佐倉しらい動物病院ブログ

【獣医師監修】ペットの体にしこり?良性腫瘍と悪性腫瘍の見分け方は?

はじめに

この記事では、犬や猫、そのほか、フェレット、ハムスターやウサギ、亀、モルモットやハリネズミ、トカゲやヘビなどの爬虫類などのエキゾチックアニマルに共通して、ペットの体の表面にしこりができたときの判断や対処法を記載していきます。

このしこりは腫瘍なのか?

しこりが触知された場合、そのしこりの正体は

  • ・腫瘍ではない何か
  • ・良性腫瘍
  • ・悪性腫瘍

に分けることができます。

腫瘍ではない何か、とは

腫瘍ではない場合、炎症や液体貯留が考えられます。炎症に関しては、感染や免疫異常等による炎症が考えられ、液体貯留に関しては、漿液、血液、リンパ液、膿などの液体が考えられます。

良性腫瘍と悪性腫瘍の見分け方

「見分ける」というのは、「見る」だけで分けることになります。

検査せずに、目視のみで判別する方法は、ありません。「診ればわかる、触ればわかる」というのは、あり得ません。偶然に勘が当たったということはあり得ますが、細胞診や生検を行わずにしこりの正体がわかることはありません。

他のサイトを見ていると、大きさや色、質感から、加齢性に発生したイボやパピローマという判断をしてもいいと書いてあるものもありますが、結局ページの末尾には「絶対ではない」「心配なら動物病院へ」と書いてあります。責任が取れない健康上の題材について、見分ける方法があるというようなことを吹聴してはいけません。

例外的に、犬皮膚組織球腫は、半円形で、赤く、脱毛しているという特徴的な外見をていするということがしられていますが、この場合であっても、犬皮膚組織球腫に偶然似ていたほかの腫瘍という可能性はあるため、やはり検査が必要となります。

【症例】

⇓トイプードルの犬皮膚組織球腫

・⇓イタリアングレーハウンドの外耳道に形成された犬皮膚組織球腫

・⇓ミニチュアダックスフントの犬皮膚組織球腫

・⇓フレンチブルドッグの犬皮膚組織球腫

触って触診のみでわける方法もありません。

【やわらかい、かたい、周囲の皮膚が赤くなっている、しこりの上に毛が生えている、しこりの上が毛が抜けている、光沢がある、触ると痛がる、触ってもいたがらない、手で触ると動く、本人が気にしてなめたり掻いたりしている】

なども、良性と悪性を分ける根拠にはなりません。かたい良性の脂肪腫もあります。やわらかいフニフニした感触の癌もあります。

検査以外での、判断基準の一つとして、年単位存在しているしこりの場合には「高悪性度の腫瘍ではない」と言えます。ただし、低悪性度の腫瘍の場合には数年間存在し、ゆっくりと大きくなっていくことはあります。そのため、「何年か前からあるから良性」というのも、間違いです。

逆に、急速に大きくなってきたからと言っても、必ずしも悪性度が高いとは言い切れません。急に大きくなるということは、腫瘍細胞自体が急速に分裂を起こした可能性があります。その場合には悪性度が高い特徴の一つにはなりますが、それ以外にも、水分の含有量が急速に増えた可能性があります。これは、炎症によって水分が増えたり、腺組織の腫瘍(唾液腺や乳腺、アポクリン腺など)である場合に比較的よく起こります。蚊に刺された時も、皮膚は急速に腫れますが、腫瘍ではないですよね?

高分化(良性~低悪性度)のもののほうがよく液体を産生する傾向にありますので「急速に大きくなった!」と言ってエコーで調べてみたら、中はすべて液体で、抜去したらとても小さくなったということは珍しくありません。これも文章からわかる通り、「見て分けて」いません。触って、エコーで見て、刺してみて初めて分かることです。液体が貯留していると波動感というか、ぷにぷにしていることもありますが、被膜が形成されていてその中で液体が貯留すると、結構固くなることのあります。診て触っても、液体かどうか判断が難しいことはあります。

実際の症例として、「何年か前からあるから良性」と言われて、低悪性度の肥満細胞腫や軟部組織肉腫であったというケースは、よく遭遇します。

見分けようとせず、検査を受けましょう。

良性の腫瘍であっても、種類によっては「前癌病変」と言われ、放置しておくことはよくないとされている腫瘍もあります。

【症例紹介】

・⇓柴犬の肥満細胞腫

他院にて、長く良性腫瘍として放置されていたが、出血し始め、当院にて検査を実施したところ肥満細胞腫と診断されたわんちゃんです

良性腫瘍だとしたら、どんなものが考えられる?

最も多いのは脂肪が由来の良性腫瘍である脂肪腫です。次いで、皮脂腺由来の良性腫瘍や、皮膚形質細胞腫、犬皮膚組織球腫、肛門周囲腺腫などがあげられます。

確率論的には、わんちゃんでは何かしこりができた場合に、良性腫瘍である可能性のほうが高く、猫においては悪性腫瘍である可能性のほうが高いといわれています。

悪性である場合、どんな腫瘍が考えられるか?

肉腫やがんがあげられます。肉腫の場合には、軟部組織である繊維や脂肪、血管や筋肉に由来する悪性腫瘍ですので、総称すると「軟部組織肉腫」と呼ばれます。

癌は、上皮系の細胞の悪性腫瘍ですので、扁平上皮癌やアポクリン腺や唾液腺、肛門周囲腺のような線組織が悪性化したことによって発生する腺癌があげられます。そのほか、独立円形細胞由来の腫瘍として、肥満細胞やリンパ球が由来の肥満細胞腫や皮膚型リンパ腫があげられます。

しこりがあったら、どうするべきか?

