佐倉しらい動物病院ブログ

【獣医師監修】猫のくしゃみが止まらない!連続するくしゃみの原因と対処法を解説!

こんにちは、獣医師の白井顕治です。

猫ちゃんとの日常生活の中で、くしゃみをしていることを見る機会は意外と多いのではないでしょうか?

この記事では、猫がくしゃみをした時に考えられることについての情報をまとめました。

うちのこがくしゃみをした際、「これってどうなんだろう・・・」と思った時の助けに少しでもなれば幸いです。

初めに

この記事では猫ちゃんが生活している中で表す「くしゃみ」の症状についての解説を行っていきます。

一般的に猫ちゃんがくしゃみをした際に考えられることを書いていきますが、あくまで一般的な情報として受け取っていただき、この記事をもとに飼育している猫ちゃんの病気の判断や治療などはしないようにお願いいたします。

病気が疑われるような場合には必ず動物病院を受診してくださいね!

【重要】

このサイトをもとにペットの状態をご家族が診断・判断することは、危険が伴いますので、最終的な判断は主治医の先生の判断を仰ぐ必要があることを念頭に置いてお読みください。

猫がくしゃみをする原因

くしゃみは、鼻の中の粘膜に刺激が加わると、その刺激を解消するために空気を鼻から「ぶしゅ!」っとだす行為です。この行為は反射的に起こるため、意図的に起こすことはできません。
くしゃみが出たら必ず病気!というわけではなく、むしろ多くは生理的であり、異常のないものの可能性が高いと考えてよいでしょう。以下に生理的なくしゃみと病的なくしゃみの判断のしどころを記載していきます。

 生理現象としてのくしゃみ

人間も生きていれば日々くしゃみをすることはあると思います。主に鼻粘膜に異物感がある場合なので、鼻腔内にほこりや煙、小虫が入ってしまった場合にはそれを出すためにくしゃみをする可能性が考えられます。

(書いてて思いましたが、鼻に小虫が入るの、いやですね。)


異物という点で後述しますが、より大きかったり、排出されにくいフードや草の種などは、くしゃみをしてもなかなか排出されず、慢性的な鼻炎の原因となることもあります。

ですので、異物が鼻腔内に入ってしまってくしゃみをする場合、線引きが難しいですが、「異物自体が小さく、数回のくしゃみで排出することができた場合には、異物が原因の生理的なくしゃみ」として判断。そういったくしゃみでは排出することができず、数日にわたって症状が継続する場合には「異物による病的なくしゃみ」としてまずは判断してよいと考えられます。

(程度問題です。)

また、目に見えないものとして煙や香水、芳香剤なども鼻粘膜を刺激するため、くしゃみをする可能性もあります。こちらも一過性の症状の場合には問題としなくてよいですが、たばこの煙などが慢性鼻炎の引き金になる場合もありますので、やはり線引きはくしゃみをどの程度しているかで判断が分かれます。

最後に、人間にも存在しますが「光くしゃみ反射」という反射が起こる猫ちゃんが存在することも報告されています。これは、まぶしい光を見た際に鼻粘膜に作用してくしゃみが出るのではといわれていますが、正確な機序はまだ解明されていなかったはずです。

(私はこれが出ます。小さいころから、屋外に出るとまぶしさから一人だけくしゃみをしていました。大学で理由が分かった時は猫とおそろいでうれしかったです。)

ほかにも、寒暖差や湿度の差で、屋外や、リビングから廊下に出た際に出ることもしばしば認められますが、多くて2-3回程度くしゃみをするにとどまると思いますので、これらも生理的なくしゃみと判断して問題ないと考えられます。

病的なくしゃみ

くしゃみはあくまで症状としてのものなので、そのくしゃみ1回を見てみても、基本的には生理的なくしゃみと病的なくしゃみには大きな違いは認められません。

  • ・くしゃみが数分にわたって続く
  • ・1日のうちに何度もくしゃみをしている姿を見る
  • ・鼻汁の性状として、膿っぽかったり出血が認められ
  • ・食欲がない
  • ・呼吸が荒い
  • ・目やにも出ている
  • ・呼吸時に異常な音がする

