目次
洋服づくりについて
チューブが出る場所
ペットに胃瘻チューブを設置した際には、ペットの左わき腹から胃に入るチューブが出ます。設置する施設やチューブの種類によって違いがあるかもしれませんが、標準的には最後の肋骨からさらに1~1.5センチほど尾側につきます。
胃瘻チューブの長さ
この胃瘻チューブは短いと、食事を入れるときのチューブを通す抵抗感は少ないですが、ペットが動いた際に使いづらくなってしまいます。
逆に長いと、チューブから食事を通す際の抵抗力が強くなってしまいますが、少しペットが動いても、たわみがある分すぐにチューブが「ぴーん」となってしまわないので、使用しやすいです。
長すぎず、短すぎずのチューブが良いでしょう。
洋服は着ないといけないのか
チューブが常にぶら下がっている状態となってしまい、家具などに引っ掛かる可能性を考えると、チューブを収納するためにポケットのついた洋服を着る必要があるといえます。
洋服(手作りかオーダーメイドか)
インターネット上に、胃瘻チューブを装着したペット用の洋服を販売している店舗もあります。体長や胴回りなどを自宅で計測してオーダーメイドで作ってくれるようです。
このようなオーダーメイドも、家庭科に自信がない方は積極的に使った方が良いと思います。
オーダーメイド品のメリットとして、見た目の出来栄えが良いということがあります。体調が悪い中なので、せめて洋服はいい感じのものを着せてあげたいと考えるご家族様もいらっしゃいます。
それに対して自身で手作りする場合には、私からアドバイスをさせていただき、既製品の服やポーチを改良して作成する方法をお伝えしています。
メリットとして、どこに胃瘻チューブが設置されていて、そのペットがどのように横になったり活動するかは、自宅に帰ってみないとわかりません。
帰宅してからチューブの様子を観察して、洋服の穴の位置が合わなかったりポケットの位置がずれている場合に、自分で改良を加えられるのは、手作りの強みなんじゃないかなと感じています。
洋服の作り方
普通のペット用のシャツを購入してきます。
慣れていないうちは失敗することを考えて、安いものでもいいですし、サイズが合えば人間の赤ちゃん用のロンパースでも構いません。
犬であれば、体長にあっているもの。猫であれば、ダックス用などが合いやすい印象を受けます。
試着中。いい感じです。
背中開きの方が着脱がしやすいですので、背中をズバッと切って、ほつれないようにかがっておきます。
背中にはマジックテープ、ボタン、家庭科が得意な人であればファスナーを取り付け、背中開きのTシャツの完成です。
この時、後ろ足まで入るタイプの洋服でもOKです。
次いで、チューブは左わきから出てきます。
チューブを収納するために円形のポーチを用意します。
(100均などですぐに手に入ります)
チューブが入るように、背部に穴をあけて、洋服に装着します。
こんな感じの仕上がりイメージです。
チューブは丸めて収納するので、円形のポーチが使いやすいと思います。
以上が、これまで様々な飼い主さんたちとチューブ用の洋服を手造りをしてきて、洋裁が苦手な方でも作れるレベルの作成手順です。
胃瘻チューブからの食事
胃瘻チューブは割と太いので、ドライフードやウェットフードをミキサーにかけたものが通ります。
フードと一緒に投薬もできます。
この記事の紹介では薬とご飯を一緒にしてしまっていますが、その時にあげる薬の種類によって、同時に給餌したり給餌とは別に投薬しても良いです。
また、記事ではドライフードを粉砕してからふやかしていますが、ふやかしてからミキサーにかけても構いません。
薬は、90℃のお湯をかけると成分が変化してしまうため、高くても60度くらいまでのお湯で懸濁させるようにしましょう。
粉砕されたフードと薬
ふやかしてからチューブへ。
慣れれば数分で給餌完了です。
胃瘻チューブからの食事でのよくある質問
・1日何回くらいあげるといいですか?
→少量頻回の方が気持ち悪くなりづらいペットが多いです。
・1回どのくらいの量を入れていいですか?
→ペットによって異なります。少ない量から上げていき、顔色を見ながら増やしていきましょう。
・チューブの中の掃除はどうすればよいですか
→通常使用するときは最後に水や空気で充填しておしまいにするとよいです。
きれいにしたいときには、緩めに作成した寒天を流してあげると、チューブ内がきれいになります。
・口からも食べています。どのくらいチューブから入れるべきですか?
→体重を図って、目標体重を維持しできる量、もしくは足りないのであればもう少し多い量を目安に給餌してあげましょう。
・チューブから入れると吐きます。
→かかりつけの先生に相談しましょう。持病により対応が異なります。
・チューブが抜けてしまったらどうすればよいですか
→通常、自然に抜けることは無いくらいしっかりとついています。現状で抜けてしまったかもしれないと感じた場合には、すぐにかかりつけの先生を受診しましょう。
まとめ
胃瘻チューブを設置する際に説明している洋服の作り方や、食事のあげ方について記載させていただきました。
参考になればうれしいです。
写真の茶虎の猫は、私が飼育していた愛猫です。
人生で3回胃瘻チューブを設置しています。
著者プロフィール
白井顕治(しらい けんじ)院長
獣医師、医学博士、日本動物病院協会(JAHA)内科認定医・総合臨床認定医
千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。
当院は国際ねこ医学会(isfm)よりキャットフレンドリーゴールド認定を受けている病院です。