しこりの位置を確認し、場合によっては写真に撮ったり、皮膚にマジックで印をつけたり、その部分だけ毛を短く切っておくなどして、わかるようにしてから動物病院を受診しましょう。

(診察台の上で「どこですか?」と聞かれると、てんぱってしまい、しこりの位置がわからなくなってしまうことがあるからです。)

中には、「横になったときに目立つけど、立っているとわかりづらい」、「首を伸ばした時にだけ少し触れる」といったような、まだしこりが小さい時には体位や皮膚の張りによって腫瘤の触知のされ方が変わることもあります。

また、体表に多くの腫瘤を形成してしまう体質のペットでは、今回新しくできて、ご家族が気になっている腫瘤と、獣医師が「このしこりのことだな」と思っている腫瘤が違うものである場合もあります。検査をする際には、同時にペットの体を触って、検査を実施するしこりをご家族と獣医師が一緒に確認することが、こういった誤認識を起こさないために重要です。

そのうえで、細胞診を行いましょう。よほど小型のものであったり、細胞診をするために針を刺すのが困難な場所(瞼や鼻先など)でない限りは、通常は細胞診を実施することになるはずです。

しこりの検査費用は?

このページで何度の記載しているように、しこりの診断には検査が必要です。

何らかの方法によって、しこりの「細胞・または組織」を得て、それを検査する必要があります。どの検査をはじめに行うのか、どの順で行うのかは、しこりが発生した部位や種類によって様々です。

検査費用が一般的に安価な順から

  • FNA(針吸引生検・細胞診)
  • パンチ生検
  • ツルーカット生検
  • 切除生検

が挙げられます。

症例の性格や体の大きさ、発生した部位によって局所麻酔や鎮静、全身麻酔が必要に応じて行われますので、費用についてまとめると

診察費用と検査費用に分かれ、検査費用はどの検査を実施するのか、鎮静や局所麻酔は使用するのか?そして、診断のための外注検査費用で決まってきます。

これは、病院によって設定している費用が異なりますので、個々のかかりつけの動物病院を受診して聞いてみるのが一番的確な費用が聞けると思います。

受診しないと、上記の内容(検査の種類・鎮静の有無など)が決まってこないため、電話で聞かれても答えることは通常できないと思います。

細胞診や組織の専門医による検査(外注検査)

外注検査費用についてですが、ここは私の意見が入ってしまいますが、細胞診も含めて、診断は専門医に依頼する必要があります。ほとんどの病院は、病理検査の専門医がいるわけではないので、専門の検査してくれる会社に外注することとなります。

比較的よく、「院内で先生が診てくれて、良性と言っていた」と言って、セカンドオピニオンで来院されたしこりで、専門医の診断によって悪性であると診断されることがあります。逆もあります。

ほとんどの獣医師は、細胞や組織を顕微鏡で良性・悪性を診断する訓練を受けていません。信頼に値するような経歴として(あくまで私見です)、病理組織検査会社に勤務した経歴があったり、日本獣医がん学会の一種認定医、大学病院の教員などを保有・歴任している場合にはその場で観察した細胞診の診断に信頼が持てます。そうでない場合に、しこりの診断は後々に悪化・拡大・再発したときに初めの検査結果が重要となってきますので、記録がしっかりと残るように細胞診・病理組織検査の専門医に診断してもらいましょう。

専門医に依頼すると、診断された日、診断内容、診断医の名前が入ったきちんとした診断書をもらえます。

診療費用ページ

しこりの診断のそのあとは?

その後、どうするべきかについては、「しこりの診断」によって対応を決めるべきです。

前述の

  • ・腫瘍ではない何か
  • ・良性腫瘍
  • ・悪性腫瘍

の中のどれなのか?ということと、その中でも、どの腫瘍なのかで経過観察・内科療法・外科的な切除・抗がん剤などの化学療法など、行うべきことが変わってきます。

また、それと同時に「本人の体調に対する診断」も実施することも判断を行う上で重要です。

「ペットの年齢と健康状態」、そして「しこりの診断」を総合して考えることによって

「そのペットに対しての治療の選択肢」の中から「実際に行う選択」を決めていきます。

同じ症例は一つとしていません。

「14歳のミニチュアダックスで、若齢期からアトピー性皮膚炎の治療を実施していた子で、血液検査で肝酵素の上昇が認められる仔の口の中に扁平上皮癌ができた」

「15歳の雑種犬で、腎臓の数値が少し高いが消化管にGISTが形成され、現在下痢が治まらない。」

など、品種・性別・年齢・既往歴・現在の状況、それに加えて、ご家族ができる費用的負担にも通常は制限があります。

それらを総合して、飼い主様が主治医と一緒に、できるだけいい選択肢を選んでいくことが、そのあとに行っていくことになります。

診療実績や他記事の紹介

【症例紹介】

・当院の腫瘍科トップページ

・⇓トイプードルの乳腺腺癌の手術

・⇓雑種犬の乳腺に発生した骨肉腫

・⇓マルチーズの指端に形成された軟部組織肉腫

・⇓サイベリアンの肩部に形成された毛芽腫

・⇓猫の前肢に形成された骨肉腫

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犬の体表の肥満細胞腫について

腫瘤の診断から治療の流れについて

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腫瘍の診断および治療に関して経験豊富な獣医師が対応させていただきます。

千葉県佐倉市の志津・佐倉しらい動物病院

著者プロフィール

白井顕治(しらい けんじ)副院長

獣医師、医学博士、日本動物病院協会(JAHA)内科認定医・総合臨床認定医

千葉県で代々続く獣医師の家系に生まれ、動物に囲まれて育って、獣医師になりました。「不安をなくす診療」を心がけて診療にあたるとともに、学会参加や後継の育成を行っています。

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