などの症状が認められる場合には、病気によるくしゃみの可能性も考えられるため、動物病院を受診しましょう。

くしゃみというのは症状の一つなので、「くしゃみが出ていたら○○病」という判断はすることができません。

判断できるのは、「病的に鼻粘膜が持続的に刺激されている」ということなので、その子の品種・性別・年齢・飼育方法・環境・同居猫などをもとに鼻粘膜を刺激している原因を探っていきます。

「くしゃみが出る」ということに関連してどのような症状がほかに合わせて出ているのかという点で疑いのある病気が変わってきますので、個々の疾患について以下に解説していきます。

連続してくしゃみをする場合に考えられる病気

くしゃみを出すことのある病気について上述の「病的なくしゃみ」が認められた場合に考えられる疾患を記載していきます。
ここの段落で重要なのが、病気になってしまった時に出す症状についてです。どんな病気であっても、「必ずこの症状を出す!」というのは実はあまり多くなく、確率で示されます。

例として、風邪をひいてしまったとします。全員が必ず熱が出て、咳が出て、おなかが緩くなるかといえばそうではありません。
あくまで例なので数値は適当ですが

発熱:80%
発咳:75%
扁桃腺の腫れ60%
倦怠感50%
気管支炎:20%

など、風邪をひいたら必ず起こす症状ということはありません。中には、倦怠感のみという人もいる可能性があるわけです。なので、何が言いたいかといえば、これから列挙する病気であっても、くしゃみを出さない仔もいます。あくまでくしゃみは症状のうちの一つなので、その他の情報も総合して診断を行っていきますので、その点は留意して記事を役立てていただければと思います。

アレルギー

アレルギーもしくは刺激反応性に発生するくしゃみとして、花粉やハウスダストマイトに対するアレルギーを持っている場合があります。また、たばこや消臭剤、芳香剤、お香や衣類の柔軟剤、煙が発生するタイプのアロマもアレルゲンとなるケースがあります。これらはくしゃみの原因ともなり、増悪因子にもなりえるため、猫ちゃんやワンちゃんのいるおうちでは控えたほうが良いといえます。
症状としてはくしゃみ以外に鼻水や発咳、皮膚炎といった症状を出す場合があります。鼻水は細菌感染が二次的に発生していなければ、漿液性の透明でさらさらした液体が排出されます。慢性化し、二次感染を引き起こしている場合には膿性の鼻汁を排出する可能性もあります。

猫風邪(細菌・ウイルス)

猫風邪と総称される猫の上部呼吸器症状を示す細菌・ウイルス感染症で、特に若齢でくしゃみを呈する場合には最も多い原因となる疾患群です。

猫カリシウイルス感染症

くしゃみに関連する記事なので上げる疾患ではありますが、猫カリシウイルス(feline calici virus:FCV)感染症は、主に主訴としては流涎や口内炎として来院されることの多い感染症です。
比較的広まっている感染症で、多頭飼育かや猫同士の接触頻度が高い状況においての感染が認められます。
猫伝染性鼻気管炎とともに、上部呼吸器や口腔内に発生する疾患の因子の一つといわれています。診断は臨床症状やPCR検査、ワクチン履歴などをもとに総合的に判断していきます。

通常重度の症状には進行しないが、時に急性肺炎から間質性肺炎に移行する場合もあります。近年より強毒のウイルス株の報告なども報告されていますが、(強毒全身性猫カリシウイルス)そちらの症状は成猫において黄疸や発熱、頭部や四肢の潰瘍などを形成するもので、症状は一般的に言われているカリシウイルス感染症とは異なる点が多いと報告されています。

