本的に目的としては脊髄に対する圧迫を解除することを目的とした手術を実施します。
治療にかかる費用は?
治療にかかる費用は、検査費用と治療費用に分けららえます。
検査費用としては診察料やレントゲンやCT,MRIなどの費用が掛かると考えられます。
治療としては症例の症状の程度によって保存療法を選択するか外科療法を選択することになり、どちらかによって変わってきます。
また、治療費用は一般的に外科療法のほうが高額になりますので、費用面から保存療法を選択するケースもあります。
椎間板ヘルニアの後遺症は?
治療後の椎間板ヘルニアの後遺症は元から椎間板ヘルニアが発生していた場所や圧迫の程度、圧迫の期間、ヘルニアの重症度によって異なります。
後遺症が残る場合には、術前と大きく異なる症状が出る後遺症というよりは、術前から発生していた症状が完全に治りきらないで後遺症として残ってしまうということが考えられます。
終わりに
犬の椎間板ヘルニアは神経疾患の中で最も発生頻度が多い疾患であるため、珍しい病気ではありません。
ご家族が自宅で気が付く主訴としては「体を痛がる、触ったらきゃ鳴く、うずくまってる」などの症状が挙げられます。
異変に気が付いたら、動物病院を受診しましょう。
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著者プロフィール
獣医師 清水健:整形外科担当獣医師
- 小動物整形外科協会(VOA)認定獣医師
- ONE千葉動物整形外科センター 研修生