実績詳細

柴犬の膝蓋骨内包脱臼に対する整復手術

種類 柴犬
年齢 1歳9か月
診療科目 軟部外科・整形外科 
症状 ソファーから飛び降りた後より左後肢をあげるという主訴で来院

症状の概要


膝蓋骨脱臼(ラテン語でパテラ)とは
膝蓋骨が外側もしくは内側に脱臼やゆるみがある状態のことを指し、膝の屈曲・伸展のたびに膝蓋骨が脱臼します。
原因としては先天的な脱臼、滑車溝が浅い、膝蓋靭帯の付着部の脛骨稜の位置や大腿四頭筋の異常、交通事故などによる外傷性が考えられます。
すべての犬に膝蓋骨内方脱臼は生じるが、ポメラニアンやチワワなどの小型犬やトイプードルなどのトイ種に特に発生が多い。

脱臼が繰り返されると、大腿骨滑車部の縁と膝蓋骨があたり軟骨がすり減るので、痛みと関節炎が生じます。また内方脱臼では骨の変形が生じ、重度では運動障害が生じます。

内方脱臼の症状としては以下のことが認められたりします。
スキップするように走る。
びっこや挙上をするがすぐに元通りに走れる。
脱臼時には負重ができない
動き始めに「のび」をすることが多い など

治療法において手術を選択するかは、びっこなどの機能障害、痛みや違和感の有無、骨変形がさらに進んでいくかどうかで判断いたします。
手術を行う場合、内側広筋のリリース、大腿骨滑車の増溝、脛骨粗面転植、関節包の包縫を組み合わせることで再脱臼率が減少することが報告されていますがグレードが低い場合には一部のみ行うこともあります。

検査結果

【所見・診断】
症例は膝蓋骨内方脱臼の左右ともにグレード2。
膝蓋骨の内方脱臼時に負重がかけられない状態を認める。
【検査・治療】
触診およびレントゲン検査にて診断。

 

痛み止めなどの内科療法に反応しないことから、ご家族と相談した結果、手術による整復を実施することになった。

治療方法

外科手術を実施(内側広筋のリリース、大腿骨滑車の増溝、脛骨粗面転植、関節包の包縫)
脛骨粗面の転植に使用したピンは本人の活動性も考慮し3本使用。

 

 

膝蓋骨が内方脱臼を繰り返していたために大腿骨滑車の糜爛を認めた。

 

 

術前の患肢レントゲン

 

術後レントゲン

 

治療・術後経過

初診時より10日ほどNSAIDsの内服にてやや改善があるものの奏功しないため外科手術を実施。
術後1週間ほど包帯を巻き、2週間目で抜糸、その後定期的にレントゲン撮影を行っている。
手術翌日より跛行もなく良好な経過をたどっている。

 

担当医・執刀医:清水 健

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