軽度の口内炎を呈する猫

猫ウイルス性鼻気管炎

猫ウイルス性鼻気管炎(feline viral rhinotracheitis:FVR)は猫ヘルペスウイルスに起因する上部呼吸器症状を示す疾患です。ただし、ここで紹介しているクラミジアやFCVと合わせて発症していることも多く、発咳やくしゃみのような上部呼吸器症状を起こしている際には、その病因のうちの一つである可能性を念頭に置く必要があります。
こちらも、ほかの感染症同様にネコに広まっており、多頭飼育や猫同士の接触頻度が高い状況には感染及び発症のリスクが高い感染症です。
また、猫カリシウイルス感染症との違いとして、結膜症状があげられます。猫ヘルペスウイルスは鼻腔や扁桃で増殖したのちに結膜や気管に広がります。そのため、角膜・結膜に炎症を生じ、流涙や目やに、羞明といった眼科に関連する症状を同時に表していることが多く認められます。

この時、クラミジア症との肉眼所見の鑑別として、ヘルペスウイルス感染症では角膜結膜の炎症がより強く出る傾向にあります。角膜結膜の炎症所見、充血、フルオロセイン染色を行って角膜染色や結膜染色が認められる場合には高率でヘルペスウイルスの存在を疑います。

この時注意したいのがPCR検査です。角膜結膜、深咽頭から採材してネコ上部呼吸器に関連する病原体を検出する検査が存在しますが、これらのウイルスは健常の猫やキャリアーの猫でも保有しているため「現在ネコが出している症状」とどこまで関連しているかはPCR検査では明らかにすることができません。

また、ヘルペスウイルスに対する薬を使用したとしてもそれらの薬は殺ウイルス的に効果を示すのではなく、静ウイルス的に作用する薬です。そのため、ウイルスを完全に根絶することはできないとされています。
そのため、症状が出ているネコの鼻汁や結膜を材料にPCRを実施し、ヘルペスウイルスが検出され、治療後に確認で再検査を実施したとしても、再度ウイルスが検出される可能性があるということです。

(ややこしい話で申し訳ないです)

診断方法は専門医により異なりますが、当院においてはアメリカ獣医専門医の勧める手法として、ファムシクロビルの試験的内服を採用しています。この薬はヘルペスウイルスに対して特効的に静ウイルス的に作用するためこの薬を飲んで回復する場合にはヘルペスウイルスが病気に関連していたといってよいという判断を行います。
試験的投薬期間は7-14日間であり、その後は重症度によって投薬期間を決めていきます。

ただし、結膜や呼吸器症状が軽度の場合、もしくは全身状態が悪く衰弱しているような重度な症例においては抗生剤や消炎剤などの支持療法のみで経過を観察する場合もあるため、症例ごとに対応を判断する必要があります。

猫ヘルペスウイルスに罹患した猫たちの顔貌・眼球粘膜所見。

スコティッシュフォールドのヘルペスウイルス性結膜炎

雑種猫のヘルペスウイルス性角結膜炎

猫クラミジア感染症

猫のクラミジア症は粘膜に親和性のある猫クラミジアによる結膜炎を主な症状として表す疾患です。この疾患は人からも分離されていることから、人に感染をする可能性が示唆されています。くしゃみということの記事ですが、クラミジアに罹患した猫の来院理由として最も典型的なものは目の異常であり、くしゃみを主訴としての来院は稀です。
呼吸器系の症状としては軽度の鼻汁やくしゃみを呈することがあります。
結膜の症状に関して、前述のヘルペス性角結膜炎(FVR)との鑑別として、クラミジア症では結膜浮腫が強く出る傾向にあるものの、角結膜の粘膜の炎症は軽度であるため、充血は軽度であり、フルオロセイン染色においてもほとんど染まることはありません。

また、診断方法としてはヘルペス性の猫ウイルス性鼻気管炎と似ていますが、クラミジアに対して著効する抗生剤がすでに分かっているため、抗生剤の内服により改善してくるか否かで判断することができます。

