目次
はじめに
この記事では、犬や猫、そのほか、フェレット、ハムスターやウサギ、亀、モルモットやハリネズミ、トカゲやヘビなどの爬虫類などのエキゾチックアニマルに共通して、ペットの体の表面にしこりができたときの判断や対処法を記載していきます。
このしこりは腫瘍なのか?
しこりが触知された場合、そのしこりの正体は
- 腫瘍ではない何か
- 良性腫瘍
- 悪性腫瘍
に分けることができます。
腫瘍ではない何か、とは
腫瘍ではない場合、炎症や液体貯留が考えられます。炎症に関しては、感染や免疫異常による炎症が考えられ、液体貯留に関しては、漿液、血液、リンパ液、膿などの液体が考えられます。
良性腫瘍と悪性腫瘍の見分け方
「見分ける」というのは、「見る」だけで分けることになります。
検査せずに、目視のみで方法は、ありません。「診ればわかる、触ればわかる」というのは、あり得ません。偶然に勘が当たったということはあり得ますが、細胞診や生検を行わずにしこりの正体がわかることはありません。
判断基準の一つとして、年単位存在しているしこりの場合には「高悪性度の腫瘍ではない」と言えますが、低悪性度の腫瘍の場合には数年間存在し、ゆっくりと大きくなっていくことはあります。そのため、「何年か前からあるから良性」というのも、間違いです。
事実として、「何年か前からあるから良性」と言われて、低悪性度の肥満細胞腫や軟部組織肉腫であったというケースは、よく遭遇します。
見分けようとせず、検査を受けましょう。
良性腫瘍だとしたら、どんなものが考えられる?
最も多いのは脂肪が由来の良性腫瘍である脂肪腫です。次いで、皮脂腺由来の良性腫瘍や、皮膚形質細胞腫、犬皮膚組織球腫、肛門周囲腺腫などがあげられます。
悪性である場合、どんな腫瘍が考えられるか?
肉腫やがんがあげられます。肉腫の場合には、軟部組織である繊維や脂肪、血管や筋肉に由来する悪性腫瘍ですので、創傷すると軟部組織肉腫と呼ばれます。
癌は、上皮系の細胞の悪性腫瘍ですので、扁平上皮癌やアポクリン腺や唾液腺、肛門周囲腺のような線組織が悪性化したことによって発生する腺癌、があげられます。そのほか、独立円形細胞由来の腫瘍として、肥満細胞やリンパ球が由来の肥満細胞腫や皮膚型リンパ腫があげられます。
しこりがあったら、どうするべきか?
しこりの位置を確認し、場合によっては写真に撮ったり、皮膚にマジックで印をつけたり、その部分だけ毛を短く切っておくなどして、わかるようにしてから動物病院を受診しましょう。
(診察台の上で「どこですか?」と聞かれると、てんぱってしまい、しこりの位置がわからなくなってしまうことがあるからです。)
そのうえで、細胞診を行いましょう。よほど小型のものであったり、細胞診をするために針を刺すのが困難な場所(瞼や鼻先など)でない限りは、通常は細胞診を実施することになるはずです。
その後、どうするべきかは、しこりの診断によって対応を決めるべきです。
診療実績や他記事の紹介
千葉県、佐倉市近隣で、ペットの体表にしこりが見つかった場合には、お気軽にご相談ください。
腫瘍の診断および治療に関して経験豊富な獣医師が対応させていただきます。
千葉県佐倉市の志津・佐倉しらい動物病院
著者プロフィール
白井顕治(しらい けんじ)副院長
獣医師、医学博士、日本動物病院協会(JAHA)内科認定医・総合臨床認定医
千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。