佐倉しらい動物病院ブログ

【獣医師監修】猫のくしゃみが止まらない!連続するくしゃみの原因と対処法を解説!

猫がくしゃみをする原因

猫のくしゃみは、鼻の中の粘膜に刺激が加わると、その刺激を解消するために空気を鼻から「ぶしゅ!」っとだす行為です。この行為は反射的に起こるため、意図的に起こすことはできません。
くしゃみが出たら必ず病気!というわけではなく、むしろ多くは生理的であり、異常のないものの可能性が高いと考えてよいでしょう。以下に生理的なくしゃみと病的なくしゃみの判断のしどころを記載していきます。

 生理現象としての猫のくしゃみ

人間も生きていれば日々くしゃみをすることはあると思います。主に鼻粘膜に異物感がある場合なので、鼻腔内にほこりや煙、小虫が入ってしまった場合にはそれを出すためにくしゃみをする可能性が考えられます。

草の種が入ってしまうこともあります

また生理的なくしゃみとして、人間にも存在しますが「光くしゃみ反射」という反射が起こる猫ちゃんが存在することも報告されています。これは、まぶしい光を見た際に鼻粘膜に作用してくしゃみが出るのではといわれていますが、正確な機序はまだ解明されていなかったはずです。

ほかにも、寒暖差や湿度の差で、屋外や、リビングから廊下に出た際に出ることもしばしば認められますが、多くて2-3回程度くしゃみをするにとどまると思いますので、これらも生理的なくしゃみと判断して問題ないと考えられます。

病的な猫のくしゃみ

猫のくしゃみはあくまで症状としてのものなので、そのくしゃみ1回を見てみても、基本的には生理的なくしゃみと病的なくしゃみには大きな違いは認められません。

  • ・くしゃみが数分にわたって続く
  • ・1日のうちに何度もくしゃみをしている姿を見る
  • ・鼻汁の性状として、膿っぽかったり出血が認められ
  • ・食欲がない
  • ・呼吸が荒い
  • ・目やにも出ている
  • ・呼吸時に異常な音がする

などの症状が認められる場合には、病気によるくしゃみの可能性も考えられるため、動物病院を受診しましょう。

くしゃみというのは症状の一つなので、「くしゃみが出ていたら○○病」という判断はすることができません。

判断できるのは、「病的に鼻粘膜が持続的に刺激されている」ということなので、その子の品種・性別・年齢・飼育方法・環境・同居猫などをもとに鼻粘膜を刺激している原因を探っていきます。

「くしゃみが出る」ということに関連してどのような症状がほかに合わせて出ているのかという点で疑いのある病気が変わってきますので、個々の疾患について以下に解説していきます。

猫が連続してくしゃみをする場合に考えられる病気

猫がくしゃみを出すことのある病気について上述の「病的なくしゃみ」が認められた場合に考えられる疾患を記載していきます。

猫のアレルギー性鼻炎

アレルギーもしくは刺激反応性に発生するくしゃみとして、花粉やハウスダストマイトに対するアレルギーを持っている場合があります。また、たばこや消臭剤、芳香剤、お香や衣類の柔軟剤、煙が発生するタイプのアロマもアレルゲンとなるケースがあります。これらはくしゃみの原因ともなり、増悪因子にもなりえるため、猫ちゃんやワンちゃんのいるおうちでは控えたほうが良いといえます。

症状としては、くしゃみ以外に鼻水や発咳、皮膚炎といった症状を出す場合があります。鼻水は細菌感染が二次的に発生していなければ、漿液性の透明でさらさらした液体が排出されます。慢性化し、二次感染を引き起こしている場合には膿性の鼻汁を排出する可能性もあります。

猫風邪(細菌・ウイルス)

猫風邪と総称される猫の上部呼吸器症状を示す細菌・ウイルス感染症で、特に若齢でくしゃみを呈する場合には最も多い原因となる疾患群です。

猫カリシウイルス感染症

くしゃみに関連する記事なので上げる疾患ではありますが、猫カリシウイルス(feline calici virus:FCV)感染症は、主に主訴としては流涎や口内炎として来院されることの多い感染症です。
比較的広まっている感染症で、多頭飼育かや猫同士の接触頻度が高い状況においての感染が認められます。
猫伝染性鼻気管炎とともに、上部呼吸器や口腔内に発生する疾患の因子の一つといわれています。診断は臨床症状やPCR検査、ワクチン履歴などをもとに総合的に判断していきます。