 クリプトコッカス症

クリプトコッカス症な真菌による感染症です。多くは妊娠中や免疫抑制剤を内服している、猫エイズに感染しているなど、免疫不全になっていなければ感染することは稀です。
鼻水や鼻血のような軽い症状から始まりますが、病状が進行すると顔貌が変形したり、前頭洞から眼窩に浸潤し眼球突出などが生じることもあります。犬とは異なり、致死的なことが多いという報告が出ています。
発生は比較的まれであるため、くしゃみが出るネコちゃんの原因疾患として鑑別疾患としての順位は低いが既往歴や症状の重篤さによっては考慮に入れる疾患であります。

歯周病

歯周病は歯の周囲の歯肉や顎骨が歯垢や歯石の蓄積に伴い増殖した細菌によって炎症を起こす疾患です。特に上顎の歯は歯周病に罹患し根尖まで炎症が波及すると、根尖の周囲には鼻粘膜があるためしばしば鼻汁やくしゃみの症状を呈することはありますが、そういった症状は主に犬で認められ、猫では歯周病に起因するくしゃみや鼻汁といった呼吸器症状は少数派です。
歯周病に罹患している際の主な来院時の主訴としては、流涎や口を痛そうにしている、口をこすっている、口の周りが汚れている、犬歯が伸びてきた(挺出している)などがあげられ、くしゃみはあったとしてもメインの主訴として来院することは稀です。
それに対して犬は流涎や痛みを呈していないにもかかわらず、くしゃみのみの症状で来院することがあります。

歯周病に罹患し、眼下から排膿している猫

雑種猫の歯周病による根尖周囲膿瘍

ポリープ・腫瘍・鼻腔内異物

冒頭に書いたように、くしゃみは鼻粘膜に刺激が加わることにより生じる症状のため、腫瘍が発生している場合も考えられます。腫瘍が発生している場合には腫瘍自体がくしゃみの原因となることもあれば周囲に生じている炎症や細菌感染などの二次的な刺激により生じている場合もあります。
ポリープは若齢の猫に発症する鼻咽頭ポリープがあげられます。鼻咽頭ポリープや炎症性ポリープと呼ばれます。鼻咽頭ポリープの発生は若齢が多く、その発生原因は先天異常ともウイルス関連ともいわれており、現在明らかになっていません。耳管周囲から発生し、ポリープの拡大により鼻腔内へ広がる場合と、中耳や外耳側に広がることがあり、外耳に広がっている場合には外耳炎の症状を呈します。中耳のみに存在するときには症状は出ていても診断が難しいことが多いですが、ポリープが鼓膜を超えて外耳に広がってくることによって診断が容易になります。鼻腔内に広がっている場合には慢性のくしゃみを呈するため、若齢の猫であり内科療法に反応に乏しい、もしくは反応するが、休薬するとすぐに症状が再発するようなくしゃみを呈している場合には麻酔下でCT撮影や鼻腔内視鏡を実施することによりポリープの有無を確認する必要があります。治療はポリープの除去を行うことだが、良性とはいえ腫瘍ではあるため、腫瘍細胞が残存すると再発する場合があります。再発率は摘出方法により違いがあるが、牽引法もしくは内視鏡下摘出では10-35%ほどといわれており、再発までの期間は最長で4年ほどのものが確認されています。摘出後に一時的にステロイド剤を使用することが再発を予防する方法として示唆されていますので、そのような術後のケアを行うことも有益である可能性があります。
中年齢~高年齢になってから発生するくしゃみの場合には、異物や悪性腫瘍の存在が鑑別疾患に入ってきます。鼻腔内の腫瘍としては鼻腺癌や扁平上皮癌、骨肉腫や繊維肉腫、そして独立円形細胞由来ものとして肥満細胞腫やリンパ腫があげられます。腫瘍の外見だけでは判断することができませんが、扁平上皮癌や繊維肉腫は悪性度の高いものなので注意が必要です。また、リンパ腫は鼻腔内に症状を示している場合には目や腎臓にも症状を出していることも多いため、鼻腔内以外にも注意して観察を行う必要があります。悪性腫瘍である場合には診断名によって手術や抗がん剤など推奨とされる治療が異なります。
鼻咽頭ポリープの時と同様、まずは対症療法を実施することがほとんどですが、内科療法に対して反応が乏しかったり、効果が限局的である場合には診断のために麻酔下で精査を行う必要があることがあります。くしゃみ以外にも鼻血や顔面の変形、目の症状まで出ているような場合には内服で経過観察して時間を浪費しないようにすることも大切です。

