近年、超音波検査機器の精度の向上と、動物病院への機器の普及により胆嚢粘液嚢腫と診断されるペットが増えてきています。胆嚢粘液嚢腫に関して、適切な外科手術のタイミングというのはいまだに世界の軟部外科医の間でも意見は統一されておらず議論中ではありますが、健康診断で発見されるような初期の無症状の胆嚢粘液嚢腫に対しては当院では手術をお勧めしていません。重度に拡張し、近日中に破裂しそうであったり、今回のように臨床症状が伴っている場合に手術適応としています。手術を勧めるかどうかというのは超音波検査所見と血液検査や尿検査の所見、何よりも本人の一般状態を併せて判断します。
実績詳細
シュナウザーの胆嚢粘液嚢腫による胆嚢壊死
検査結果
一般身体検査及びスクリーニング検査を行った結果、腹痛および黄疸が認められ、腹部超音波検査では重度に拡張した胆嚢と胆嚢粘液嚢腫を確認した。
胆嚢粘液嚢腫による胆道閉塞による黄疸と診断した。
胆のうの拡張の程度より、近日中に破裂する可能性が高いと判断されたため、手術を行うこととなった。
治療方法
黄疸時に麻酔を行うことを避けるため、点滴による内科療法を行い元気食欲がある程度安定化したのちに手術を行った。
開腹し、重度に拡張した胆嚢を確認
腹腔内を探索したが、破裂は起きていないと判断されたため、胆嚢切開を行い内容物を摘出した。
その後、胆嚢を摘出し、十二指腸までの総胆管の疎通を確認したのちに閉腹した。
ーーー以下胆のう病理所見ーーー
胆嚢は、広範囲な壊死に陥っています。胆嚢内には粘液貯留が起こっており、胆嚢粘液嚢腫から壊死に陥ったと考えられます。胆嚢壁周囲には軽度の肉芽組織の増生が起こっており、慢性経過の変化と考えられます。
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治療・術後経過
手術翌日より、食事もよく食べ、経過は非常に良好であった。
術後1か月検診の血液検査においても軽度の肝酵素上昇以外の所見は認められないため、治療終了とした。
経過良好
担当医:白井 顕治
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