甲状腺機能亢進症は中高齢以降のネコに多発する内分泌(ホルモン)性疾患で、甲状腺組織が良性または悪性に腫瘍化することによって発症したり、場合によっては正常な甲状腺組織が大きくなるだけ(過形成)で発症することもあります。甲状腺は通常は喉の付近に左右にありますが、異所性甲状腺が胸腔内にある事もあるため、必ずしも首を触っても腫れた甲状腺が見つかるわけではありません。甲状腺機能亢進症の診断は比較的容易に行うことができますが、この疾患は約2年ほどかけてゆっくりと進行していくことが多く、病期によっては診断することが難しく、通常測る甲状腺ホルモン(TT4)以外にfT4、TSHなどを同時に計測したり、日内変動によりホルモン値に変化を起こすこともあるため、複数回計測を行うなどして診断をすることもあります。
実績詳細
猫の甲状腺機能亢進症と高血圧症の内科療法
種類 | 雑種猫 |
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年齢 | 12 |
診療科目 | 内科 |
症状 | 歩いているときにふらついてる。毛並みが悪い |
症状の概要
検査結果
症例は意識もはっきりしていて、診察室内では行動に異常は認められず、ふらつきもなかった。
被毛がややそごうで体格は軽度に削痩していた。
猫であること、高齢であること、そして外見より、甲状腺機能亢進症の疑いがあったため、血液検査を行った結果、甲状腺ホルモン(T4)の高値が認められたため、甲状腺機能亢進症と診断した。
また、初診日および1週間後の診察時ともに血圧を測定し、最高血圧が両日ともに220mmHgを超えていたため、ふらつきの原因は甲状腺機能亢進症に続発した高血圧症によるものと診断した。
眼底検査の結果、軽度の網膜出血が認められたが、診断時は視力に異常は認められなかった。
治療方法
甲状腺機能亢進症に対して抗甲状腺薬であるメチマゾールによる内科療法を選択した。
また、高血圧症に対しては降圧薬を使用した。
治療・術後経過
治療開始後2か月後の測定では、甲状腺ホルモンの数値は正常値範囲内下限におさまり、体重も5%上昇した。
また、ふらつきも改善され、診察室内で計測する血圧も160mmHg程度まで下がった。
定期検診の血液検査において、甲状腺機能亢進症治療後に現れることのある腎疾患は認められなかった。
今後も数カ月に一度の検診を続け、内科療法で維持をしていく。
経過良好
担当医:白井 顕治
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