子宮蓄膿症は、子宮に何らかの原因で感染が生じ、蓄膿してしまう状態を指しますが、子宮頸管の状態によって開放型と閉鎖型に分けることができます。開放型は今回の症例のように、ある程度蓄膿すると外陰部を通じて膿が体外に流出します。それにより、体内に過度な蓄膿はせず、また、陰部の膿汁によりより早期に発見されます。それに対して閉鎖型は発見も遅れ、体内に蓄膿が重度に生じることが多く、より重症化する傾向があります。
また、乳腺腫瘍についても、避妊手術を実施していない中高齢のメス犬に好発しやすい体表腫瘍です。乳腺腫瘍は大きく分けて良性と悪性に分けられますが、良性の乳腺腫瘍であっても腫瘍を放置していると悪性転化することが知られているため、良性であっても悪性であっても手術の適応となります。手術については大きさや個数に応じて切除領域を計画することにより、今後乳腺腫瘍が再発・発生する確率を減らすことが治療にあたっては最も重要な点となります。
乳腺にしこりができてしまった場合には、ご相談ください。
実績詳細
ポメラニアンの子宮蓄膿症と乳腺腫瘍
種類 | ポメラニアン |
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年齢 | 11 |
診療科目 | 軟部外科・整形外科 腫瘍科 |
症状 | 陰部から赤いものが出ている |
症状の概要
検査結果
症例は元気食欲ともにあったが、陰部から血様の液体がみられた。
避妊手術を行っていない高齢のメスであることを踏まえ、子宮疾患に罹患している可能性が高いと考えてレントゲン検査及び腹部超音波検査を実施したところ、膿汁とみられる液体で充満した子宮が確認されたため、子宮蓄膿症と診断した。
また、腹部の触診を行うと、左第3・4乳腺部に平坦な腫瘤が形成されていることが分かった。
治療方法
子宮蓄膿症及び乳腺部腫瘤が認められたため、外科的に卵巣子宮の摘出および乳腺の区域切除を行うこととした。
まず、開腹を行い卵巣子宮の摘出を行う。
摘出された子宮
膿汁の貯留により重度に拡張している。
子宮摘出を終え、腹筋を縫合したところ
左後方乳腺の区域切除を行っている。 鼠径より流入する血管の処理を行うことにより、出血の少ない手術を実施する
縫合後
治療・術後経過
症例は高齢であったが、術後よりご飯を食べ、良好に回復していった。
ーーー以下卵巣・子宮・乳腺の病理診断ーーー
乳腺では、左3、4乳腺部に結節性の腫瘍が形成されており、いずれも良性の乳腺腫瘍と診断されます。腫瘍の境界は明瞭で、周囲組織への浸潤性は認められません。摘出状態は良好で、今回の切除により予後は良好と考えられますが、多発傾向を示していること、周囲の乳腺が過形成を呈していることから、新しい腫瘍の形成について経過観察をお勧めします。
子宮では、内膜過形成を伴った慢性的な化膿性炎症が認められます。子宮内膜の過形成に二次的な細菌感染が起こったために蓄膿に至った病変と考えられます。
卵巣では、明らかな病変は認められません。
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経過良好
担当医:白井 顕治
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