軽度の口内炎を呈する猫

猫ウイルス性鼻気管炎(ヘルペスウイルス)

猫ウイルス性鼻気管炎(feline viral rhinotracheitis:FVR)は猫ヘルペスウイルスに起因する上部呼吸器症状を示す疾患です。ただし、ここで紹介しているクラミジアやFCVと合わせて発症していることも多く、発咳やくしゃみのような上部呼吸器症状を起こしている際には、その病因のうちの一つである可能性を念頭に置く必要があります。
こちらも、ほかの感染症同様にネコに広まっており、多頭飼育や猫同士の接触頻度が高い状況には感染及び発症のリスクが高い感染症です。

診断方法は専門医により異なりますが、当院においてはアメリカ獣医専門医の勧める手法として、ファムシクロビルの試験的内服を採用しています。この薬はヘルペスウイルスに対して特効的に静ウイルス的に作用するためこの薬を飲んで回復する場合にはヘルペスウイルスが病気に関連していたといってよいという判断を行います。
試験的投薬期間は7-14日間であり、その後は重症度によって投薬期間を決めていきます。

ただし、結膜や呼吸器症状が軽度の場合、もしくは全身状態が悪く衰弱しているような重度な症例においては抗生剤や消炎剤などの支持療法のみで経過を観察する場合もあるため、症例ごとに対応を判断する必要があります。

   

猫ヘルペスウイルスに罹患した猫たちの顔貌・眼球粘膜所見。

【症例:スコティッシュフォールドのヘルペスウイルス性結膜炎】

【症例:雑種猫のヘルペスウイルス性角結膜炎】

猫クラミジア感染症

猫のクラミジア症は粘膜に親和性のある猫クラミジアによる結膜炎を主な症状として表す疾患です。この疾患は人からも分離されていることから、人に感染をする可能性が示唆されています。くしゃみということの記事ですが、クラミジアに罹患した猫の来院理由として最も典型的なものは目の異常であり、くしゃみを主訴としての来院は稀です。
呼吸器系の症状としては軽度の鼻汁やくしゃみを呈することがあります。

 猫のクリプトコッカス症

クリプトコッカス症な真菌による感染症です。多くは妊娠中や免疫抑制剤を内服している、猫エイズに感染しているなど、免疫不全になっていなければ感染することは稀です。
鼻水や鼻血のような軽い症状から始まりますが、病状が進行すると顔貌が変形したり、前頭洞から眼窩に浸潤し眼球突出などが生じることもあります。犬とは異なり、致死的なことが多いという報告が出ています。
発生は比較的まれであるため、くしゃみが出るネコちゃんの原因疾患として鑑別疾患としての順位は低いが既往歴や症状の重篤さによっては考慮に入れる疾患であります。

猫の歯周病

歯周病は歯の周囲の歯肉や顎骨が歯垢や歯石の蓄積に伴い増殖した細菌によって炎症を起こす疾患です。特に上顎の歯は歯周病に罹患し根尖まで炎症が波及すると、根尖の周囲には鼻粘膜があるためしばしば鼻汁やくしゃみの症状を呈することはありますが、そういった症状は主に犬で認められ、猫では歯周病に起因するくしゃみや鼻汁といった呼吸器症状は少数派です。
歯周病に罹患している際の主な来院時の主訴としては、流涎や口を痛そうにしている、口をこすっている、口の周りが汚れている、犬歯が伸びてきた(挺出している)などがあげられ、くしゃみはあったとしてもメインの主訴として来院することは稀です。
それに対して犬は流涎や痛みを呈していないにもかかわらず、くしゃみのみの症状で来院することがあります。

