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🐾 「会陰尿道造瘻術」って聞いたことがありますか?
何度もおしっこが詰まってしまう猫ちゃんに対して、
「再発を防ぐ手段」として行われる手術があります。
それが、「会陰尿道造瘻術(えいんにょうどうぞうろうじゅつ)」という手術です。
初めて聞いた方がほとんどかと思いますが、
これは簡単に言えば――
細くて詰まりやすい尿道を、太くて詰まりにくい部分に“付け替える”手術です。
何度もカテーテルで通している猫ちゃんにとって、
根本的に“詰まりにくい構造”にしてあげるための、外科的な選択肢なのです。
🧠 猫のおしっこが詰まる原因とは?
猫は、特にオス猫で「尿道閉塞(おしっこが出なくなる)」を起こしやすい動物です。
主な原因には以下のようなものがあります:
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尿道内に砂のような結晶ができる
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炎症で粘膜が腫れ、管が狭くなる
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ストレスや体質が重なって、排尿がスムーズにできなくなる
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カテーテル処置を繰り返すことで、尿道に瘢痕や癒着ができる
特にオス猫は、尿道が細くて長いため、一度詰まりやすくなると再発を繰り返す傾向があります。
🛠 会陰尿道造瘻術で「詰まりにくい構造」に作り変える
この手術では、詰まりやすい尿道の先端(ペニス部)を切除し、
その奥にある、本来より太く広がっている部分の尿道を、会陰部(肛門の下)から開放して排尿口をつくります。
その結果:
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結晶や炎症の影響を受けにくい
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尿の流れがスムーズになる
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カテーテルに頼らず、自然におしっこが出せる生活が戻る
手術後は「詰まりにくい体に作りかえた」状態となり、
QOL(生活の質)が大きく改善します。
💡 ホースのたとえでイメージすると…
細くて詰まりやすいホースを何度も掃除するのではなく、
太くて丈夫なホースに取り替えてあげる。
それが「会陰尿道造瘻術」という手術の本質です。
🐈 手術後の生活はどうなるの?
もちろん、手術後の変化はゼロではありません。
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おしっこの飛び方が変わる(飛ばなくなることがあります)
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排尿時の姿勢が少し変わる子もいます
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手術部位をなめる様子が見られることがあります(早期にはエリザベスカラーが必要)
ですが、多くの猫は数日〜数週間で新しい排尿のスタイルに慣れ、ストレスなく過ごせるようになります。
🩺 この手術、誰にでも必要?
いいえ、すべての尿道閉塞の猫ちゃんが対象ではありません。
初回の詰まりであれば、内科治療や食事療法でコントロールできることもあります。
ただし:
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何度も膀胱炎や尿路閉塞を再発を繰り返している
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1か月に何度も膀胱炎や尿路閉塞で通院している
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猫も飼い主も、おしっこが出ないという状況に疲弊している
こうした状況では、「会陰尿道造瘻術」が最も合理的で、安心できる選択となることも多いのです。
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💬 最後に:知っておくことが“安心”につながります
手術というと「こわい」と感じてしまうかもしれません。
でも、愛猫の排尿トラブルに何度も直面することの方が、よほどつらいものです。
「うちの子も、こういう手術が必要なのかな…?」
そんな時は、どうか気軽にご相談ください。
知っておくこと、考える機会を持つことが、
あなたと猫ちゃんのこれからにとって、大きな安心に変わるはずです。
著者プロフィール
白井顕治(しらい けんじ)院長
獣医師、医学博士
日本動物病院協会(JAHA)獣医内科認定医・獣医外科認定医・獣医総合臨床認定医
犬の心臓病のケアは飼い主さんの力がとても大きいです。
迷ったらいつでもご相談ください。
千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。
当院は国際ねこ医学会(isfm)よりキャットフレンドリーゴールド認定を受けている病院です。