この記事内の交通事故としては、犬や猫が走行中の普通自動車もしくは軽自動車にぶつかったもしくは轢かれたことを指して紹介します。
重度外傷について
交通事故や、自宅のベランダや屋根などの高いところから落下したような場合には、ペット本来が出せる力を大きく超えた外からの力が加わることによって体の組織を損傷します。
重症度は損傷した組織と、その程度によって異なり、結果として得られる傷病の程度も、軽傷~即死疑いまで様々です。
犬と猫の交通事故後の治療とは
治療は、まず診断することから始めますが、検査を行う前に応じて点滴や疼痛管理を実施します。これは外傷性ショックを起こしそうな場合や、すでに失血性ショックの治療もしくは予防の目的で行われます。
犬と猫の交通事故の診断
交通事故を見ると、骨折のような体幹や骨格の障害に目が行きがちですが、より重要なのは脳や心臓、肝臓や膀胱などの内臓(軟部組織)です。
レントゲン検査や超音波検査、必要に応じてCTやMRIを使用することによって軟部組織の障害の程度を判断します。
事故後に腹部に大きな紫斑が形成されている。
横隔膜が破れてしまった症例。
タイヤにひかれてしまい、皮下組織が断裂してしまった皮膚
診断後の治療
診断後に、受傷した臓器の種類や程度によって、内科療法・外科療法を実施します。
場合によっては、状態を落ち着けるために数日間内科療法を実施してから手術を行うことも珍しくありません。
交通事故後に発生した横隔膜ヘルニアの整復手術
自宅駐車場で自分のペットを轢いてしまった症例(腹壁ヘルニア)
ペットが交通事故にあったらどうするべきか
どの程度の車との接触だったのかにもよりますが、外見上は元気そうにしていても、膀胱破裂や肝臓破裂などの内臓の損傷を起こしている可能性もあります。
ご家族で判断せず、かかりつけの先生を受診して受傷時の様子をつたえて診断を受けましょう。
まとめ
交通事故は、猫であれば散歩や脱走時、犬であれば首輪がすっぽ抜けて、逃げだしたところを車にぶつかってしまうというのが最も多い主訴です。
悲しい話ですが、ペットは法律上では飼い主の所有物となるため、ペットが交通事故にあった上に、相手に車の修理代を請求されてしまうケースもありました。
病気と異なり、心がけ次第で確率が減らせる事故であるため、普段から気を付けてあげましょう。
著者プロフィール
白井顕治(しらい けんじ)院長
獣医師、医学博士、日本動物病院協会(JAHA)内科認定医・総合臨床認定医
千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。
当院は国際ねこ医学会(isfm)よりキャットフレンドリーゴールド認定を受けている病院です。