本症例は以前より2つのタンパク漏出性の疾患を患っており、慢性的に免疫抑制剤やステロイド剤の内服を行っていた。
リンパ腫は血液中に存在するリンパ球が腫瘍化することにより発生する悪性腫瘍である。リンパ球には大きく分けてT細胞とB細胞があるため、腫瘍になった際にもT細胞型リンパ腫、B細胞型リンパ腫というような分類になり、それぞれ予後も異なる。また、リンパ腫に関しては、血液の腫瘍ではあるが発生する部位によって多中心型・皮膚型・消化管型・腎臓型・眼型などに分けられ、こちらについても予後が異なる。中には犬種によっても予後が異なるものも存在するため、一言にリンパ腫といっても、かなり良性よりのものもあれば、本症例のように悪性度の高いものも存在する。
実績詳細
ヨークシャーテリアの消化管型リンパ腫(大顆粒性リンパ腫:LGL)
種類 | ヨークシャーテリア |
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年齢 | 9歳 |
診療科目 | 軟部外科・整形外科 消化器科 腫瘍科 |
症状 | 食欲がない |
症状の概要
検査結果
既往歴として、症例はタンパク漏出性腸症(IBD)とタンパク漏出性腎症を3年ほど前から患っており、定期的に検診を実施していた。
エコー所見より、小腸粘膜にびまん性に腫瘤が形成され、腹膜炎と腹水貯留を認め、腹水の検査所見から消化管穿孔が示唆された。
治療方法
通常リンパ腫は血液中のリンパ球が由来の悪性腫瘍であるため手術は適応外であるが、本症例では消化管穿孔が起こっているということと、組織学的診断を行うために開腹し穿孔を起こしている領域の切除を実施した。
開腹したところ、複数の腫瘤に穿孔を認めたため、それらを含む領域の小腸切除を行い、消化管断端吻合を実施し閉腹とした。
治療・術後経過
ーーー以下病理検査所見ーーー
検索した小腸では、複数の部位に腫瘤が形成されており、いずれもリンパ腫と判断されます。腫瘍細胞は大型で、免疫染色で一部の腫瘍細胞にグランザイムBに陽性を示す顆粒が確認されることから、大顆粒性リンパ腫(LGL lymphoma)と考えられます。悪性度の高い腫瘍であり、広範囲に病変が形成されていることから、更なる病変の拡大や全身状態について注意が必要です。
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術後一過性に食欲が改善したが、その後状態が不安定となった。病理診断をもとに抗がん剤治療を実施したが、予後は不良だった。
担当医:白井 顕治
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