犬における体表のメラノーマ(悪性黒色腫)は発生する部位によって生物学的挙動が異なることが知られている。
一般に口腔・舌>爪床・指(趾)端>体表有毛部の順に悪性度が高い(口腔・舌が高悪性度)。様々な治療法が検討されているが、現状としては外科的な完全な摘出が最も効果のある治療とされており、化学療法や放射線療法の効果は限定的である。
実績詳細
ミニチュアシュナウザーの後肢主球に形成されたメラノーマ(悪性黒色腫)
種類 | ミニチュアシュナウザー |
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年齢 | 11歳 |
診療科目 | 軟部外科・整形外科 腫瘍科 |
症状 | 他院にて後肢の肉球にメラノーマができたと診断された。治療希望のため当院受診 |
症状の概要
検査結果
症例は数か月前より後肢肉球に病変があり、皮膚疾患の可能性を考えて内科療法を続けていた。
しかし、改善が認められないため組織生検を実施したところ、メラノーマ(悪性黒色腫)と病理診断された。
そのため、治療を目的に当院を受診したとのことであった。
当院初診時、すでに膝窩リンパ節の腫脹が認められたため、転移が始まっていることが予想されたため、速やかにCT撮影および手術計画を立てることとした。
CT撮影の結果、そのほかの疾患は検出されなかった。
また、転移巣としては膝窩リンパ節よりも先のリンパ節には腫脹は認められなかった。
ーー以下膝窩リンパ節の細胞診所見ーー
左の膝窩リンパ節の塗抹に認められる黒色の顆粒を有する細胞は、メラニン顆粒を貪食したマクロファージ(メラノファージ)と考えられ、明らかな異型細胞は認められませんが、数がやや多く、細胞診では全体像の評価も困難ですので、腫大してくる場合には再検査をご検討下さい。
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以上の結果より、膝窩リンパ節を含め、股関節離断による左後肢の断脚を行うこととした。
病変部位
治療方法
術前
股関節レベルで断脚を実施した。
縫合後
術後、摘出した患肢の膝窩リンパ節周囲を切開して観察すると、リンパ管に沿ってメラノーマの腫瘍細胞が転移していることが目視で確認できる。
(イントランジットメラノーマ)
治療・術後経過
術後10日
バランスが取れないためにふらつきはあるものの、元気食欲ともに問題なく抜糸を行った。
ーーー以下病理検査所見ーーー
左後肢の肢端部では、メラニン色素を有する悪性の非上皮性の腫瘍が形成されており、悪性黒色腫と診断されます。マージン部に腫瘍細胞は認められませんが、左膝窩リンパ節には転移性の病変が形成されています。
悪性度の高い腫瘍であることから、引き続き、転移の拡大などについて経過には注意が必要です。
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現在経過観察中
担当医:執刀医:白井 顕治
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