佐倉しらい動物病院ブログ

【獣医師監修】犬や猫の抗生剤に対する副作用について解説

抗生剤とは

抗生剤とは、抗菌薬、細菌に対して殺菌的または静菌的に作用する薬の総称です。

「抗生剤」・「抗生物質」・「抗菌薬」・「バイ菌を殺す薬」といっても、基本的には同じものを指します。

例外的に、イソジンやアルコールのような外用薬も「バイ菌を殺す薬」という表現はされますが、抗菌薬ではありません。体の中に投与して効果を出すというより、その場所の細菌を殺すといった意味で、消毒薬や外用薬として使用されます。

抗生剤には、薬の形状によって

注射薬(皮下や筋肉内、静脈内投与)飲み薬(錠剤・カプセル・粉・シロップ)や外用薬(点眼・点耳・塗り薬)などがあります。

抗生剤を使用する目的は?

抗生剤は、細菌感染を治療する、もしくは細菌感染の発生を予防する目的で使用されます。

どのような時に使用される?

明確に細菌感染の存在が確認される場合として、細菌感染性の下痢であったり、細菌感染によって起こされる皮膚炎が確認された場合、そして細菌性の膀胱炎が確認された場合では、細菌感染を確認したのちに抗生剤を使用します。

また、手術時には、術中の感染を予防する目的で、薬剤や手術内容によって異なりますが、90分おきに静脈内に投与するといった使用法も存在します。

基本的には耐性菌を作らないように、

感染が確認されるまでは使用しないこと

感染が確認された場合には、薬剤感受性検査を行い感受性がある薬剤を使用すること

が推奨されています。

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例外的な使用方法はあるか?

上記の推奨外で使用することはあります。

感染予防目的での周術期での使用

呼吸器での感染症疑い

消化管での抗生剤反応性腸症疑い

その他

などです。

というのも、細菌感染をおこしているという確証が得られにくい部位だからです。感染を起こしているからと言って、全身麻酔下で気管支肺胞洗浄や気管支培養を初期治療としては実施しません。(難治性になれば話は別ですが、少し咳が出ているからと言って全身麻酔で検査をしないということです)

また、抗生剤反応性腸症は、抗生剤を試験的に使用して、反応するかを確認して疑いを強める疾患なので、抗生剤の使用前に、使用する正当性を高めることは難しいです。

その他というのは、細かなケースバイケースが含まれていると考えてください。

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抗生剤の副作用は何が出るの?

点眼や塗り薬などの外用剤の抗生剤を用いた場合の好ましくない副作用は耐性菌の出現が考えられます。

また、抗生剤自体や、基材や混合剤にアレルギーがある場合には薬疹として症状が現れることがあります。

内服薬や注射薬などの全身的な使用で副作用が発現した場合、その多くは消化器症状です。つまり、下痢・嘔吐・食欲不振です。元気がなくなる仔や流涎(よだれ)が多くなる仔もいます。

その他の発生率の低い副作用としては、興奮する、発熱する(熱が出る、体が熱くなる)、かゆみが出るなどの薬疹を起こす可能性があります。

抗生剤を処方するのと同時に、副作用を抑える目的で整腸剤を同時に処方することも多くあります。

抗生剤を使用した場合に腸内細菌叢の変化(ディスバイオーシス)が指摘されていますが、現状として病状と相関していないこともあり臨床的な意義は確定的ではありません。

抗生剤の副作用に対する治療は?

基本的には休薬することが一番の治療となります。副作用をおさめるためにまた薬を飲んでという「いたちごっこ」になってしまうことを避けることが目的です。

副作用の出方や種類、程度や、抗生剤を私用しようとした目的などによって対応は変わってくると思いますので、各主治医と相談していくのがよいでしょう。

副作用が出やすい抗生剤はある?

すべての薬・副作用を平均すると、およそ10%の確率で副作用が出現するといわれています。

抗生剤の種類によって、副作用を出す確率・出やすい副作用は変わってきます。

また、副作用に関しても、薬をやめるとすぐに改善するものから、緩和するための薬を追加する必要があることもあります。

使ってはいけない仔はいる?

妊娠中のワンちゃんは、使用できない抗生剤が多いですので、受診するワンちゃんが妊娠をしている・妊娠をしている疑いがある場合には、その旨を担当医に伝えましょう。

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また、犬と猫では使用してよい抗生剤、注意して使用すべき抗生剤が異なります。

発現する副作用に大きな違いはありませんが、抗生剤の内服による食道炎は猫の方が発生頻度が多いため注意が必要です。

抗生剤の副作用についての説明がなかった?

抗生剤は入院中や通院治療においても、処方される頻度の高い種類の薬です。

処方する際に、何も言わない動物病院もあれば、口頭で副作用について説明をする施設、わかりやすく副作用を書面で渡す動物病院など、様々だと思います。

薬に関しては、使用する前から副作用が出るかどうかを確実に判断する方法がないため、使用してみて、その結果体に合う合わないということが発生する可能性はあります。

しかし、現実的な話として、非常にまれな重篤な副作用の可能性まで日常の診療で話し伝えることは不可能であるため、どこかで線引きを行う必要がある事案だと考えられます。

まとめ

抗生剤は昔から存在する細菌感染に対する大切な治療手段です。なんとなくたくさん使用してしまうと、耐性菌が蔓延して、ペット本人の病気が治りにくくなるだけではなく、その耐性菌がご家族に対しても悪影響を与えてしまう可能性があるため、安易に明確な根拠や治療目標もないまま抗生剤を飲み続けることは推奨されません。

多くの動物病院では、処方時に明確に薬品名もしくは薬剤名を伝えてくれると思いますが、まれに粉や液体にして内容がわからない状態で処方するだけという病院も存在します。

薬品名や薬剤名、投与量がわからなかった場合には、問い合わせれば教えてくれると思いますので、聞いてみましょう。

著者プロフィール

白井顕治(しらい けんじ)院長

獣医師、医学博士、日本動物病院協会(JAHA)内科認定医・総合臨床認定医

千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。

当院は国際ねこ医学会(isfm)よりキャットフレンドリーゴールド認定を受けている病院です。

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