肛門周囲に形成される腫瘍としては、肛門周囲腺腫や肛門周囲腺癌などがあげられる(もちろん、その他の皮膚に形成される肥満細胞腫や軟部組織肉腫、脂肪種なども形成される可能性はあります。)。肛門周囲腺腫は雄性ホルモンに誘発されて形成されることが多く、良性である。それに対して肛門周囲腺癌はホルモンと関係なく形成される傾向にあるため、去勢手術の実施や、雌であることは関係なく発生する可能性がある。
また、悪性の肛門周囲腺癌の場合には、転移しやすい腫瘍に分類されるため、局所の腫瘍は小さいにもかかわらず、肺に進行した転移が認められることもある。
良性に分類される腫瘍であっても、このように大型化して機能的に生活に支障をきたす場合もあるため、腫瘍を確認した場合には早期に細胞診や組織診断による検査を行い、適切な治療を施すことが重要といえます。
実績詳細
雑種犬の肛門周囲腺上皮腫
種類 | 雑種犬 |
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年齢 | 11才 |
診療科目 | 軟部外科・整形外科 腫瘍科 |
症状 | お尻に腫瘍がある。手術してほしい |
症状の概要
検査結果
症例は9か月ほど前より右臀部に腫瘤があり、他院にて悪性であるといわれたため、経過観察を続けてきた。
この度、大きくなりすぎてたびたび腫瘤から出血するという事と、排便に支障が出てきたため手術ができるかどうかを含めて当院を受診。
細胞診を行った結果、悪性度の高くない細胞が多数得られているという事だったため、相談の結果手術を行う事とした。
ーー細胞診所見ー
上皮細胞が多数得られており、細胞形態から肛門周囲腺由来の病変と考えられます。悪性度の正確な評価には、周囲組織やリンパ管への浸潤性を組織学的に確認する必要がありますが、細胞異型性は乏しく、良性の肛門周囲腺や過形成が疑われます。
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治療方法
伏臥位に保定し、腫瘤の摘出を実施した。
欠損を埋めるため、前進皮弁術を使用するため、皮膚切開を加え、縫合を行った。
手術終了
治療・術後経過
肛門部周囲の手術のため、術後は排便のたびに術創洗浄を行い清潔に保つよう気を付けて管理を行った。
手術2日後
ーーー以下病理所見ーー
摘出された肛門右側の腫瘤は、肛門周囲腺由来の腫瘍と診断されます。組織学的には、低悪性度に分類されますが、肛門周囲腺腫と同様、外科的な切除により予後は良好である場合がほとんどです。腫瘍の境界は明瞭で、マージン部や脈管内に腫瘍性の病変は認められません。摘出状態は良好で、今回の摘出により予後は良好である可能性が高いと考えられますが、大型の腫瘤が形成されていたことから、念のため、所属リンパ節の状態について経過観察をお勧めします。
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摘出状態は良好であったという事と、低悪性度の腫瘤であったという事から、予後は良好と考えられる。
術後3週間
担当医・執刀医:白井 顕治
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