佐倉しらい動物病院ブログ

【獣医師監修】小型犬の後ろ足に跛行(びっこ)を起こす病気の紹介

はじめに

この記事では、主に体重が10kg以下の小型種、トイ種のワンちゃんの後ろ足の動き、地面へのつき方がおかしい、びっこを引いてしまうような病気について、部位別、原因別に紹介していきます。

跛行(はこう・びっこ)とは

何らかの異常により、正常な歩行ができない状態のことを指します。

痛みを感じている場合もあれば、うまく命令を出すことができずに正常な動きができていない場合もあります。

原因によって、主に整形外科的な異常や神経的な異常が挙げられます。

この記事では、整形外科的な原因についてあげていきます。

さらに、整形外科的な異常を原因別に

靭帯、骨、膝関節、股関節、足根関節(足首)、筋肉の異常、そのほか

に分類して、良く認められる疾患を挙げていきます。

靭帯の異常

靭帯は骨と骨、骨と筋肉をつないでいる硬い繊維性の帯です。通常は非常に強固な組織ですが、落下や交通事故などの強い外力が加わったり、加齢や肥満、内分泌疾患によって靭帯の強度自体が落ちてしまうような場合には、損傷(部分断裂)や完全断裂を引き起こしてしまうこともあります。

前十字靭帯損傷

犬における靭帯の損傷の疾患の中では最も多い疾患と言えます。前十字靭帯はひざの関節の中にあり、大腿骨と脛骨(太ももの骨とすねの骨)をつないでいる靭帯です。体重をかけると、通常はすねの骨が前方にずれてしまいますが、この靭帯がそれを制御しています。損傷の程度としては部分断裂と完全断裂に分かれ、症状は部分断裂のほうがより明らかに出ることが多いです。

病気の疫学として、4―6歳位から切れ始めることが多いため、若齢での発症はまれです。中年齢から高齢にかけて増加していく傾向にあります。急性の跛行を示します。前述のような落下や交通事故などの外傷で切れることは少なく、多くが二次性の変化によるものが多いとされています。そのため、片方が切れてしまった場合、反対足も切れてしまう可能性があるので注意が必要です。

部分断裂の場合には、軽度の跛行(びっこ)のことが多いですが、座り方や食事の姿勢が変わったという主訴で来院されることがあります。

完全断裂の場合には断裂したときに跛行(びっこ)が発現・悪化するため、「突然後ろ足をびっこひいてる」という主訴で来院されることが多いです。

前十字靭帯の完全断裂によって後ろ足がびっこを引いている場合、無治療・短期間で改善することはないため、継続するびっこの場合には動物病院を受診してこの疾患の有無を調べておいたほうが良いと考えられます。

【症例:パピヨンの前十字靭帯の断裂

そのほかの靭帯の異常

犬の後ろ足における、靭帯の異常が原因での跛行は前十字靭帯の断裂が主ですが、そのほかにはアキレス腱や足底靭帯の断裂、指を支えている指間靭帯の断裂によって跛行を呈したり、気にして患部をずっとなめたりしてしまう症状が出ることがあります。

トイプードルの指の側副靭帯の断裂のレントゲン

骨の異常

骨折はどこの骨にも起こりえるので、この記事ではあえて挙げません。骨折以外の骨以外の異常としては、無菌性大腿骨頭壊死が挙げられます。

無菌性大腿骨頭壊死症(レッグ・カルべ・ペルテス)

無菌性大腿骨頭壊死はレッグ・カルベ・ペルテス病とも呼ばれており、同一の疾患です。ヨーキー、トイプードル、テリア系に多く、3―13ヶ月齢くらいの成長期に発症し、跛行の程度が徐々に悪化していきます。片側性が多いですが、10−16%で両側性に起こってしまうとされています。治療方法としては、外科的に大腿骨頭を切除することが推奨されます。

【症例】

トイプードルの無菌性大腿骨頭壊死(レッグ・カルベ・ペルテス病)

トイプードルの無菌性大腿骨頭壊死(レッグ・カルベ・ペルテス病)2

股関節の異常

小型犬の股関節の異常として、外傷や股関節形成不全が原因で脱臼してしまうことが多く、ほとんどが頭背側方向に外れます。またクッシング症候群、糖尿病や甲状腺機能低下症などを患っている場合、反対足も脱臼してしまうことがあるので注意が必要です。

脱臼の整復には、手術をせずに整復する方法と、手術による大腿骨頭切除や、人工関節術などが挙げられます(当院では人工関節術は行っておりません)

(↑股関節脱臼に対する非観血的整復)

膝関節の異常

小型犬において、ひざの関節は整形外科疾患の中でも多くの異常を起こす場所です。上記の「靭帯の異常」での前十字靭帯に加え、この膝蓋骨の脱臼が多く認められます。

膝蓋骨脱臼

膝蓋骨(パテラ)が内側もしくは外側に脱臼やゆるみのある状態を指します。小型犬に最も多く認められるのは内側に脱臼する膝蓋骨内包脱臼です。膝蓋骨のことを「patella」と言いますが、発生頻度が多いため、膝蓋骨が内方脱臼している状態を「パテラがあるね」というような表現をする獣医師もいます。正確にはパテラはみんな左右に一つずつ持っていますので、「パテラの内方脱臼があるよ」という意味で話しているはずです。

症状として、脱臼時に足をあげたり、体重がかけられない状態になります。しかし脱臼していない時はすぐに元通りになり、何もないなかったかのように振る舞うこともありあります。また、脱臼したり自然整復されるような場合には、脱臼時と整復時で歩き方が異なりますが、病状が進行して常に脱臼している場合には、ご家族から見ると常に同じ歩き方をしているため、びっこが出ているかどうか判断が難しいこともあります。

治療法は、グレードや本人の症状によって保存療法から外科療法まであります。また、脱臼している原因は症例によって異なりますので、手術法は症例によって異なることが多いです。

よくある主訴として「犬が突然後ろ足をびっこをひきはじめた」「すぐ治ることもある」というようなものがあり、このような間欠的跛行を呈することが特徴といえます。

【症例】

パグの膝蓋骨脱臼

足根関節の異常

足根関節は、人でいうかかとの関節です。この部位の異常が原因での跛行は多くはありませんが、アキレスけんの断裂や浅趾屈筋腱の脱臼、即今関節の靭帯断裂などが挙げられます。ねじったり、落下やドアで挟んでしまうことによる事故による発生が多いです。

筋肉の異常

小型犬が筋肉の異常で後肢の跛行を呈することは非常にまれです。

大型犬で腸腰筋を痛めてしまうことあり、激しく運動した後に起こることが多いといわれています。股関節の内旋時に痛みがでます。

そのほか

そのほかの疾患として関節リウマチを含む免疫介在性多発性関節炎が挙げられます。

1箇所の関節で起こることも稀にあるが、多くが複数の関節で異常をきたし、関節内に免疫介在性の慢性炎症が原因で、関節痛を引き起こすことがあります。血液検査と関節液の検査などで診断していきます。また、不明熱の原因になりやすい疾患ともいわれており、症状は跛行よりも発熱や元気消失、食欲低下が主な症状で来院されることもあります。

整形外科疾患の診療は千葉県佐倉市の志津・佐倉しらい動物病院へ

著者プロフィール

獣医師 清水健:整形外科担当獣医師

  • 小動物整形外科協会(VOA)認定獣医師
  • ONE千葉動物整形外科センター 研修生

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