佐倉しらい動物病院ブログ

【獣医師監修】犬や猫、ペットの安楽死について:タイミングや費用について解説

ペットの安楽死は選択できる?

現在日本国内の法律において、ペットの安楽死は禁止されておらず、各動物病院、各獣医師の裁量によって実施されることがあります。

安楽死を受け付けてもらえないことはある?

前述のとおり、獣医師の裁量により決定される部分もありますので、動物病院や獣医師によっては、「私は、当院では安楽死はしない」と決め、ご家族が希望されたとしてもいかなる病状であっても安楽死を選択肢に入れない施設や獣医師も存在するようです。

このような安楽死を受け付けないという存在もまた違法なわけではありません。

当院においても、状況に応じて対応が変わるため、希望があればすべて行うわけではありません。

安楽死はどんなタイミングで選択される?

「選択される」というより、正確には「選択肢に入ってくる」だと考えています。

判断基準はご家族ごとに変わってきますが、よく選択されるタイミングとして

・治る見込みがない疾患であり、その疾患によりペットが著しく苦しい日常を送っている

・高齢であり、認知症が進行しており、介護が難しかったりする場合など

・その他

があります。

その他は本当にケースバイケースですが、治療費用が問題となることもあれば、お世話をするということ自体が難しくなってしまったということもあります。また、宗教的な事由から選択された方もいます。

「どんな状態で、どんなタイミングであれば、安楽死という判断が妥当なのか。」「どんな状態であれば安楽死を選んだとしても飼い主としてひどくないのか。」そういった気持から検索を重ねる方が多いかなと思いますが、答えはありません。世論やネット上の人の意見に赦される理由を探す必要はありません。

きちんとペットと向き合って、飼い主様としてできること、しなくてはならないことを、主治医とよく相談することが最も重要かなと感じます。

安楽死はどのような方法でおこなわれる?

動物病院によって選択される薬剤が異なります。ホームドクターに直接聞いてみましょう。

安楽死の費用は?

こちらも動物病院ごとに、動物種や体重別に定められているかと思います。ペットの安楽死を考えた場合には事前に聞いておくと判断材料の一つとなるかと考えられます。

安楽死を悩んでいるご家族様へ

日本人は、国民性から、好んで安楽死は選ばない傾向にあると私は考えています。動物愛護に対する考えが盛んな欧州・米国では、慢性疾患が判明したらすぐに安楽死を選択するという飼い主さんも珍しくないようです。

もちろん、ペットが苦しんでいるから、安楽死をペットのために選んであげたいという気持ちもあれば、これ以上ペットが苦しんでいる様子を見ることに耐えられないので、自分のために安楽死を考えることもあるかもしれません。

なかなか他人に相談できない案件だと思います。少し相談をしてみても、「かわいそうじゃん」とか「もう少し頑張ってみなよ」とかそういったアドバイスがよく言われるかなと想像します。無難なアドバイスです。

ただ、安楽死が頭をよぎっているという時点で、かなり頑張った後の状態であることがほとんどです。精神的にも参ってしまっているご家族様も多くいらっしゃいます。

センシティブな内容ですが、一緒に生活するご家族たちにとっても大変な問題なのです。

家族内で意見が分かれているとき

自分の体感だと、家族内の意見が分かれているケースと、家族全員が安楽死を望んでいるケースは、【3:1】くらいだと感じています。家族全員が望んでいるケースが、「1」のほうです。

完全に体感です。

一致することが重要だという話ではなく、なぜ一致しないのかをきちんと考えていく必要があります。

誰が反対しているのか。なぜ反対しているのか。現状をきちんと把握できているのか。一番世話をしているのは誰なのか。どうなることを希望して反対しているのか。

同じ家族なのに、誰か一人が負担を強いられ、負担を負ってもいないのに「かわいそうだから」という理由で反対しているとしたら、ペットに対しては優しいような感じもしますが、負担を強いている家族には冷たいようにも映ります。

文章だとわかりにくいので例示すると

家の中でお母さんだけがペットの世話をしていて、朝から晩まで、深夜も、頑張って介護や投薬をして、動物病院に連れて行くのも全部お母さんがやっている。

家族は誰もそれを手伝っていないのに、お母さんがもうペットの世話をするのは体力的に難しいから安楽死を考えているという段になってから、「安楽死をするのはかわいそう」というような状況です。

これまでペットの世話をするときに何の手出しもしてこなかったのに、安楽死という選択をお母さんが口に出すまで追い詰まるまで放っておいたくせに、その選択にだけ「反対です」という口を出すことは、そこに正義や大義があるのかどうか、という話です。

ペットには優しいが、面倒を見ている人(お母さんなど)には優しいのか?ということも考えなくてはなりません。

あくまで例ですが、このようなケースはとても多いです。各御家庭の事情についてまで言及するつもりは毛頭ないのですが、このような状況の時にはきちんと話してご家族全体が、(安楽死という方向に限らず)救われる方向性になるよう話を解決にもっていってあげることも獣医師としては重要な役割なんじゃないのかなと考えております。

