甲状腺機能低下症
【病態】
甲状腺ホルモンは多様な作用を持ちますが、代表的なものとして新陳代謝を盛んにし、活動するために必要なエネルギーを作るといった働きがあります。
甲状腺機能低下症とは何らかの原因により、その甲状腺ホルモンの産生・分泌が障害されることによって、循環中の甲状腺ホルモン濃度が低下、それに伴い様々な症状を引き起こす病気です。
【疫学】
イヌでの発症率は0.2〜0.7%であり、好発犬種はゴールデンレトリーバー、ラブラドールレトリーバー、ドーベルマンピンシャー、ダックスフント、ミニチュアシュナウザーなどです。
診断時の平均年齢は7歳前後で、原発性(甲状腺疾患による)のものは95%とほとんどを占めています。
ネコにおいては自然発生は極めて稀です。
【症状】
基礎代謝の低下に起因する様々な症状を全身に引き起こします。
①細胞代謝の低下:低体温、元気消失、運動不耐性②皮膚の変化:被毛の粗剛、左右対称性の脱毛、ラットテイル、皮膚の色素沈着、粘液水腫(顔面周囲への蓄積が顕著→悲観的顔貌と呼ばれる特徴的な外貌)
③眼の変化:角膜脂肪沈着、角膜潰瘍
④心血管系の変化:徐脈、血圧低下
⑤神経/筋の変化:顔面神経麻痺、筋の虚弱
⑥消化器系の変化:便秘、下痢
⑦生殖器の変化:発情の停止
【診断】
症状、臨床所見および甲状腺ホルモン濃度の測定により診断する。
【治療】
合成レボチロキシンの投与によるホルモン補充療法を行う。
実績詳細
ミニチュアダックスフントの甲状腺機能低下症
種類 | ミニチュアダックスフント |
---|---|
年齢 | 10歳 |
診療科目 | 内科 |
症状 | 毛が抜けてきた |
症状の概要
検査結果
症例は体幹及び鑑札部の薄毛を呈していた。
抜毛検査を実施すると、休止期の毛が大半を占め、皮膚は一部膿皮症が認められるものの、薄毛を認めている箇所の大部分は非炎症性の脱毛を呈していた。
また、症例はかゆみをほとんど呈していないということと、抜毛検査では折毛はほぼ認められなかった。
内分泌性脱毛の鑑別を行うため、血液検査を実施したところ、甲状腺機能低下症と診断された。
治療方法
甲状腺機能低下症に対して行う治療としては、甲状腺ホルモンの内服が第一選択として実施される。
治療・術後経過
治療開始2か月後より発毛を認め始めた。
また、定期検診として甲状腺ホルモンの値をモニタリングしていくこととした。
担当医:白井 顕治
執筆協力:吉川 未紗
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