腫瘍以外の構造物が鼻腔内に存在する場合には鼻腔内異物の可能性が考えられます。初期には異物を排出するためにくしゃみを発症し、次第に異物周囲に炎症が生じて排出される鼻汁の粘性が高くなるのが典型的な症状として挙げられます。鼻腔内異物の症状としてはくしゃみ以外に逆くしゃみや顔を振るなどのしぐさが認められることがあります。異物は吸い込んだ可能性もあれば、嘔吐をした場合には吐物が鼻腔内に入ってしまう場合もあります。診断には麻酔下でCT検査や鼻腔内洗浄による異物の検出が有用ですが、異物を吸い込んでから時間が経過した場合には鼻汁などによってすでに異物が溶解され、初めに鼻腔内にあった異物が何であったか不明瞭になってしまうケースもあります。

ポリープや腫瘍、異物はあくまでその猫にしか発生しないことなので、多頭飼育をしているにもかかわらず、ほかの猫には症状が伝搬せずに一頭だけずっとくしゃみをしているというような主訴がある場合には、感染性ではない原因が疑いに入ってきます。

猫の外耳道に形成された鼻咽頭ポリープ

 高血圧

ご家族様から問い合わせをいただいたり、ほかの情報サイトにおいてもくしゃみの原因として挙げられているために高血圧症を挙げていますが、くしゃみのみが主訴となることがまれというどころか高血圧症によってくしゃみを出すこと自体がまれであるため、くしゃみから高血圧症を連想することはほぼありません。高血圧症は原因不明で唐突に血圧が高くなってしまう原発性高血圧症と、腎疾患や心疾患、甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患に続発して起こる続発性高血圧症に分けることができます。いずれの高血圧症においても、その影響を受けやすい臓器は【神経・眼・腎臓・脳・心臓】(頭文字をとって「しめじの心臓」と覚えます)です。目に異常が出る場合には眼底の出血や網膜剥離なども起こす可能性があるため、鼻出血のみを起こす可能性もゼロではありませんが、私の経験としてくしゃみのみが主訴で高血圧症であったことはこれまではありませんでした。また、鼻出血を起こしてくしゃみという説明の場合には凝固不全状態でも発生する可能性はありますが、こちらも主訴としては粘膜や皮下出血が比較的よく認められる症状であるということと、猫においては凝固異常が発生している場合には犬と比較しても非常に重篤な状態である可能性が高いため、やはり主訴がくしゃみとなることは考えにくいといえます。
よくある症状として、性格の変化や行動の変化、活動性が低くなった、息切れをする、ジャンプをしなくなった、などが比較的多い症状ですが、中には突然目が見えなくなったというような主訴もあるため、中高齢の猫ちゃんにおいては定期的に検診を受けることも大切といえます。

高血圧症によって突然の失明を呈した猫。最高血圧は240mmHgを超えていた

猫の甲状腺機能亢進症と高血圧症に対する内科療法

 ストレス

ストレスが直接の原因となってくしゃみを起こすことはありません。ストレスを緩和するためにあくびをする動作は人間と同様に行う場合があります。精神的及び身体的なストレスが加わった場合には、そのストレスの程度と継続時間により免疫力が低下し、細菌感染や保有しているヘルペスウイルスの悪化による猫ウイルス性鼻気管炎を起こす可能性があります。

