佐倉しらい動物病院ブログ

【獣医師監修】ペットの内視鏡検査とは?費用や検査方法について解説

ペットの内視鏡検査とは

内視鏡検査とは、体を開かずに、細い管状のカメラを挿入することによって中を観察する検査のことで、通常多くの場合で「内視鏡検査」は消化器内視鏡検査を指しますが、鼻腔内視鏡、気管支内視鏡、腹腔鏡、胸腔鏡、関節鏡、膀胱鏡を含んで内視鏡ということもあります。ヒトの医療では「胃カメラ」と表記されていることもあるようですが、獣医療域ではあまりこう表現する先生に出会ったことはありません。もしかしたら、人と比較して胃粘膜の疾患が少ないからかもしれません。

ペットの消化器内視鏡

消化器内視鏡は、口からカメラを入れる「上部消化器内視鏡」、お尻からカメラを入れる「下部内視鏡」と呼びます。異物を誤嚥してしまって摘出する場合は、上部消化器内視鏡のみです。何かしらの消化器の疾患で、内視鏡を用いて消化管粘膜生検を実施する場合には通常「上部・下部」両方実施することが多いです。ただし、疑っている疾患や、レントゲンやエコー検査で明らかに【上部】、【下部】がわかっているときには、どちらかしか行わないこともあります。

内視鏡ってどれくらいの太さ?

当院で使用している内視鏡はOLYMPUS 動物用内視鏡システム OLYMPUS VES3 Helen VO-3Bで、直径は細いほうが5.5mm、太いほうが8.8mmあります。

およそですが、ミニチュアダックスよりも大きなわんちゃんであれば太いほうを、チワワやトイプードル、猫は細いほうを選択しますが、用途によります。

この先端に、カメラ、カメラについた汚れをとる水を出す場所、鉗子を出し入れする穴が存在します。

よくできていますね、すごいです。

余談ですが、亀やトカゲには細いほうの内視鏡を使用することが多いです。

目的による消化器内視鏡の違い

消化器内視鏡を入れよう!という場合には前述のとおり、

①異物を飲み込んでしまった、摘出しなくてはならない

②消化管の粘膜疾患が疑われている

の2択です。

消化器疾患を疑っていても、例えば膵炎や消化管間質腫瘍(GIST)が疑われる場合には、内視鏡を行うまでもなくほかの検査において診断を下せるはずです。消化管の粘膜疾患としては、炎症の結果たんぱく質が漏出してしまうタンパク漏出性腸症の原因となる、炎症性腸疾患やリンパ管拡張症、消化管型リンパ腫などがあげられます。また、下部消化器疾患としては、直腸腺癌や炎症性ポリープなどがあげられます。

話をまとめると、消化器内視鏡は、一部の消化器疾患や消化管由来腫瘍の診断のためには有用ですが、どの病気に対しても有効な検査ではありませんということです。

【症例】

異物摘出

【動画】フレンチブルドッグの誤嚥した靴下の内視鏡下摘出

疾患の診断

ミニチュアダックスフントの炎症性ポリープ

https://youtube.com/shorts/AbVJZhMRwOY?feature=share

内視鏡で摘出できる異物とは?

ペットが食べ物以外のものを飲み込んでしまった時に、内視鏡を行うかどうか考えることが始まります。

ペットが消化できないモノを飲み込んでしまった時、その結末は以下の4パターンのみです。

  1. 口から吐き出す
  2. 自然に便と一緒に排泄する
  3. 口から内視鏡で摘出する
  4. 開腹して摘出する

1の【口から吐き出す】

これは、自然に嘔吐して吐くこともあれば、薬剤によって吐かせる催吐処置を行うことのあります。この場合は異物外の中に入っていること、そしてその異物を追うとしても、食道や咽頭を傷つけないようなものの場合に適応となります。最近では使い捨てマスクの使用率が高いですので、マスクを食べてしまったり、お菓子の袋を食べてしまったりすると催吐処置の適応となります。

