佐倉しらい動物病院ブログ

【獣医師監修】犬や猫のシャンプーや薬浴、トリミング中に起きる事故について解説

事故とは

この記事内では、落下や切り傷などの外傷や、シャンプー剤に対するアレルギーなど、事前に起きることが予想されるが、望ましくない結果が出てしまったことを事故と表現しています。

シャンプーや薬浴での事故

どのようなシャンプー剤であっても、肌に合わなかったということはあり得ます。オーガニックだから、動物病院で買ったものだから、といっても、肌に合わないことはあり得ます。

シャンプー剤が極度に合わない症例の場合、ごく稀ですが死亡例も報告されています。そのため、

「新規のシャンプーを使用する際には、一気に全身を洗うのではなく、まずは手先を洗って反応を見てみましょう」

というコメントが皮膚科専門医からも出ています。

また、適切に使用されない場合、例えば十分に洗い流していなかったり、眼球に原液を大量に入れてしまったり、シャンプー後の水をがぶ飲みさせたりするようなことに関しては、事故というよりは防げる部分を防がなかったことによるものですので、ここでは事故とは定義していません。

カットやトリミングでの事故

これは落下や切り傷が挙げられます。

ペットの性格や術者の技量によって発生するリスクがあります。切り傷(ここではハサミによる)は、切ってしまったときに痛みを出すこともあれば、特に無反応で切ってしまったことに気づかず、数日経過してから発見されるケースもあります。

術創の大きさにより、消毒のみで治癒させるか、縫合するかを決めるとよいでしょう。

特に毛玉を切っている際に、誤ってその下の皮膚を切ってしまうことが多いため、注意が必要です。

落下については、落ち方や高さによっては骨折してしまうこともありますので、リードでつないだり、壁際で落ちないように行うなど工夫しておくとよいと考えられます。

カットの出来栄えがよくない、注文と外見が違うなどは、健康上の事故ではないため、ここでは事故として取り上げません。

症例

ハサミで皮膚を切ってしまったトイプードル

メイクーンのハサミによる裂傷

ドライヤー中の事故

ドライヤーは、温風で乾かす場合と、風力によって水を弾き飛ばすような使用法をする場合があります。

温風の際は、当てすぎて過度に乾燥したりやけどを起こしてしまうことがあるので注意が必要です。

トリミングサロンでシャンプーを行うことに対する事故

時に、皮膚の状態が悪く、サロンを変えたらよくなった。また、洗ってもらう担当を変えてもらったらよくなったということが起きることがあります。

すべてを観察することはできませんが、水の温度や皮膚の触り方、洗い方の手順や薬液の使用法によって、同じシャンプー剤を使用しているにもかかわらず、皮膚の状態の良し悪しが変化することがあります。比較的よく起こります。このような場合、どこが悪いのかを探すよりも、皮膚の状態がよくなる技術を持っている愛玩動物看護師やトリマーに専属でシャンプーを依頼するとよいと考えられます。

また、自宅以外の場所でシャンプーするという点で、ほかのシャンプー剤やほかの動物の皮脂・被毛が存在することによるアレルギーや、ペットが集まる場所では細菌や寄生虫などの感染症に罹患するリスクが発生することがあります。

ただ、こういった細菌感染や寄生虫感染は、皮膚の状態が悪く、もともとその子が持っている病原体が増殖しただけということもよく発生します。そのため、状態が悪くなったからと言ってするに「よそで感染したんだ!」と判断することは早計です。

より重度な事故(骨折や死亡など)

シャンプーに関連してではなく、行為として「台から落下してしまった」「暴れる犬や猫を強く抑えすぎた」などによって、骨折や重篤な場合には死亡してしまうケースもあるようです。

骨折については、落下させたことにより前腕や、前歯、顎骨を骨折してしまった症例を診察したことがあります。

また、シャンプー後に死亡してしまうような事例では、そもそもシャンプーをしていいような体調ではなかったという可能性もあります。

非常に重篤な心疾患や呼吸器疾患を患っている場合、全身を濡らすような通常のシャンプーを強行したのちになくなってしまった症例が年末に良く発生します。

(年始はきれいになって迎えたいという考えから、「普段はシャンプーをしていないが年末だけは特別に」とシャンプーをする方が増えます。)

猫ちゃんに対するシャンプー

(※当院では猫に対するシャンプーを実施しておりません)

猫ちゃんに関して、よくネットやSNS上では猫をシャンプーに入れたり、一緒におふろに入っている写真が載っていますが、大多数の猫は体が水にぬれることを嫌います。また、濡らした後のドライヤーであったり、タオルで体をこすったりする行為も、嫌う猫が多いです。

どのような性格化によりますが、シャンプーに関連した行為を嫌う性格の猫(大多数の猫は嫌うと私は考えています)は、行為中に暴れたり、または極度に緊張をしたりして、施術後に体調不良・開口呼吸・心不全・呼吸器不全などにより体調不良を起こし、死亡してしまったのかと考えています。

猫のシャンプーを受け付けているトリミングサロンや、中には動物病院もあるようです。

しかし、ちょっと私には猫ちゃんに対して全身のシャンプーが必要かどうか。

また、シャンプーを行うリスクと、得られるメリットを比較した時に、メリットが大きいという判断や根拠がないため、私個人としては猫ちゃんに対するシャンプーをする必要がないように感じています。

専門医による皮膚疾患の講義においても、ワンちゃんについてはシャンプー療法が良く話題に出ますが、猫ちゃんのシャンプーを勧めているケースは受講したことがありません。

※例外的に、ネズミ捕りに猫ちゃんがかかってしまって、その粘りを除去する目的でのシャンプーは実施します。ねずみ取りの粘着はグルーミングでも猫自身には除去することができず、皮膚炎も重症化することがあります。明確にメリットが大きいです。この場合は当院でのシャンプーを提案しています。

ネズミ捕りにかかった子猫の洗浄

ネズミ捕りにかかったダックスフンドの洗浄

上記のような明確な除去すべきものがない場合に、シャンプーをした結果として何らかのネガティブなことが発生したとしても、それは猫ちゃんが必要としていないことを実施した結果なのだと考えています。

まとめ

体の洗浄という意味以外で、皮膚科においても治療を目的とした薬浴が発達しています。シャンプー・薬浴を行った際に、皮膚の状態がよくなってくれれば言うこと無しですが、もし望まない結果となってしまった場合には、きちんと原因を考えることが重要です。

その部分をきちんと考えることによって、よくなることへのヒントが見つけられる可能性があるからです。

当院では皮膚科スキンケア講義を修了している愛玩動物看護師がシャンプー・薬浴を実施しています。

ペットの皮膚でお悩みの方はお気軽にご相談ください。

(※完全予約制です。毎月20日に次月の予約を受け付けております。)

(※当院では、猫ちゃんに対するシャンプーは受け付けておりません。)

著者プロフィール

白井顕治(しらい けんじ)院長

獣医師、医学博士、日本動物病院協会(JAHA)内科認定医・総合臨床認定医

千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。

当院は国際ねこ医学会(isfm)よりキャットフレンドリーゴールド認定を受けている病院です。

【キャットフレンドリークリニックに関する情報はこちら】

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