歯周病に罹患し、眼下から排膿している猫

【症例:雑種猫の歯周病による根尖周囲膿瘍】

ポリープ・腫瘍・鼻腔内異物

くしゃみは鼻粘膜に刺激が加わることにより生じる症状のため、腫瘍が鼻粘膜付近に発生している場合も考えられます。腫瘍が発生している場合には腫瘍自体がくしゃみの原因となることもあれば周囲に生じている炎症や細菌感染などの二次的な刺激により生じている場合もあります。

中年齢~高年齢になってから発生するくしゃみの場合には、異物や悪性腫瘍の存在が鑑別疾患に入ってきます。

鼻腔内の腫瘍としては鼻腺癌や扁平上皮癌、骨肉腫や繊維肉腫、そして独立円形細胞由来ものとして肥満細胞腫やリンパ腫があげられます。腫瘍の外見だけでは判断することができませんが、扁平上皮癌や繊維肉腫は悪性度の高いものなので注意が必要です。また、リンパ腫は鼻腔内に症状を示している場合には目や腎臓にも症状を出していることも多いため、鼻腔内以外にも注意して観察を行う必要があります。悪性腫瘍である場合には診断名によって手術や抗がん剤など推奨とされる治療が異なります。

【症例:猫の外耳道に形成された鼻咽頭ポリープ】

 猫の高血圧

高血圧症によってくしゃみを出すこと自体がまれであるため、くしゃみから高血圧症を連想することはほぼありません。

高血圧症は原因不明で唐突に血圧が高くなってしまう原発性高血圧症と、腎疾患や心疾患、甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患に続発して起こる続発性高血圧症に分けることができます。いずれの高血圧症においても、その影響を受けやすい臓器は【神経・眼・腎臓・脳・心臓】です。目に異常が出る場合には眼底の出血や網膜剥離なども起こす可能性があるため、鼻出血のみを起こす可能性もゼロではありませんが、私の経験としてくしゃみのみが主訴で高血圧症であったことはこれまではありませんでした。

高血圧症によって突然の失明を呈した猫。最高血圧は240mmHgを超えていた

猫の甲状腺機能亢進症と高血圧症に対する内科療法

 ストレス

ストレスが直接の原因となってくしゃみを起こすことはありません。ストレスを緩和するためにあくびをする動作は人間と同様に行う場合があります。精神的及び身体的なストレスが加わった場合には、そのストレスの程度と継続時間により免疫力が低下し、細菌感染や保有しているヘルペスウイルスの悪化による猫ウイルス性鼻気管炎を起こす可能性があります。

猫の品種とくしゃみ

スコティッシュフォールドやペルシャ、バーミーズやヒマラヤンなどの短頭種は遺伝的に顔面骨の成長に異常を有しているため、その結果として鼻腔内が狭く、くしゃみや鼻水・鼻血を出しやすい傾向にあります。これらの品種であっても、個体差はありますが、平均して8-9か月齢までは骨格は成長するため、より若齢である場合には成長とともに症状が緩和することもあれば、若齢期には問題はなかったが成長しきったところで鼻炎症状が現れる場合もあります。

また、短頭種の場合には鼻腔狭搾以外にも外鼻孔狭搾も起こしやすく、その場合には空気を吸うときに「すーすー」という鼻音が目立つ場合もあります。

【ペルシャ猫の外鼻腔狭窄に対する手術】

猫の逆くしゃみとは

通常のくしゃみが、鼻腔内の刺激物を除去するために空気を勢いよく口腔及び鼻腔から出すのに対し、逆くしゃみは息を吸いながら「ずーずー」や「ぐーぐー」といった鼻音を鳴らす症状を指します。犬と同様、短頭種に認められることが多いですが、継続する場合には異物やポリープの可能性もありますので、動物病院を受診して主治医の判断を仰ぎましょう。

猫のくしゃみの対処法

寒暖差や特定の猫砂の使用時のみくしゃみをするなど、決まった規則性が認められる場合には生活環境を改善することによってくしゃみの発生頻度をコントロールできる可能性があります。また、多頭飼育している場合で、隔離などが可能であればほかの猫に伝染することを防ぐ目的で隔離飼育することが良いといえます。(※1)