この点でいえば、「ストレス」というより、「免疫抑制」によって起きているといえるため、ストレス以外に免疫力が低下する要因として、猫エイズウイルスや猫白血病ウイルスへの感染、若齢や高齢、妊娠中、持病がある、ステロイド剤や非ステロイド系の免疫抑制剤を服用しているなどが可能性として挙げることができます。

品種

スコティッシュフォールドやペルシャ、バーミーズやヒマラヤンなどの短頭種は遺伝的に顔面骨の成長に異常を有しているため、その結果として鼻腔内が狭く、くしゃみや鼻水・鼻血を出しやすい傾向にあります。これらの品種であっても、個体差はありますが、平均して8-9か月齢までは骨格は成長するため、より若齢である場合には成長とともに症状が緩和することもあれば、若齢期には問題はなかったが成長しきったところで鼻炎症状が現れる場合もあります。
この場合基本的には先天異常であるため、比較的若齢から症状を示すことがほとんどです。若齢期にくしゃみを主訴として来院された場合には上部呼吸器疾患を起こすような感染症を除外し、鼻咽頭ポリープ(炎症性ポリープ)を除外した後に品種を加味して診断をつけていきます。
また、短頭種の場合には鼻腔狭搾以外にも外鼻孔狭搾も起こしやすく、その場合には空気を吸うときに「すーすー」という鼻音が目立つ場合もあります。狭搾によって過度な陰圧をかけすぎるとネコにおいても気管虚脱などの二次的にあ呼吸器疾患を出すことがあるため、短頭種を飼育している場合にはこれらの身体的特徴があるのかを主治医に小さいころから聞いておくとよいでしょう。

猫の逆くしゃみとは

通常のくしゃみが、鼻腔内の刺激物を除去するために空気を勢いよく口腔及び鼻腔から出すのに対し、逆くしゃみは息を吸いながら「ずーずー」や「ぐーぐー」といった鼻音を鳴らす症状を指します。犬と同様、短頭種に認められることが多いですが、継続する場合には異物やポリープの可能性もありますので、動物病院を受診して主治医の判断を仰ぎましょう。

猫のくしゃみの対処法

寒暖差や特定の猫砂の使用時のみくしゃみをするなど、決まった規則性が認められる場合には生活環境を改善することによってくしゃみの発生頻度をコントロールできる可能性があります。また、多頭飼育している場合で、隔離などが可能であればほかの猫に伝染することを防ぐ目的で隔離飼育することが良いといえます。(※1)

そのほかの要因の場合には、ご家庭において対処できる内容ではないため、前述したような病的なくしゃみを呈している場合には動物病院を受診しましょう。

猫のくしゃみは予防と対策について

猫のくしゃみに対しての予防と対策について解説を行いますが、最も大切なことをはじめに記載します。
くしゃみをしているシーンを動画に撮影するとともに、生活環境を正確に獣医師と共有することです。

まず前提として、ご家族が「くしゃみ」と判断している症状が「くしゃみ」ではないことが比較的多いです。また、くしゃみであったとしても、実際に診察室内では緊張しているため、くしゃみをすることは稀なので、動画に記録していただけると診断の助けになります。

次に、生活環境に関しては、ご家族が重要視していない部分であっても、呼吸器疾患の診断のために有用な情報がある可能性があります。受診する際には生活環境やトイレの素材、食べているフードやおやつ、これまでかかってきた病気についてある程度理解しているご家族が同伴するとより精度の高い診断が行えると考えられます。

そのほかの生活環境の準備に関して、一般的な注意点を挙げますが、体質的に問題がない個体はどのような環境であってもくしゃみは出さないし、逆に品種やウイルスの保有状況、飼育頭数によってはどんなに気を付けても継続して症状が出てしまうこともあります。したがって、「環境が悪いからくしゃみが出た」というケースはまれであり、ここで述べる対応というのは「くしゃみが出てしまう猫ちゃんが、少しでも楽に暮らせる環境」ということだと理解していただければよいと思います。

