胆嚢粘液嚢腫は小型~中型犬に比較体よく認められる疾患である。発生には遺伝的素因や、内分泌疾患とのかかわりが示されているものの、根本的な発生原因は解明されていない。
また、胆嚢粘液嚢腫が認められてから、進行する速度も症例によってバリエーションが異なる。急速に増大してしまう症例もあれば、5-7年以上ほぼ維持病変を示す症例もいる。
発見した場合にはその点を留意しながら手術に踏み切るタイミングをご家族と相談する必要がある。
多くの胆嚢粘液嚢腫の症例で、症状は胆嚢壁の炎症・壊死によって起こされる。エコーやCTでは破裂を起こしているかどうかまでの確定的な所見が得られないこともあるため、最終的には開腹下で確認することが必要となる。
ごく早期であれば腹腔鏡を用いて胆嚢を摘出する施設もあるようだが、腹腔鏡では胆道系の疎通確認を行うことができないため、胆嚢壊死が認められたり、総胆管の閉塞・拡張が認められるような症例に対しては開腹手術が選択される可能性が高い。(当院においては腹腔鏡手術は実施しておりません)
実績詳細
トイプードルの胆嚢粘液嚢腫
種類 | トイプードル |
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年齢 | 7歳 |
診療科目 | 消化器科 |
症状 | 元気食欲がない |
症状の概要
検査結果
症例はもともと肝管内に胆石が認められており、経過観察を行っていた。
胆嚢粘液嚢腫が急激に拡大し、消化器症状及び黄疸を呈していた。
肝管内結石について、大学病院も受診し意見をいただき、胆嚢摘出及び胆道系の疎通確認のみを実施することとした。
治療方法
胆道系の閉塞を起こしている肝葉のみ、肉眼的にも色調が異なる。
胆嚢粘液嚢腫となって壊死した胆嚢を摘出し、胆道系の疎通を確認した。
また、肉眼的に変化が認められた肝葉と、正常な肝臓の一部を生検した。
治療・術後経過
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以下病理検査所見
胆嚢では、胆嚢壁の広範囲の壊死が認められます。胆嚢内には粘液の貯留が起こっており、胆嚢粘液嚢腫から壊死に陥ったと考えられます。周囲には顕著な肉芽組織の増生が起こっており、不完全な破裂が起こっていた可能性が示唆されます。
内側右葉では、肝内胆管の拡張や増生が起こっており、慢性的な胆汁のうっ滞により引き起こされた変化と考えられます。肝細胞の減少が認められ、胆嚢に近接している部位あるいは循環障害などが加わっていた可能性があります。内側左葉の状態は保たれており、内側右葉に限局した病変と推察されますが、引き続き、肝酵素の上昇について経過観察をお勧めします。
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症例は術後より消化器症状は改善し、良好に治癒した。
残っている肝管内の結石については、引き続き経過観察を行うこととしている。
現在経過良好
担当医:白井 顕治
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