こんにちは、獣医師の白井顕治です。
この記事では、犬と猫の去勢手術についての情報を記載させていただきます。
去勢手術というのは、オスに行われる睾丸を摘出する手術のことなので、対象はオスのペットとなります。
手術の方法は全身麻酔をかけ、皮膚を切開し、睾丸を摘出し、皮膚を縫合していくことで終了となります。
時折、ネコの去勢手術では切開した陰嚢を縫合しないという術式もありますが、当院では縫合を行っています。
短時間で終わる手術となりますが、麻酔中に動いてしまうことがないよう、当院では通常の手術と同じように安定した麻酔を行うことができるガス麻酔を用いて去勢手術に臨んでいます。
術後は、エリザベスカラーをし、約1週間後に術部の抜糸を行います。
その間は、抗生剤を使用して、術部の感染症を予防します。
エリザベスカラーは抜糸を行った日に取り外すことができますが、シャンプーは抜糸後1週間後以降に行うようにお願いしています。
(※全て当院における通常の去勢手術後の指導であり、他院では異なる場合もあります。)
手術対象となる年齢は犬でもネコでも生後7か月以降を当院では飼い主様には勧めさせていただいております。
7か月という理由についてですが、特に犬の小型種においては、歯が乳歯から永久歯への生え変わりがうまくできない「乳歯遺残」という遺伝的な異常が比較的よく発生します。
歯の中で最後に生え変わるのは犬歯で、遅くとも7か月齢までには生え変わることがわかっています。逆に言うと、7カ月になっていても生えている乳歯は、遺残乳歯ということになりますので、矯正のためにも抜歯を行う必要があります。
歯の抜歯にも全身麻酔が必要となりますので、去勢手術と同時に行えるように7か月以降の去勢手術を勧めているというのが理由です。
去勢手術単独であれば、5か月齢程度から(病院によってはより早く実施する医院もあると思います。)行うことができますが、その月齢で行ったのちに、乳歯遺残であるとわかった場合に、全身麻酔を短期間で2回かける必要が出てきてしまいます。
そういった事態を避けるための7か月齢手術ということです。(少しわかりにくかったでしょうか・・)
また、去勢手術を行う予定がない場合でも、乳歯遺残が認められる場合には歯列矯正のために乳歯抜歯を行うことが推奨されます。遺残乳歯抜歯の推奨時期は、同じく7か月齢程度となります。
もちろん、それ以降は2歳でも3歳でも、15歳でも行うことはできますが、年齢によっては術前検査をさせて頂く場合がありますので、手術について考えている場合には、まずは電話にてお問い合わせください。
手術をする理由についてですが、一般的に言われている範囲内とはなりますが、実らない性衝動へのストレスの回避や雄性ホルモンによる攻撃性上昇の危険性の回避、公園などで発情中のメス犬がいた際に、突然マウンティングしてしまうことの回避(これについては、犬種の体の大きさが著しくかけ離れていてもマウンティングしてしまうことがあり、体重差による事故の原因にもなります。)、マーキングや尿臭が強くなることの予防等が、普段の生活をしていくうえで去勢手術を行う、メリットとみられる側面であると言えます。
また、疾患の予防という目的で行うという考えもあります。
会陰ヘルニアや肛門周囲腺腫、前立腺肥大症などはどれも男性ホルモンに関連して起こると言われていますので、去勢手術を行うことにより発生率を低くすることが期待できます。
手術を行うデメリットについては、血統的に保存することができない、性ホルモン関連の身体活動が減るため、消費カロリーが減ることによりやや体重が増えやすい傾向になる等があげられます。
血統的な話に関しては、一度摘出してしまった睾丸は元に戻すことができないため、こういったことで手術を考え中の方はご相談ください。
その他、アメリカなどでは、超大型件に関して1歳以下で去勢手術を行うとその後に関節炎が生じやすくなるなどのデータが出ているため、犬種によっては去勢手術を勧める時期が異なる場合もあります。
これらが、一般的に去勢手術についてお悩みの飼い主様と相談する内容にはなりますが、個々のペットの状態に応じてお勧めする内容や手術の時期などは異なるため、去勢手術について相談がある方は、お気軽に受診ください。