鼠経ヘルニアは、下腹部の股の付け根に存在する鼠経部から、腹腔内臓器が脱出することにより起こる。軽度のヘルニアであり、わずかに腹腔内脂肪が脱出している程度であれば経過観察をしていても問題はないことがほとんどである。しかし、高齢になってから腹筋量の減少や腹腔内脂肪の増加、その他、よく吠えることによる腹圧上昇や腹水貯留、腹腔内腫瘍、そして今回のような子宮蓄膿症など、腹腔内蔵機が大きくなることによって腹圧が上昇して、鼠経ヘルニアが顕在化することも多い。
原疾患の治療のために手術が必要な場合には、今回のように合わせてヘルニア孔の閉鎖を行うことが望ましいが、その際は左右同時にヘルニア孔の調整を行う必要がある。
実績詳細
ヨークシャーテリアの鼠経ヘルニアと子宮蓄膿症
種類 | ヨークシャーテリア |
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年齢 | 12歳 |
診療科目 | 軟部外科・整形外科 |
症状 | 鼠経ヘルニアが悪化した |
症状の概要
検査結果
症例は生後より軽度の鼠経ヘルニアを持っていたが、経過を観察していた。
1か月前より急速に大きくなったという主訴で来院。腫れてきている以外に、元気食欲もやや低下しているとのことだった。
ヘルニア内容を精査するためにエコー検査を実施したところ、蓄膿している子宮が認められた。
診断
子宮蓄膿による腹圧上昇のため、鼠経ヘルニアが悪化した。ヘルニア内容物は蓄膿した子宮であった。
子宮蓄膿症及び子宮の牽引性疼痛のため元気食欲が低下していると考えられた。
治療方法
子宮蓄膿症及び鼠経ヘルニアはいずれも手術による摘出、ヘルニア孔の閉鎖が第一選択の治療方法となる。
点滴・内科治療により容体を安定化させたのちに手術を実施した。
術前の様子。右鼠経が顕著に拡張している。
開腹し、脱出している子宮を確認、腹腔内から子宮をけん引している。
拡張した子宮及び卵巣。
右は摘出後
ヘルニア嚢の切除とヘルニア孔の縫縮を左右のヘルニア孔に実施した。
治療・術後経過
術創は良好に生着し、治療終了とした。
担当医:執刀医:白井 顕治
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