本症例は特発性膀胱炎の発生により、若齢のころよりたびたび膀胱炎・尿道炎による尿路閉塞を起こしていた。このようなことが繰り返されると、膀胱の収縮性も障害され、より問題を頻回に起こしやすくなる。膀胱炎とともに尿道炎になり、尿道炎による尿道痙攣が起こることによって排尿困難の症状が出るといわれている。今回の症例では閉塞解除を行うためのカテーテル設置の段階で尿道損傷を起こしてしまったため、尿道炎がより恒久化してしまったと考えられる。このような繰り返される特発性膀胱炎に起因する尿路閉塞に対しては、会陰尿道造瘻術が進められる。膀胱炎に対する根本的な解決とはならないものの、排尿困難の症状は腎機能障害を引き起こし命にもかかわってしまうため、排尿困難を起こさせないために重要な手術といえる。
実績詳細
雑種猫の尿道損傷に対する会陰尿道造瘻術
検査結果
症例は沈鬱状態で来院しており、腹部を触ると顕著に拡張した膀胱が触知された。
ひとまず膀胱過拡張状態を改善させるため、膀胱を経腹壁的に穿刺し、排尿した。
その後、鎮静化で尿道カテーテルの設置を行うこととしたが、その際に陰茎が全周的に腫脹していた。
(術後に判明したことであるが、尿道に2か所穴が開いていた)
問診より、直前に他院にて尿糖カテーテルの設置を試み、その際に出血するのみで膀胱内にカテーテルが入らないという説明を受けたとのことであった。
尿道を損傷した場合には、カテーテルは損傷部位に迷入してしまうことが多く、膀胱内に適正に刺入できなかった可能性が考えられた。
症例はこれまでも尿路閉塞を繰り返し発症していたということと、今回尿道を損傷していたため、合わせて解決するために会陰尿道造瘻術を実施した。
(通常、尿道損傷のみであれば、カテーテルを留置して数日間尿道を休ませることにより損傷が修復されることが期待されますが、この症例は過去に行われたカテーテル設置の瘢痕か、尿道炎の影響により、尿道の状態が正常に戻ることはなかったため手術の適応と判断)
治療方法
尿道を切り広げ、損傷している部分よりも近い部分の尿道粘膜を利用して会陰部に尿道を形成しました。
また、本症例は未去勢オスであったため、併せて去勢手術も行った。
治療・術後経過
術後翌日より自力排尿をはじめ、食事も自分で食べ、経過良好であった。
また、術部も感染を起こさずに良好に生着したため、手術14日後にエリザベスカラーを外して治療終了とした。
担当医・執刀医:白井 顕治
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