体表に形成される腫瘤の中で最も多いものは良性の脂肪腫であるが、中には脂肪腫ではない悪性のものも発生することがあります。腫瘍の外見では腫瘍の種類や良性・悪性の判断はつけることができません。きちんと検査を行ってから手術に臨まないと、取り切れていなかった場合には再手術を余儀なくされることもあります。また、術後の病理検査も同様に、再発を予防したり、予後を把握するためにもしっかりと行いましょう。
実績詳細
ウエルシュコーギーの体表に形成された血管肉腫の手術
検査結果
症例は下垂体性クッシング症候群をトリロスタン治療で維持している。当疾患初診時には元気食欲に問題はなかった。
右大腿後方に直径3センチほどの腫瘤が認められた。
腫瘤は非固着性で、腫瘤表面の被毛は脱毛し、周囲は軽度に炎症していた。
腫瘤外見(術前のもの)
診断のため、針吸引生検(FNA)を実施した
ーーーー以下細胞診所見ーーー
得られている有核細胞は少なく、やや変性していますが、比較的強い異型性を示す細胞が少数認められることから、臨床所見と併せますと血管肉腫などの悪性腫瘍病変を否定できませんので、組織学的評価をご検討下さい。
診断:体表腫瘤(悪性腫瘤の可能性あり)
治療方法
FNA検査の結果、悪性である可能性があったので術部マージンは広めに確保した。
(水平方向3センチ、深部方向1筋膜)
術前
切除ラインを決定し、表皮切開を行ったところ
腫瘤を切除したところ
深部固着はみとめられなかった
切除された腫瘤
この後病理組織検査のために使用された
縫合後
皮膚に余裕のある部位だったので、特に皮膚弁テクニックなどを使用せずに閉創した。
ーーーー以下病理検査----
摘出された腫瘤部では、真皮から皮下に結節状の腫瘤が形成されています。腫瘍は複数の血管の増殖から成り立っており、血管由来の悪性の腫瘍と診断されます。病変の境界は比較的明瞭で、マージン部には腫瘍細胞は認められません。
脾臓に発生する場合に比べ、皮膚の血管肉腫では、やや悪性度は低いものの、皮膚などへの転移が報告されています。大型の腫瘍が形成されていることから、引き続き、周囲皮膚への転移、肺などへの遠隔転移について、経過には注意が必要です。
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治療・術後経過
術創は術後感染も起こらず、良好に閉鎖した。
病理検査結果を受けて、術後に4回の追加抗がん剤投与を行って経過観察をしている。
手術から1年が経過しているが、再発は認められていない。
経過観察中
担当医:白井 顕治
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