部屋の中を清潔にする

常識の範囲内の清掃、と、空気清浄機を使用することは環境の整備に役に立つと考えられます。また、トイレの素材として、水分を吸収しないシステムトイレ型のものを使用するか、尿で固まるタイプのものであれば紙やおがくずタイプのものが良いでしょう。粒子の細かい固まる猫砂の使用は発咳の原因となったり、肺線維症の原因となることが示唆されています。また、前述ですが粒子が発生し、それを猫が吸引するものは呼吸器への刺激となるため、たばこやアロマ、芳香剤などの使用も注意を払う必要があります。
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適切な湿度を保つ

加湿器を使用して湿度をある程度高めに保つことは粘膜の乾燥を予防できるという点から感染予防に役に立ちます。これは主に冬に限定したケアの内容ですが、そのほかの季節においても加湿によって症状の軽減が認められる場合には行うことが勧められます。

室内で飼育する

この記事の内容に関して、室内で飼育するということは、主に感染症の予防という観点から有用といえます。ヘルペスウイルスやカリシウイルス、猫エイズウイルスや猫白血病ウイルスは罹患しているネコから感染がおこるために、接触の可能性を断つことは重要です。完全室内飼育のマイナスの部分としては、ストレスの発散がうまくできない場合があります。ベランダでの日光浴やおもちゃで遊んであげるなどのストレス発散に役立つ行為を日常で取り入れてあげることが望ましいでしょう。

ブラッシングする

ブラッシングに関しては、そもそもブラッシング自体を好まない猫ちゃんもいますので、ここの性格に合わせて実施するとよいでしょう。くしゃみに対して直接予防することとの関連は薄いでしょう。

ワクチン接種

通常よく使用されている混合ワクチンの中にはヘルペスウイルスやカリシウイルスに対するワクチンが含まれています。そういったワクチンを接種することも予防のために重要といえます。ただし、粘膜免疫について十分ではなく定着はしないまでも感染が生じてしまう可能性はあるため、あくまでもっとも重要な予防は感染している猫との接触を避けることです。

まとめ

高熱や黄疸などの出るだけで明らかな異常と判断してよい症状と違い、くしゃみは日常的に起こすことがある行為ですので、その「くしゃみ」が生理的な異常のないものなのか、病的であり放置してはいけないものなのかの線引きが難しい症状の一つといえます。明確な線引きはなく、記載している内容も獣医師やサイトごとによって異なると思います。あくまでケースバイケースになることが前提の記事でしたが、少しでもご家族様の役に立つ内容が書いてあればうれしく思います。

猫ちゃんのくしゃみや目やにでお困りの場合には、お気軽にご相談ください。

千葉県佐倉市で動物病院をお探しなら、志津・佐倉しらい動物病院へ

注釈

(※1)
隔離飼育は口で言うのは簡単ですが、実際には非常に難しいと考えています。
まず、そんなにたくさん部屋がないという場合があるということと、気に入っている食事の場所やトイレを移動すると食欲がなくなったり、排泄をしなくなってしまう猫もいるため、くしゃみ以上の健康被害を出してしまう可能性もあります。さらに隔離のストレスでより症状が悪化してしまう可能性もあります。また、多頭飼育しているという時点でネコは軽度の免疫抑制状態と同じようなストレスがかかっているため、感染性の原因だった場合にはほかの猫にも非常に伝搬しやすい状況といえます。
そのため、隔離を行っても行わなくてもほかの猫に伝搬してしまう可能性はあるため、「部屋に余裕があって、1部屋にその猫だけを隔離して、食器やトイレをその部屋の中に移動しても食事や排せつを行えるような場合」には隔離も有効だと考えています。

著者プロフィール

白井顕治(しらい けんじ)副院長

獣医師、医学博士、日本動物病院協会(JAHA)内科認定医・総合臨床認定医

千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。

執筆協力

獣医師 吉川未紗

日本獣医生命科学大学付属動物医療センター 呼吸器科・腫瘍内科 研修生

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