腫瘍の治療の際には、目的をはっきりさせておくことが重要といえる。
どのような腫瘍で、どの程度の悪性度で、どの程度進行している腫瘍に対して、何を目的に治療するのかという点である。この点があいまいなまま治療を始めてしまうと、目的を果たせなかったり、腫瘍を播種させてしまいより状況を悪化させてしまう場合などもある。
本症例においては、腫瘍による転移や浸潤というより、腫瘍重量によって本人が歩行困難となってしまったため、その点を改善する目的での緩和目的の手術となっている。
そのため、術後は再発の危険性を考え、定期検診を慎重に行っていく必要がある。
実績詳細
グレートピレニーズの軟部組織肉腫(低悪性度:繊維肉腫)
種類 | グレートピレニーズ |
---|---|
年齢 | 9歳 |
診療科目 | 軟部外科・整形外科 腫瘍科 |
症状 | 腫瘍が大きくて歩行が困難になってきた |
症状の概要
検査結果
症例は左わき腹に大型の腫瘤があり、エコーで確認したところ腫瘍内部は液体貯留や壊死しているであろう組織が混在していた。
歩行はできているが、腫瘍が拡大してきたため、今後のことを考えて切除を希望とのことで来院された。
他院において液体抜去や細胞診が行われていたが、特に診断にはつながっていないということだった。
腫瘍の大きさから、悪性腫瘍であっても辺縁部切除以外に選択肢が取れないため、CT検査を行い周囲血管及び底部の状況及び腹壁を確認した。
変位しているものの、腹壁が確認されたため、辺縁部切除を目的として手術を行うこととした。
悪性であっても、完全切除を行うことはできない大きさであるため、また、良性腫瘍であっても手術をしないという選択肢はないため、ご家族と相談した結果、事前の組織生検は実施しなかった。
治療方法
非常に大型の腫瘍であり、腫瘍だけで15kgあった。
治療・術後経過
病理組織検査へも、腫瘍全体を送ることができなかったため、一部を切り取って送ることとした。
このことについても、辺縁部切除であることはわかっているため、腫瘍の診断の目的で病理組織検査を実施した。
ーーー以下病理組織検査所見ーーー
切除された左体側の腫瘤は、非上皮性の腫瘍細胞の増殖から成り立っており、軟部組織肉腫(線維肉腫)と診断されます。分裂像は少数で、低悪性度の腫瘍と判断されます。
一部のみの検索であり、正確なマージンの評価は困難ですが、最小限のマージンでの切除となっていると推察されます。非常に大型の腫瘤が形成されており、局所再発率の高い腫瘍であることから、引き続き、経過観察をお勧めします。
ーーーーーー
術部は無事治癒し、歩様や活動性も改善されている。
腫瘍の再発について、現在経過観察中である。
担当医:白井 顕治
お気軽に
ご相談ください
志津しらい動物病院043-462-1122 受付時間 9:00~11:30 15:00〜18:30
佐倉しらい動物病院043-483-1212 受付時間 9:00~11:30 14:00~17:30