佐倉しらい動物病院ブログ

【獣医師監修】獣医療における3Dプリンターの活躍の可能性を考える

3Dプリンターの種類について

3Dデータを実際に造形していく機械であり、方式によって光造形、熱溶解積層、粉末固着方式などに分類される。

当院で使用している機材は光造形方式を採用している。

なお、3Dプリンターについては専門家ではないため、詳細な機材、プリント方式による違いを記載することは行いません。

動物病院で作成される3Dデータについて

プリンターで使用するデータは、通常はCADなどのソフトで造形していくのですが、医療(獣医療)には患者さん、患畜の体を3Dにする画像診断が複数存在します。

3Dエコー、CT、MRIなどです3Dエコーは、プリンターを実施するほど造形制度が高くないと感じているため、エコーデータをプリンターによって造形する機会は現在は無いように感じます。

今後、エコーの機械の進化によって、3Dエコーの精度がより上昇したら、考えられるかもしれませんね。

当院ではCTがありますので、CTデータからの印刷を紹介します。

CTデータから3Dプリンターで印刷

CTのDICOMデータから、主に骨組織を切り出して印刷用に生成します。

その際、きれいにプリントできるように補正しますが、補正しすぎると実物からかけ離れたデータになってしまうので注意が必要です。

きれいな模型を作成するために、印刷する際に行う微調整が重要となりますが、これは慣れが必要です。

実際の生成物

当院では光造形によって樹脂(レジン)を用いて症例の体組織を形成しています。

レジンの種類によって色や質感が異なるため、現在様々なレジンを用いてプリント制度を確認しています。

勤務医達に最も受けが良かったのはクリア達の標本でした。

3Dプリンターの活用の幅

現在使用している中では、3Dプリンターで形成しやすい構造は骨の組織であるため、一番恩恵を受けるのは整形外科領域であると考えています。

特に変形している骨を術前に3Dプリンターで作成して矯正法を確認したりすることができます。また、骨折の際には、折れていない反対側の足を左右対称にプリントすることによって、修復後の足に近い樹脂モデルを作ることができます。

そのため、術前に樹脂モデルに合わせてプレートやスクリューの用意ができるので、手術時間が短縮する効果が見込めます。

インフォームドコンセントを行う際に、過去に作成したモデルを使用することによって、現在自分のペットに発生している疾患を模型を見ながら説明ができるというのも、飼い主様にとっては利点であると考えています。

人医療においても、骨の形には個人差があるため、よりパーソナライズした医療の為にも3Dプリンターの有用性が発信されています。

同一症例のないほう脱臼した膝蓋骨と正常側。脱臼した膝蓋骨だけでなく、脛骨の変形の有無や内旋程度も模型に反映されている。

歯科にも有用性を見出せる感じがするのですが歯牙組織と骨組織のCT値が近いため、分けてプリントすることが現在私はできません。

ソフトウェアの使用法を研究したいと思います。

また、教育や体の理解という点でも優れている点があります。

まず、データであり、樹脂であるものなので、生体の骨の模型と異なり生命体を利用することなく模型を作成することができます。これは実験動物における削減や代替につながる非常に重要な部分です。

フトアゴヒゲトカゲとヒョウモントカゲモドキの頭蓋骨

骨折している前肢としていない前肢を作成しての比較

ヒョウモントカゲモドキの全身模型

モルモットの頭蓋骨

さらに、データ上で骨を分割してから作成することができる点も実物よりも優れています。実際の標本を切断する際には、最小でも1mmほどはノコしろとして削り飛んでしまいますが、データで作成した場合には欠損する切断層がなく合わせれば完全体となる模型の作成が可能となります。

分断したデータで作成したモルモットの頭蓋骨

最後に希少な品種の模型を作成することが可能となります。前述のとおり、骨格標本を作製する場合には生命体が必要となってしまうことや、一つの個体からは一つしか作成できないということがあります。しかし、検査を目的としたCTを撮影した際のデータであれば、生命を脅かすことなく樹脂骨格標本を作製することができます。

特に爬虫類や鳥類では個体数自体が少ない品種もいるため、科学・獣医学の進歩に役立つことが期待されます。

最後に

大学の時の最も好きだった学問は比較解剖学や考古学でした。

特に頭蓋骨や四肢は本当に好きで、いつまで見ていても飽きません。

頭蓋骨と四肢には、「その生き物が何をしたいか」の全てが詰まっています。速く走りたい、獲物を刈りたい、捕食者から逃げたい、硬い実をすりつぶしたい、木に登りたいなどです。

例えば、同じ「かむ」ための筋肉にも「咬む(bite)」ための筋肉「噛む(chewing)」どちらを目的とした筋肉なのか、筋肉の付着部位の広さから、その生き物が重要視している動きがわかります。

博物館で生き物の骨格標本を見るときに、解説を見ないで骨格標本をじっと観察して、どんな生活をしていたのかを骨から想像し、それから解説を見るのが楽しかったです。

ほかの大学は知りませんが、私の出身の日本大学生物資源科学部には大きな博物館があったので、幸せでした。

観察することが大好きなだけでしたので、殺してまで骨を奪うことはしたくありません。でも、こういった技術を利用することによって生体を傷つけることなく模型をいくつも、いろんな大きさで、作成できる日が来るなんて夢にも思っていませんでした。

こういったもともとは関連のなかった分野が、医学・獣医学の発展に付与できるということにも科学の進歩の素晴らしさを実感します。

CTは現在動物病院でも導入されることが多い設備となっていますが、当院はその中でもエキゾチックアニマルの診療も多く行っていますので、より多種の動物に対する生体の理解に少しでも付与できればと思いこれからもこういった活動を診療と並行して杖づけていきたいと考えています。

著者プロフィール

白井顕治(しらい けんじ)副院長

獣医師、医学博士、日本動物病院協会(JAHA)内科認定医・総合臨床認定医

千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。

当院は国際ねこ医学会(isfm)よりキャットフレンドリーゴールド認定を受けている病院です。

【キャットフレンドリークリニックに関する情報はこちら】

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