実績詳細

トイプードルの肥満細胞腫(グレードⅡ)

種類 トイプードル
年齢 9歳
診療科目 軟部外科・整形外科 腫瘍科 
症状 右足の外側にしこりがある

症状の概要

犬の皮膚肥満細胞腫に対する治療としては、第一に外科療法が選択される。手術を行うに当たり、事前に転移や遺伝子変異の有無を調べることは術式や術後の補助療法を決定するうえで重要の情報である。
犬の体表に掲載されやすい悪性腫瘍であるため、比較的発生は多い腫瘍と言える。外見は様々で、軟性の脂肪腫のようなしこりの様なものから、ひらたく広がっているようなものもあり、外見からの診断は行うことができない。体表にできるあらゆる腫瘤性病変の鑑別疾患として皮膚肥満細胞腫があげられるのはこのためである。

診断は比較的容易で、FNAを実施すればほぼ確実に診断することができる。手術においては十分にマージンを確保して取りきることが重要なので、術前に肥満細胞腫であることを知っておくことが手術成績に大きく影響することが分かっている。
術後の補助療法としては、遺伝子変異がある場合にはパラディアなどの分子標的薬を使用する。また、変異陰性の場合にはプレドニゾロンとビンクリスチンなど薬剤を併用して治療していくことが多いが、補助療法については様々なものが報告されているため、病院ごとにご家族と相談のうえ、決定している場合が多い。

検査結果

右臀部~大腿外側に2つの腫瘤が触知されたため、FNA(針吸引生検、細胞診)を実施した。

 

ーーー以下細胞診所見ーーー

いずれの腫瘤からも、肥満細胞が集塊状に多数得られており、肥満細胞腫と考えられます。顆粒が豊富で異型性に乏しい腫瘍細胞ですが、肥満細胞腫は転移する可能性がある腫瘍です。

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なお、肥満細胞腫であることから、追加遺伝子検査としてc-kit遺伝子変異の検出を行ったが、変異は認められなかった。

 

皮膚肥満細胞腫に対しては通常外科療法が第一選択として挙げられるので、ご家族と相談した結果、外科的に摘出することとした。

 

治療方法

水平方向に3センチマージンを確保して2か所の腫瘍の摘出を行った。

 

摘出後の再建として、大腿前方の雛璧を利用した皮膚弁を利用して、術創を閉じた。

治療・術後経過

術創は感染や癒合不全、皮弁先端の壊死も起きずに良好に生着した。

ーーー以下病理所見ーーー

摘出された1、2の皮膚腫瘤は肥満細胞腫であり、グレード2(2段階分類では、低悪性度)と診断されます。個々の細胞の分化は高く、腫瘍の境界は明瞭です。
明らかな脈管浸潤やマージン部に腫瘍細胞は認められず、底部には筋層が含まれています。局所の摘出状態は良好ですが、念のため、所属リンパ節の状態や、新しい病変の形成について、経過観察をお勧めします。

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摘出状態良好で、低悪性度、脈管内浸潤が陰性だったため、現在抗がん剤治療を行わずに経過観察を続けている。

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