そのほかの要因の場合には、ご家庭において対処できる内容ではないため、前述したような病的なくしゃみを呈している場合には動物病院を受診しましょう。

猫のくしゃみは予防と対処について

猫のくしゃみに対しての予防と対処について解説を行いますが、最も大切なことをはじめに記載します。
くしゃみをしているシーンを動画に撮影するとともに、生活環境を正確に獣医師と共有することです。

まず前提として、ご家族が「くしゃみ」と判断している症状が「くしゃみ」ではないことが比較的多いです。また、くしゃみであったとしても、実際に診察室内では緊張しているため、くしゃみをすることは稀なので、動画に記録していただけると診断の助けになります。

部屋の中を清潔にする

常識の範囲内の清掃、と、空気清浄機を使用することは環境の整備に役に立つと考えられます。また、トイレの素材として、水分を吸収しないシステムトイレ型のものを使用するか、尿で固まるタイプのものであれば紙やおがくずタイプのものが良いでしょう。粒子の細かい固まる猫砂の使用は発咳の原因となったり、肺線維症の原因となることが示唆されています。また、前述ですが粒子が発生し、それを猫が吸引するものは呼吸器への刺激となるため、たばこやアロマ、芳香剤などの使用も注意を払う必要があります。
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適切な湿度を保つ

加湿器を使用して湿度をある程度高めに保つことは粘膜の乾燥を予防できるという点から感染予防に役に立ちます。これは主に冬に限定したケアの内容ですが、そのほかの季節においても加湿によって症状の軽減が認められる場合には行うことが勧められます。

室内で飼育する

この記事の内容に関して、室内で飼育するということは、主に感染症の予防という観点から有用といえます。ヘルペスウイルスやカリシウイルス、猫エイズウイルスや猫白血病ウイルスは罹患しているネコから感染がおこるために、接触の可能性を断つことは重要です。完全室内飼育のマイナスの部分としては、ストレスの発散がうまくできない場合があります。ベランダでの日光浴やおもちゃで遊んであげるなどのストレス発散に役立つ行為を日常で取り入れてあげることが望ましいでしょう。

ブラッシングする

ブラッシングに関しては、そもそもブラッシング自体を好まない猫ちゃんもいますので、ここの性格に合わせて実施するとよいでしょう。くしゃみに対して直接予防することとの関連は薄いでしょう。

ワクチン接種

通常よく使用されている混合ワクチンの中にはヘルペスウイルスやカリシウイルスに対するワクチンが含まれています。そういったワクチンを接種することも予防のために重要といえます。ただし、粘膜免疫について十分ではなく定着はしないまでも感染が生じてしまう可能性はあるため、あくまでもっとも重要な予防は感染している猫との接触を避けることです。

くしゃみの治療での治療費用は?

くしゃみの原因や程度によって、検査としては血液検査やレントゲン検査、場合によってはCTや内視鏡検査や細胞診を実施することもあります。また、治療方法は内服やネブライザーを行ったり、原因によっては外科的な処置が必要となることもあるため、まずはホームドクターを受診して疑わしい原因を考えてから行う検査を決めると、費用が確定してきます。

【当院の診療費用のページ】

まとめ

高熱や黄疸などの出るだけで明らかな異常と判断してよい症状と違い、くしゃみは日常的に起こすことがある行為ですので、その「くしゃみ」が生理的な異常のないものなのか、病的であり放置してはいけないものなのかの線引きが難しい症状の一つといえます。明確な線引きはなく、記載している内容も獣医師やサイトごとによって異なると思います。あくまでケースバイケースになることが前提の記事でしたが、少しでもご家族様の役に立つ内容が書いてあればうれしく思います。

猫ちゃんのくしゃみや目やにでお困りの場合には、お気軽にご相談ください。

千葉県佐倉市で動物病院をお探しなら、志津・佐倉しらい動物病院へ

著者プロフィール

獣医師 吉川未紗

日本獣医生命科学大学付属動物医療センター 呼吸器科・腫瘍内科 研修生

当院は国際ねこ医学会(isfm)よりキャットフレンドリーゴールド認定を受けている病院です。

【キャットフレンドリークリニックに関する情報はこちら】

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