【症例】

使い捨てマスクを食べてしまった雑種犬の催吐処置

2の【自然に便と一緒に排泄する】

これは、無治療で経過観察を行うか、流動パラフィンのような緩下剤を使用することのあると思います。病院によって判断が異なると思います。これは、食べたことすら気づいていなかったパターンや、食べた可能性のある異物がとても小さかったり、自然に出る可能性が高いと判断される場合には経過を観察することのあります。飴玉の袋を食べてしまったり、ごく短い毛糸(10センチ以下程度)を飲み込んでしまったりしてしまった場合にこのような選択を取ることが多いです。

【症例】

ネコのひも状異物の誤嚥(自然排便により排泄された例)

肛門から排泄されたひも状の異物

「この程度の長さであれば、肛門から自然に出る」ということではありません。症例の体の大きさや、ひも状異物の性質、他に異物を飲み込んでいるかなど、様々な要因がありますので、間違った理解をしないようお願いいたします。

3の【口から内視鏡で摘出する】

これは異物が胃内にあり、異物の直径が5センチ以内であり、ひも状異物として小腸の症状を出していない場合に適応となります。また、催吐処置を行っても吐かなかった場合に、内視鏡の摘出を行うことのあります。

典型的には、おもちゃを飲み込んでしまった。マットの一部を飲み込んでしまった、ヘアゴムを飲んでしまった、などがあります。

【症例】

焼き鳥の串を食べてしまった!

4の【開腹して摘出する】

これは、異物が小腸に行ってしまったり、ひも状異物であったり、異物が非常に大型である場合に選択されます。食べたことに気づかず、嘔吐や食欲不振の検査の結果、異物やひも状異物が原因と分かるケースだったり、床材や壁材を破壊して飲み込んでしまった場合には内視鏡での摘出が困難ですので、開腹手術となります。

【症例】

雑種犬の異物誤嚥、消化管閉塞のため、開腹下摘出手術

異物を飲み込んだけど、内視鏡の適応外とは

前述の、非常に大きな異物(形状にもよりますが、目安として直径5センチ以上)であったり、溶けたり吸収される異物(チョコレートやエチレングリコールなど)、すでに胃内から小腸に移行している異物です。内視鏡での異物摘出は、胃内のものに限ります。

【症例】

雑種猫のヘアゴムの誤食

異物摘出以外の内視鏡検査

異物以外では消化管疾患で、特に消化管の粘膜面に病変があることが疑われる場合に消化管の内視鏡検査の適応となります。上部消化管は口から小腸近位まで、下部内視鏡は肛門から小腸遠位まで観察することができます。口から入れても肛門から入れても、小腸の中央部の観察はできませんのでこの部分の異常が考えられる場合には内視鏡の適応ではないかもしれません。しかし、内視鏡検査を実施しようか考慮するような、びまん性粘膜疾患は、その他の箇所にも何らかの異常を呈していることが多いため、一番の異常個所ではないが診断価値のある検査ができることもあります。

【症例】

低アルブミン血症:リンパ管拡張を伴うリンパ球プラズマ細胞性腸炎

ピロリ菌感染性胃潰瘍

内視鏡検査の費用は?

消化管内視鏡は、ほとんどの場合全身麻酔下で行われます。(例外的に、直腸近位のみ、生検をせずに経過観察のために実施するような内視鏡では覚醒下で行う場合もあります。)

そのため、費用には

麻酔前検査、麻酔料金、内視鏡検査料金が基本的にはかかってきます。

これらは、検査を行う病院によって、また、異物なのか、(上部・下部・上下)消化器内視鏡なのかで時間が変わるため、麻酔料金や内視鏡料金が病院ごとに異なる可能性があります。当院で上下内視鏡検査を行う場合には通常1時間程度で終わりますが、獣医師によってはもっと早く行うことができたり、逆により長く時間がかかる場合もあるため、麻酔料金や技術料金に違いが出る可能性もあります。

