滑膜嚢胞もしくはガングリオンは犬や猫での発生は人と比べると稀である。滑膜嚢胞は滑膜周囲に形成され、その圧迫などによって周囲の神経や靭帯を圧迫することにより圧痛などの症状を呈することが多いが、跛行を出すこともある。
多くの場合、嚢胞周囲には神経も存在すること、完全に嚢胞を切除しきれない場合には再発率も高い事、関節包と連絡している場合には術後も違和感や跛行が残る場合がある事などから、もし手術を行うのであれば、経験のある獣医師による手術が必要となる手術である。
ネコにおいてはひじに起きることが多く、関節包が破れて関節液が漏れているのではないかと推測されている。
通常、ステロイドや抗生剤、非ステロイド性解熱鎮痛剤(メタカムなどのNSAIDs)の使用では効果が認められない。
実績詳細
雑種猫の滑膜嚢胞(ガングリオン)
種類 | 雑種猫 |
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年齢 | 13歳 |
診療科目 | 軟部外科・整形外科 |
症状 | 右肘の付近がとても腫れている |
症状の概要
検査結果
症例は高齢の猫であり、触診では右ひじ付近に複数の腫瘤が認められた。
ひじ周囲が腫れていたが、特に触診による疼痛は認められなかった。
関節可動域はやや低下していた。
腫瘤の存在のせいか、関節可動域は減少し、歩行異常も観察された。
レントゲン検査では、肘部に関節炎は認められるものの、その程度は左肘と差は認められなかった。
顕著な骨融解像は認められなかった。
また、エコー検査では腫瘤内に流動性のある液体が認められたため、針吸引を行ったところ、複数の腫瘤から同一の非常に粘性の強い液体が抜去された
ーーー液体の細胞診所見ーーー
得られている細胞は異型性に乏しく、マクロファージや滑膜細胞などと考えられ、臨床所見や腫瘤の位置から滑膜嚢胞 (関節腔と連続している) やガングリオン(関節腔とは連続していない)などの非腫瘍性嚢胞性病変が疑われます。
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以上の結果より、腫瘤は滑膜嚢胞もしくはガングリオンと診断した。
治療方法
ご家族と相談した結果、手術による外科的な摘出を希望されなかったため、滑膜嚢胞かガングリオンかという診断は行わずに、今後溜まり次第、液体を抜去することとした。
治療・術後経過
定期的に抜去を行って経過を観察している
担当医:白井 顕治
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