絞扼処置は、有茎状の腫瘍に対して、ネモトで縛って腫瘍へ向かう血管や皮膚を壊死させ、麻酔手術を行うことなく腫瘤を除去する手法である。
他の文章中にも記載したが、通常は診断されていない腫瘍に対して行うべき手法ではないが、一定の条件がそろう場合にはご家族と相談した結果実施することがある。また、本症例のように腫瘍を気にしてかいてしまい、頻繁に出血しているという症状を呈している場合には、良性・悪性にかかわらず、とりあえず腫瘍を取ってほしい。ただし、麻酔を行うほどの体力的・費用的な余裕がないという場合には考えてもよい選択肢の一つではある。
実績詳細
雑種犬の頭部に形成された有茎状の腫瘍に対する絞扼除去
種類 | 雑種犬 |
---|---|
年齢 | 15歳 |
診療科目 | 腫瘍科 |
症状 | 頭部に腫瘍ができている |
症状の概要
検査結果
視診と触診の結果、症例は頭部に有茎状の直径3センチほどの腫瘤が形成されていた。
また、症例は腫瘤を気にしてかくことにより、頻繁に腫瘤から出血していた。
治療方法
通常であれば、針吸引生検にて細胞を採取し、腫瘍について調べるところである。しかし、症例は高齢であるため、検査結果いかんにかかわらず手術を行う可能性は低いというご家族の意見があったということ、本人が腫瘤を気にしてたびたび出血を起こしているという事、形成された腫瘤が有茎状であることから、絞扼処置についてインフォームし、行うこととなった。
絞扼処置に関しては、腫瘍をけん引し、できるだけ根元で縛り、縛ったことによって組織のネクローシスを促進させ腫瘤を除去する手法である。
(通常は良性か悪性かわからない腫瘍に行うことは医学的に勧められる手法ではありません。)
絞扼後、包帯を巻き腫瘤を保護します。
治療・術後経過
絞扼後、14日後には腫瘤が落ちました。
落ちた腫瘤と、患部
絞扼処置から3か月後の患部
腫瘤に関しては良好に除去することができたが、その後、近傍の筋層に腫瘤が形成された。
今回の腫瘤との因果関係は腫瘤に対する診断を行っていないため不明である。
新しく形成された腫瘤は筋層に形成されていたため、絞扼処置の適応外であるということと、ご家族が精査を希望されなかったため経過観察とした。
担当医:白井 顕治
お気軽に
ご相談ください
志津しらい動物病院043-462-1122 受付時間 9:00~11:30 15:00〜18:30
佐倉しらい動物病院043-483-1212 受付時間 9:00~11:30 14:00~17:30