その他に付随するものとしては疾患やその症例の状態によって、追加の入院費であったり点滴費用、生検を行った場合には病理組織検査費用が含まれます。

各病院が技術料として課している費用部分を除けば、あとは麻酔時間・生検鉗子使用かどうか・病理組織検査費用などになってくるので

内視鏡検査というくくりの中で話すと

●麻酔時間が短く生検も行わない胃内異物摘出や食道内異物の胃への追挿、呼吸状態を確認するのみの呼吸器内視鏡は費用は安め

●慢性鼻炎や異常呼吸の精査を目的として鼻腔内や気管内も確認する呼吸器内視鏡や、下部内視鏡だが直腸ポリープを切除する内視鏡などは中くらい

●消化器疾患の診断を行う目的で上部・下部内視鏡を行い生検を実施する場合が、時間も長く生検および病理検査を実施するため最も費用が高くなる傾向がある

と考えられます。

正確な費用を知りたいところだと思うのですが、内視鏡料金はケースバイケースになることが多いため、調べるよりも、かかりつけの病院に聞いてみるのが一番正確で速いと考えられます。

費用をそこまで調べる前に受診したほうが良いという理由のもう一つが、内視鏡検査の適応ではないケースということが非常に多いからです。他院において「内視鏡を入れてもらったほうがいいです」と言って当院に紹介されてくる症例で、内視鏡検査の適応となるのは当院の経験の中では10%前後です。

多くは内視鏡検査ではない検査によって病気が確定し、その治療に移っています。

費用について調べても、そもそも内視鏡検査の適応ではない可能性も十分にあり得るので、受診を先行しておいたほうがより早く必要な情報を得ることができるという意味で記載しています。

当院の診療費用のページ

内視鏡検査のいいところ、メリット(催吐処置や開腹手術と比較して)

体を切ったりすることなく内部を調べることができて、麻酔から覚めた後も強い痛みを示す場所がないということはメリットといえます。

腸を内部から見るのは、内視鏡ならではの検査です。開腹して消化管を切開したとしても粘膜は確認できますが、それはその一部分だけです。また、異常部位を確認して、たくさんの箇所の生検を実施することができるのも内視鏡ならではといえます。たくさんの箇所を生検するというのは、それだけしっかりと診断できる確率が高まるということです。

開腹して消化管を全層生検することもできますが、内視鏡生検ほど多くの箇所を生検することはできません。(内視鏡検査では、十二指腸のみで8か所ほどどりますが、全層生検では多くて2-3か所ほどです。)

また、催吐処置と比較して、安全に異物を取り出すことができます。ネット上には食塩やオキシドールによって催吐させるといった情報もありますが、そのような方法でサイトを行うと、行った後1週間ほど胃粘膜はただれたままなので、ダメージは内視鏡検査のほうが少ないといえます。

内視鏡検査の悪いところ、デメリット(催吐処置や開腹手術と比較して)

まず、内視鏡という装置がないと行うことができません。そのため、「どの動物病院でも必ずできます」といえないのは、デメリットだと思います。

また、内視鏡を所有していても、内視鏡を訓練している獣医師でない場合、詳しい検査には使用できなかったり、時間がかかってしまうといったような、獣医師間での技術に差が付きやすい検査ということもデメリットといえます。

催吐処置と比較すると、費用が高く、麻酔が必要ということがあげられます。

検査の内容として、検査ができない届かない場所があります。腸を外から見ることはできません。これらは、おなかを開いて開腹手術することと比べたデメリットで、開腹すると腸を外から確認することができ、おなかの中にある臓器すべてが確認できるため、その点で内視鏡検査よりも優れています。

また、「異物を飲み込んでしまい内視鏡検査を行ったけど、結局取れずに開腹手術を行った」というような、内視鏡検査ではとれる異物と取れない異物があるのに対し、開腹手術では基本的にすべての消化管内異物は摘出することができます。何が言いたいかというと、開腹手術が悪くて内視鏡検査がいいとは必ずしも言えないものです。ただ、選択肢として並んでいると、内視鏡があってよかった!ということは必ずあります。

ペットに対して実施する内視鏡を用いた異物摘出や消化器の病気の診断の経験の豊富な獣医師が在住しております。

千葉県で異物誤嚥や下痢や嘔吐などの消化器症状でお困りの際は、お気軽にご相談ください。

千葉県佐倉市の志津・佐倉しらい動物病院

著者プロフィール

白井顕治(しらい けんじ)副院長

獣医師、医学博士、日本動物病院協会(JAHA)内科認定医・総合臨床認定医

千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。

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