「元気がない・食欲が低下している」という主訴は様々な疾患が予想されます。この症例では、排便がうまく行えないため、食欲が低下してしまっていた。
また、ネコは便秘になりやすい動物であるが、便秘の原因が本症例のように消化管の異常によって発生することもあるため、通常の治療によって改善しない場合には精査を行うことが重要である。本症例は何らかの原因によって発生した結腸狭搾によって生じた腸重積・便秘(排便不全)である。
実績詳細
雑種猫の結腸狭搾による排便不全・腸重積
種類 | 雑種猫 |
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年齢 | 10歳 |
診療科目 | 軟部外科・整形外科 消化器科 |
症状 | 元気と食欲がない。4か月前から他院で治療しているが改善しない |
症状の概要
検査結果
症例は体格が削痩している割に腹部が膨満していた。
外観からも、腹腔内が不自然に膨らんでいることがわかる。
鑑別のためにレントゲン撮影を行うと、重度の宿便があった。
宿便があるため、便秘かと考えたが、不自然な位置で便が停滞しているため、エコー検査を実施したところ、下降結腸の一部が狭搾し、タイミングによっては腸重積が生じていた。
診断として、結腸に何らかの狭搾性病変があり、排便障害や腸重積が起こっていると診断された。
直腸造影を実施したところ、問題の狭搾部分でバリウムが停止していることがわかる。バリウムのような流動性の高い液体でも容易に通過できないほどの強い狭搾性病変があることが示唆された。
治療方法
手術により狭搾部位の摘出を実施することとした。
狭搾部位の確認
切除し、結腸の断端を縫合した。
縫合チェック後に、閉腹して手術終了とした。
摘出された結腸は、切開後に病理検査へ提出した。
ーーー以下病理検査所見ーーー
検索した結腸の組織では、複数の部位において潰瘍が形成され、深部筋層に肉芽組織の増生が加わっており、内腔は顕著に狭窄しています。潰瘍周囲の腸粘膜の状態は保たれており、球や異物などによる粘膜の障害である可能性が第1に考慮されます。
炎症は筋層にも広がっていますが、マージン部への炎症の波及や穿孔性の病変は認められません。検索した組織には腫瘍性の病変は認められません。
治療・術後経過
狭搾性病変を除去したため、病状としては予後良好と考えられた。
担当医・執刀医:白井 顕治
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