実例です。

明日は我が身となるかもしれません。感情移入をして読んでみてください。

例1

17歳、雑種犬

半年前から夜鳴きと徘徊がすごいワンちゃん。昼は寝ているけど、夜は鳴きっぱなし。抱っこするといったんは落ち着くので、ここ一週間は家族がかわるがわる抱きかかえて、いつも誰かが寝不足。ある朝、新聞を取りに郵便受けをあけると、「お前のところの犬がうるさい」と書かれたメモが入っていた。

メモを入れたのは近隣住民の誰かとは考えられるが、差出人は無し。

この段階で当院に相談に来られました。ご両親と大学生位と高校生位(推定)の息子さんが家族そろっての来院でした。

特に検査を希望されているわけではなく、仮診断として認知症としました。認知症に効果のあるサプリメントや食事の紹介、夜間の睡眠導入剤の使用など、様々な提案をしましたが、ご家族全員が不眠により心身虚弱のような状態となっており、追い打ちをかけるようにご近所からの手紙が来たため、安楽死を強く希望されていました。

(私は獣医師なので、ご家族の精神状態の診断はできませんが、印象から心身虚弱と表現しました)

安楽死を実施する際、ご両親はワンちゃんの頭のにおいをかぎながら、耳元で「今までありがとう」と伝え続けていました。最後に受付で、大学生だと思われる方が「あの子は僕が飼いたいって言って飼った犬だから、この費用は僕が払う。」と言って静かに涙を流していました。

17歳のワンちゃんは、このご家族の中で17年間生きてたんだなと、思ってみていました。途中はお世話をさぼった日もあると思います。結局散歩はお母さんしか行ってなかったかもしれません。

大学に進学して下宿してからは、あんまり構ってなかったかもしれません。でも、大切な時間になったんじゃないかなと、主治医ながら勝手に感じていました。

このような美談のように感じる話に無理やりするつもりはありません。

実際の現場には、文章にすることもはばかられる感情が入ることもあります。

例2

異物(おそらくボール)を誤嚥した2歳の大型犬

急な体調不良が認められたため、来院。検査にてすぐに、異物を誤嚥して小腸領域に詰まってしまっていることが発覚する。

ご家族に、「治療のために手術を」と提案したが、ご家族側から安楽死をしたいと話し始める。

確実とは言えないが、手術による異物摘出で予後は良好の可能性が高いと話をしても、

「今回治しても、どうせまた食べるだろうから、何度も手術費用は出せない。今ここで安楽死をしてくれなくてもいいが、してくれなかったとしても、家で亡くなるまで見るか、ほかの動物病院に頼むかしておしまいにしてもらう。」

ということでした。取り付く島もありませんでした。

これはまた極端な例ですが、このようなことでも安楽死を依頼する方もいらっしゃるので、ケースバイケースという言葉をより汎用させる原因となります。

安楽死を考える前に

獣医師として、アドバイスをするのであれば

1、ご家族に精神的な余裕がある状態から、動物病院に相談をし始める

2、楽しんで介護をする方法を教えてくれる動物病院を探す

3,ご家族全員でよくよく相談する

ということは重要かなと感じています。【1】については、まず選択肢として、安楽死を選んだ場合に受け付けてもらえるのかを確認しておくことは大切です。ぎりぎりになってから相談して断られてしまっては気持ちがきつくなってしまいます。

また、精神的に余裕があると、いくつかの方法を試行する時間的猶予が出ますので、気持ちにゆとりが持てるうちに相談しに行きましょう。

また、「いざとなったらそういう安楽死という選択肢もある」ということ自体が心の余裕につながり、気が付いたら最後まで看病できたという事例も非常に多いです。

【2】についてですが、他の動物病院や獣医師の診療方針はわかりませんが、時折、「もうできることはありませんので…」というように治療を断られてしまったというご家族に遭遇します。

生きていれば最後には介護などが待っていることは人間もペットも同様です。若いころに散歩に行ったのと同じように、年老いたワンちゃんを楽しく介護してあげることができれば、それも含めて楽しい思い出になるんじゃないかなと考えています。

介護は簡単ではないので、寄り添ってくれる獣医師や愛玩動物看護師を探すというのは重要かなと感じます。

【3】はもちろん最重要です。安楽死を行ってしまったら、元に戻すことはできません。ご家族全員の同意が重要となりますので、主治医としっかりと相談して判断を行いましょう。

まとめ

センシティブな内容な記事になってしまいましたが、時間経過と老いは、現状では万物に共通して発生することで、回避はできません。このような内容の記事は、異論や反論、批判も多く来るかもしれませんが、必要としている人がいるかもしれない情報でもあります。

好き好んで長年一緒に暮らしてきた家族の安楽死を気安く思い始める人はいません。

少しでも悩んでいる方の解決につながればと思います。

著者プロフィール

白井顕治(しらい けんじ)院長

獣医師、医学博士、日本動物病院協会(JAHA)内科認定医・総合臨床認定医

千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。

当院は国際ねこ医学会(isfm)よりキャットフレンドリーゴールド認定を受けている病院です。

【キャットフレンドリークリニックに関する情報はこちら】

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